『書きます!#観劇レビュー』

20代の管理人が鑑賞した舞台のレビューを書き残していきます!

『良い子はみんなご褒美がもらえる』を観劇した感想(ネタバレあり)

第39回目のレビューは、赤坂ACTシアターにて上演中の「良い子はみんなご褒美がもらえる」です。

 

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本作は、イギリスの劇作家トム・ストッパードが、俳優とオーケストラの為に書き下ろしたという意欲的な戯曲です。

 

イギリスの劇作家トム・ストッパードの作品は、戯曲の中での言葉遊びが面白く、随所にユーモアを散りばめてあるのが特徴で、代表作に「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」などがあります。

 

 

オーケストラのために書き下ろした作品とあって、普通の演劇のような劇伴として音楽が流れているわけではなく、35人ものオーケストラがステージ上に存在し、劇中に登場するという、何とも斬新な作品です。

 

 

今まで様々な作品を観劇しておりますが、オーケストラと役者の芝居がここまで濃密に絡み合い競演している作品は初で、全く新しい観劇体験となりました。

 

 

2人の「アレクサンドル・イワノフ」

 

 

舞台は、精神病棟の一室。

二人の男が同じ部屋に送り込まれた。

一人は、堤真一演じる政治犯の男(アレクサンドル・イワノフ)、もう一人は橋本良亮演じる、自分はオーケストラを引き連れているという妄想に囚われた男(アレクサンドル・イワノフ)。

奇しくも同じ名前の2人は、社会から追放された身として、強制的に社会適合者へ矯正させられるのです。精神病棟での生活に自由はありません。

 

2人の会話は、妄想と回想が入り交じり混沌と進んでいきます。オーケストラは、オーケストラを引き連れている男の妄想の中で演奏を続けています。観客は、その男の妄想の中のオーケストラを観ているのです。

 

一方で、堤さん演じるアレクサンドル・イワノフにはオーケストラは聞こえません。時折、オーケストラの演奏が止まったり、演奏しているフリをするシーンがあり、政治犯の男には演奏は聞こえていないという描写を表していました。

 

 

政治犯の男を演じるのが、テレビや映画をはじめ舞台出演の続く堤真一さん。

オーケストラを引き連れているという妄想に囚われた男を演じるのが、A.B.C-Zのセンターであり、昨年も赤坂ACTシアターにて上演された舞台「コインロッカーベイビーズ」で主演をされた橋本良亮さん。

 

『コインロッカー・ベイビーズ』を観劇した感想(ネタバレあり) - 『書きます!#観劇レビュー』

 

 

立場も芸歴も大きく異なる2人がW主演として同じステージに立ち、芝居を通して心を通わせていく様は、何とも感慨深い気持ちになりました。

 

橋本さんの繊細かつ大胆な表現力で、彼にしか演じられない狂おしさをまとい妄想に取りつかれた男を演じ、一方で、堤さんは囚われ衰弱しきった中でも決して曲げない意志と覚悟を感じる政治犯を演じてられていました。

 

 

作品中、“動と静”を強く感じる本作。橋本さんが“動”を担えば堤さんは静”となり、またその逆もしかり。それぞれが持ちうる表現力で相手にぶつかっていく。

芝居の<異種格闘技戦>を観ているかのようでした。

 

 

 

堤さん・橋本さんを囲む個性的なキャスト陣

 

 

 

主演である堤さん、橋本さんを支えるのは、小手伸也さんや斉藤由貴さんら数多くの舞台作品に出演されている役者の方々。

 

小手さんは2人の担当医師として、難解なストーリーの中に時にユーモラスな演技を交えながら、作品に緩急をつけてくれました。

 

 

斉藤さんは、堤さん演じるアレクサンドルの息子の家庭教師。

社会からのはみ出し者の存在を否定し、社会に順応していく人間を育てることに情熱を注ぐキャラクター。

 

 

どちらも主演のお二人に比べ台詞は多くないですが、印象に残る濃いキャラクターです。

 

 

イギリス人演出家ウィル・タケットの演出

 

 

 

今作の演出を担当されるのは、英国ロイヤルバレエのダンサー出身にして国際的な振付家・演出家のウィル・タケット氏。

 

精神病棟での2人の不自由な生活を、ダンスを通して表現。規則や価値観に縛られ、自由に生きられない様を、2人を取り巻くアンサンブル(警官)たちと、複雑かつ流れるような動きで表現していました。

 

 

上演時間は1時間15分という、舞台作品の中ではかなり短い上演時間。

 

しかし、体感としては2時間以上あるように感じる程、息つく間もない内容の濃い作品でした。

 

ステージ奥にオーケストラ、手前に無機質な病室を置き、左右には扉と階段。扉や階段は上下の動きや場面転換で使われていましたが、客席からはオーケストラの一番後ろまで全て見渡せるような造りになっており、作品全体に抽象的な印象を与えています。

 

そして、上演中一度も暗転がないため、ストーリーを途切れさせることなく場面が繋がっていき、展開が早く非常に面白い演出でした。

 

 

オーケストラの演奏と並行して芝居が進められている本作。

ミュージカルではない、斬新な音楽劇が日本初上演されています。

5/12まで上演中で当日券も出ておりますので、皆様ぜひ行ってみてください!

 

 

【公演情報】

 

 

舞台「良い子はみんなご褒美がもらえる」

 

作=トム・ストッパード 

作曲=アンドレ・プレヴィン

演出=ウィル・タケット

指揮=ヤニック・パジェ

 

出演=堤真一、橋本良亮(A.B.C-Z)、小手伸也、シム・ウンギョン、外山誠二斉藤由貴、川合ロン、鈴木奈菜、田中美甫、中西彩加、中林舞、松尾望、宮河愛一郎

 

 

東京公演:2019年4月20日(土)~5月7日(火)  TBS赤坂ACTシアター

大阪公演:2019年5月11日(土)~12日(日)  大阪フェスティバルホール 

 

 

観劇日:2019年4月24日(水)19:00公演

2019年5月7日(火) 15:00公演  ※東京千秋楽

  

羽ばたけ小劇団シリーズ① SHOW劇 無=魂「ONION ~いのちあるところ~」を観劇した感想(ネタばれあり)

第38回目のレビューは、小劇団 無=魂 第14回公演「ONION ~いのちあるところ~」です。

 

今回よりスタートした新シリーズ、「羽ばたけ小劇団」の第1回となる本作品ですが、かなりエネルギッシュで展開の読めない、驚きの連続な作品でした。

 

 

主人公はレストランを経営している社長で、お客さんの笑顔のため、赤字覚悟のメニューをどんどん企画する。

レストランは繁盛する一方、次第に利益が出なくなってきていた。店長やシェフが店の状況を説明しても、赤字となるメニューを出すことを止めない。

そのような状況が続き、消費者金融からお金を借りてしまい、銀行からの追加融資も受けられなくなってしまった。

そんな切迫した状況の中、レストランに大型の予約が入った。借金を返せる目途も立って従業員も手を取り喜ぶ。

しかし、喜んだのも束の間、店長は事故にあってしまう。

目を開けると、そこは不思議な空間で・・・。

 

 

という全く展開の読めないストーリーにも関わらず、1時間40分という時間にギュっとまとめ上げたのは驚きでした。

 

タイトルに”SHOW劇”とある通り、SHOWの要素が多く含まれた演劇作品でした。

 

オープニングから演者がダンス!そしてエンディングもダンス!

 

ハッピーエンドからの出演者全員でのダンスシーンは、観劇している側もハッピーになってしまうという、ダンスの持つパワーを感じました。

 

 

本作は、誰にでもあるような人生の分岐点を描き、いくつもの選択肢を提示しつつ、その時最善だと思った方向へ進んだ主人公の、生き様を描いた作品だと感じました。

 

 

この劇団の主宰であり、主人公の社長を演じられていたTERUさん。

声がとても渋くて素敵でした。

 

 

その他、最近スバルのCMにもご出演されている島村みやこさん、

日テレ「ウチのガヤがすみません!」にガヤ芸人として出演中のKいちさん、

昨年の紅白歌合戦にも出演された、香川真司のものまね芸人として活躍中のアモーレ橋本さん、メディアにも出ている俳優さんたちもご出演されており、また、ダンサーとして活動されている方もいたりと、幅広いジャンルの俳優さんがご出演されておりました。

 

 

【公演情報】

 

 

SHOW劇 無=魂 第14回公演「ONION ~いのちあるところ~」

 

劇団:SHOW劇 無=魂

 

出演者:TERU、菊川仁史、Kいち、蝶羽、杏蘭、中島大和、古賀司照、松田かほり、ふじきイェイ!イェイ!、アモーレ橋本、島村みやこ、MASAKI、さわちん

 

日程:2019年3月27日(水)~3月31日(日) 

 

会場:ザムザ阿佐ヶ谷(THEATRE “SAMUSA”)

 

観劇日:2019年3月27日(水)19:00公演

 

サイト名リニューアル & 新シリーズ始動

おひさしぶりです。管理人の葉流です。

 

「若者による若者のための観劇レビュー」ですが、本日より、

 

「書きます!#観劇レビュー」(読み方:書きます! ハッシュタグ観劇レビュー)

 

というサイト名へリニューアルいたします。

 

サイト名リニューアルには理由がありまして、

今までメジャーな演劇作品しか取り上げてこなかった当サイトですが、今回より、小劇団の作品の感想もアップしていきたいと思います!

 

昨年まではテレビに出ているような有名な俳優さんが出ているような、大きな作品ばかり観劇しておりましたが、とあるきっかけで小劇団の演劇も頻繁に観劇するようになり、「メディアに出ていなくても演技の上手な俳優さんは沢山いるなぁ」と感心してばかりの日々です。

 

ということで、そんな小劇団の作品や俳優さんにもスポットライトを当てるべく、今回より、小劇団の作品もアップしていきたいと思います。

 

ということで新シリーズを始動させたいと思います!

 

その名も 「羽ばたけ小劇場シリーズ」

 

 

更新をお楽しみに!

 

 

舞台『チャイメリカ』を観劇した感想(ネタバレあり)

第37回のレビューは、英国社会派戯曲『CHIMERICA  チャイメリカ』です。

 

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田中圭さん主演、そして日本初上演作品ということで非常に注目されている作品です。

 

本作は、中国の天安門事件を題材に描いたフィクション作品。

 

海外事情も事件のことも全く分からないので、あえて知識を入れないまま観劇したのですが、現代にも通じる普遍的な問題を扱っている作品だと、そう感じました。

 

 

 

二つの国の演出

 

 

 

本作で登場するのはアメリカと中国。

 

この二つの国を場面によって行き来していたため、場面展開がかなり多く、なんと38もの場面で構成されているとのことです。(公式パンフレットより)

 

転換が多い分、ステージの上・下を分け、回転舞台も取り入れることで次の場面へと流れるように繋いている演出が印象的でした。

 

ステージ上には無駄な装飾が一切なく、必要最低限のセットのみが配置してあり、それぞれの場面を表現。

 

無駄な装飾がなく、ステージ上は黒で統一されていることで、ひとつひとつの台詞が舞台上に浮かび上がってくるような雰囲気がありました。

 

 

 

ジョーとヂァン・リン

 

 

 

主人公の記者、ジョー演じるのは田中圭さん。

 

昨年末は舞台「サメと泳ぐ」でも主演を務め、舞台への出演が続いております。

 

ジョーはアメリカ人記者で、天安門事件の写真を撮影したことをきっかけに、1枚の写真に翻弄されることとなります。

 

自分の覚悟を自分自身で裏切らないために、目に見えない事実を追いかけ続けるジョーの記者としての圧倒的な力強さやまっすぐさを田中圭さんが全身で演じておりました。

 

 

 

そして、中国に住むジョーの旧友ヂァン・リン役は満島真之介さん。

 

とにかく、満島さんの迫真の演技に心奪われました。

 

ジョーとヂァン・リンが一緒にいるシーンはほんの数回しかなく、ほとんどが別々のシーンで物語は進みますが、彼らの人生はそれぞれの人生に大きく関わっており、最後にジョーはヂァン・リンに関する衝撃の事実を知ることになります。

 

 

ヂァン・リンは天安門事件に関係するある過去に縛られ、そして過去を引きずり、物語が進むごとに憔悴し、心を閉ざしていってしまうキャラクターです。

 

そんなヂァン・リンを満島真之介さんは丁寧に演じており、この物語はフィクションのはずなのに、私が観ているヂァン・リンは現実でしかない、そう感じてしまうくらい説得力のある演技でした。

 

 

満島真之介さんの出演されている舞台は何度か観劇したことがあり、そして観劇するたびに満島さんの繊細かつ大胆な演技に感動しています。

 

 

 

色の演出

 

 

ステージがほとんど黒で統一されている一方、背景となる壁は液晶画面になっており、

場面に合わせて色が変わっていました。

 

感情を映す鏡のように、赤やグレーに色変わりし、視覚的にも状況描写の補足という役割を果たしておりました。

 

 

非常に難しい作品で、濃密な会話劇という印象でしたが、決して歴史上の問題を題材としているだけの作品ではないと感じました。

 

 

【公演情報】

 

世田谷パブリックシアター×パソナグループ

『CHIMERICA  チャイメリカ

 

 

作:ルーシー・カークウッド

 

演出:栗山民也

 

出演:田中圭満島真之介倉科カナ眞島秀和瀬戸さおり池岡亮介・・・etc

 

 

東京公演:2019年2月6日(水)~2月24日(日)  世田谷パブリックシアター

愛知公演:2019年2月27日(水)~2月28日(木)  東海市芸術劇場

兵庫公演:2019年3月2日(土)~3日(日)  兵庫県立芸術文化センター

宮城公演:2019年3月6日(水)  多賀城市民会館 大ホール

福岡公演:2019年3月10日(日)  福岡市民会館

 

 

観劇日:2019年2月23日(土)18:30公演

 

 

舞台『罪と罰』を観劇した感想(ネタバレあり)

第36回のレビューは、三浦春馬さん主演「罪と罰」です。

 

 

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本作はロシアのドフトエフスキーの長編文学を題材とした作品で、舞台の脚本・演出はイギリスの演出家、フィリップ・ブリーンが務めております。

 

 上演時間は3時間超えという、ストレートプレイの中ではかなり長い超大作でしたが、息つく間もない展開がいくつも待ち受けておりました。

 

 

 

三浦春馬の演じるラスコリニコフ

 

 

三浦春馬さん演じるラスコリニコフは、自らを選ばれし者と錯覚し、”正義”のためならと人を殺めてしまう貧乏な青年。

 

自身の中に大きな野望を秘めていて、自己を過大評価してしまうラスコリニコフは、一方で、自らの罪に怯え、良心と野望との狭間で感情が揺れ動くという非常に難しい役どころです。

 

 

 

全編通して、三浦春馬さんの演技力、気迫に圧倒されました。

あまりの迫力に、演じているというより別人格としてそこに存在しているのではないかというような感覚になりました。

 

 

 

 

その空間の中でラスコリニコフは自らの正義を貫き、人を殺める。しかし、自らの過ちにおののき、気絶するシーンが前半は多く描かれておりました。

 

 

気絶するシーンは暗転し、目を覚ますと明転する。

目を覚ます度に別場面へ転換しているのだが、転換が早いため一つの長いシーンを観ているかのように感じました。

 

 

いくつかの蛍光灯が薄暗く光っている舞台上には家具や生活道具が積み重なるように無造作に置かれ、その間を演者がめまぐるしく動いていく。

 

 

全編通して驚いたのは、演者や演奏者は終始ステージからはけることなく、群衆としてステージ上に存在していたことです。

 

 

時には民衆として、時にはキャラクターの感情の起伏を表現する者として、作品の中に存在しており、かなり印象的な演出だと感じました。

 

 

階段状のステージを縦横無尽に演者が動く一方で、チェロやクラリネットの演奏者も同時にステージ上で演奏するという面白い演出もありました。

 

演奏者が衣装を着て、演者と同じようにステージ上にいて、そして演者のすぐそばで演奏するという舞台ならではの生感がありました。

 

 

哲学的で難しい作品ではありましたが、それぞれの人間関係や感情、人と人との心理戦を濃く表現した作品だと感じました。

 

 

【公演情報】

 

Bunkamura30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2019

罪と罰

 

 

原作:フョードル・ドストエフスキー

 

上演台本・演出:フィリップ・ブリーン

 

出演:三浦春馬大島優子南沢奈央、松田慎也、真那胡敬二、冨岡弘、塩田朋子、粟野史浩、瑞木健太郎、深見由真、奥田一平、山路和弘立石涼子勝村政信麻実れい・・・etc

 

東京公演:2019年1月9日(水)~2月1日(金)Bunkamura シアターコクーン

 

大阪公演:2019年2月9日(土)~2月17日(日)森ノ宮ピロティホール

 

観劇日:2019年1月19日(土)13:00公演

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞台『いまを生きる』を観劇した感想(ネタばれあり)

第35回目のレビューは、佐藤隆太主演、舞台「いまを生きる」です。

 

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1989年に米俳優ロビン・ウィリアムズ主演で映画化された不朽の名作を、日本で初舞台化した本作。全寮制の名門男子校に赴任してきた破天荒な英語教師ジョン・キーティングが、厳格な規則に縛られている学生たちに、詩を通して生きることの素晴らしさを伝えていく、心温まる学園ドラマです。

 

 

風変わりな教師、ジョン・キーティング

 

 

 

主人公のジョン・キーティングを演じたのは、佐藤隆太さん。

 

2か月前も篠原涼子さんと舞台「アンナ・クリスティ」に出演されていたので、立て続けの舞台でお忙しいです。

(舞台「アンナ・クリスティ」の観劇レビューは第32回に掲載)

『アンナ・クリスティ』を観劇した感想(ネタバレあり) - 若者による若者のための観劇レビュー

 

 

キーティングの授業は、情熱的で時にユーモラスでかなり風変わり。最初は抵抗感を表していた生徒ですが、少しづつ生徒の心を動かしていきます。

 

佐藤隆太さんの熱血教師といえば、ドラマ「ROOKIES」がまず思い浮かびます。

ROOKIESで佐藤隆太さんが演じた川藤先生とキーティング先生は、とても似ているような・・・。どちらもまっすぐな信念を持つ教師役で、非常に適役です。

 

キーティングが自由に自分らしく生きる素晴らしさを説くため、生徒に嘘偽りなくぶつかっていく様は、とてもパワフルで知性に溢れていました。

 

 

本作を観終わって感じたことは、”いまを生きる”という本作品のタイトルの本当の意味。自分の人生に複雑に絡んでくる学校や友達や家族との関係に悩み、大人からの圧力や規律に耐えなければならない日々を送る生徒に、キーティングは「自分らしく生きろ」と伝えます。

 

 

 

“生きる”という最も身近で最も難解な行為を、論理的に目を見てまっすぐ生徒へ伝えるキーティングは非常に賢明な人間であると感じました。

それと同時に、生徒から見えないところでは悩み苦しみ、キーティング自身も生きることにもがきながら”今”を生きているシーンが見受けられ、自分らしく生きることの難しさが伝わってきます。

 

 

そんなキーティングを佐藤隆太さんは非常に力強く、時に繊細に演じられておりました。

 

 

生徒の心が動く瞬間

 

 

 

キーティングの言葉に心を動かされ、自分は芝居がしたいんだという夢に向かって進むことを決意した生徒、ニール・ペリーは親の反対を押し切って舞台に出演します。しかし、父親から夢を捨てろと痛烈に反対されたニールは憔悴し、命を絶ってしまうのです。

 

 

ニールの最期は、彼を神聖な空間へ誘うかのごとく暗闇のなかに白く浮かび上がらせるようなライトの演出が象徴的でした。

 

 

命を絶った者と、残された者。

 

いまを自分らしく生きろと言ったことで、命を絶ってしまった少年。

 

キーティングは責任を背負わされ、学校をクビになります。でも、教え子たちは分かっている。ニールが亡くなったのは先生のせいじゃない、先生からはとても大切な事を教わったと。

 

生きることは残酷で、でも、生きることは素晴らしい。

そんなことを私も教えられたような気がしました。

 

 

 

 

ステージの周りを約230度客席が囲んでいる劇場で、私はかなり右側、ほとんどステージ真横の位置から観劇しました。

 

真正面から観劇するのとはかなり見え方が異なるだろうなぁという印象を持ちました。

 

舞台上には、8本の可動式の柱が立っており、シーンが変わるごとに柱の位置が変わる仕組み。

空間を区切ったり、または、柱を左右に下げることで一つの大きな空間へ変えたり、シンプルだがスピーディーに次のシーンへ移動するので見やすい演出でした。

 

小道具も少なく、できるだけシンプルに、演者だけがステージ上にいるような見せ方だったのが印象的でした。

 

 

また、本作は劇中の音楽を生演奏しており、舞台後方でオーケストラが演奏しておりました。登場人物の心情を曲で表現しているようなシーンが多く登場し、言葉数は多くなくとも、人物の心情が客席に伝わりやすく、ゆったりと流れていくシーンの数々に音楽が寄り添っていました。

 

 

時代背景も国も異なる作品ですが、今の日本にも必要な教えが沢山盛り込まれており、観終わったあと、心が熱くなる作品でした。

 

 

【公演情報】

 舞台「いまを生きる」

 

 

原作:トム・シュルマン

上演台本・演出:上田一豪

 

出演:佐藤隆太宮近海斗(Travis Japan/ジャニーズJr.)、永田崇人、七五三掛龍也(Travis Japan/ジャニーズJr.)、中村海人(Travis Japan/ジャニーズJr.)、浦上晟周、田川隼嗣、冨家規政、羽瀬川なぎ、大和田伸也

 

 

東京公演: 2018年10月5日(金)~24日(水) 新国立劇場 中劇場

 

 

観劇日:2018年10月8日(月・祝) 12:00公演

舞台『サメと泳ぐ』を観劇した感想(ネタバレあり)

第34回目のレビューは、田中哲司×田中圭W主演の舞台、『サメと泳ぐ』です。

 

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本作は、ハリウッド映画界の裏側を描いたブラックコメディです。

 

 

上演時間は3時間という、ストレートプレイの中でもかなりの大作でした。映画界を舞台に、それぞれの登場人物が抱える欲望や思惑を手に入れるため、究極の騙し合いが壮絶に繰り広げられました。

 

 

大物プロデューサーの”バディ”と新人アシスタントの”ガイ”

 

 

 

性格は最悪だが、数々の映画をヒットさせてきた大物プロデューサーの”バディ”を演じたのは、田中哲司さん。ひときわ舞台上で大きな存在感を放っていました。

わがままで傲慢で横柄な態度、だけど映画界では頭の切れる存在である”バディ”というキャラクターに説得力がありました。

 

 

映画好きで脚本家を夢見て上京し、バディの新人アシスタントとして彼の下で働き始めた”ガイ”を演じたのは田中圭さん。

バディに毎日のように侮辱的な言葉を浴びせられながらも、彼の無理難題に必死に応えようとする純朴なガイをとても繊細に初々しく演じておりました。

 

 

以前から田中圭さんの演技が大好きで、彼の出演している舞台はほとんど観劇しています。

 

今回も作品の最初と最後で全く性格が異なる、振り幅の大きな役柄でした。

 

”ガイ”という青年が追い込まれていく様を様々な表情で魅せ、落ちてでも這い上がる雄々しい一人の男を美しく演じていたのが印象的でした。耐えて、裏切られて、耐えて、そして最後には暴走する感情がなんとも恐ろしくリアルで、ふと微笑む笑顔に狂気性を感じました。

 

 

それぞれの思惑。究極の騙し合い。

 

 

 

物語の前半はバディとガイとの関係性が、彼らの仕事を通して描かれていました。

気に入らないことがあったらすぐ怒鳴り、物を投げつけるバディ。バディからの酷い振る舞いにひたすら耐えるガイ。絵に描いたようなパワハラを見せられているのであまりいい気分ではありませんでした(笑)

 

 

そこに現れる一人の女性。

 

バディに新作の映画企画を売り込みに来た映画プロデューサー、”ドーン”。男の世界で駆け上がっていく強い女性”ドーン”を野波麻帆さんが演じておりました。

 

野波さんの喋り方がドーンにぴったりで、一度決めたことは曲げない意志の強さが、喋り方から伝わってきます。

 

ガイとドーンはのちに恋人関係になりますが、その関係すら危ぶまれる計画をバディは動かし始めます。

 

 

 

物語の後半は、騙し合いや裏切りがメインです。

 

 

自分の私利私欲のために、ガイやドーンを利用しようとするバディの目が印象的でした。

言葉とは、人の心をいとも簡単に動かしてしまう、恐ろしい武器だと痛感します。

 

物語の後半になるにつれて、ガイの心の中に止められない感情が生まれてきます。

そして、なんと、ガイはバディを「殺そう」と決意するのです。

 

 

 

拘束されたバディと狂気性に満ち溢れた別人のようなガイ、二人が対峙するシーンはかなり痺れました。

 

 

薄暗い照明の中、フードを被り拳銃を突き付けるガイにはバディへの憎しみしかなく、何か少しのきっかけで引き金を引いてしまうのではないかという緊張感がありました。

 

薄く笑みを浮かべながらバディを痛めつけるガイの姿は楽しんでいるようで、瑞々しい毒と狂気にまみれながら、純粋で美しいガイを田中圭は全身全霊で演じておりました。

 

 

 

前半と後半で作品の雰囲気が変わり、かつ、テンポ感よくストーリーが進むので、あっという間の3時間でした。

 

 

 

ジャズと照明

 

 

 

骨組みが少し見えているようなセットで、2階建てにすることで上下に動きのある演出でした。

 

 

ジャズやクラシックが場面展開における一種のスパイスように使われ、場面が変わるごとにテンポの良いジャズが大音量で流れて次のシーンへ進むという、スピード感のある転換でした。ジャズが流れると同時にカラフルな照明が舞台上を照らし、ある種の”アメリカ映画っぽさ”のようなものも感じました。

 

 

重たいテーマですが、人間同士の心理ゲームを見ているかのようで、現実のような非現実を味わいました。

 

 

公演数はあまり多くはないですが、本作は地方公演があります!

 

皆様ぜひ見に行ってみてください!

 

 

 

【公演情報】

 

 

関西テレビ放送開局60周年記念 「サメと泳ぐ」

 

原作:ジョージ・ホアン

 

演出:千葉哲也

 

出演:田中哲司田中圭野波麻帆、石田佳央、伊藤公一、小山あずさ、千葉哲也

 

 

東京公演:9月1日(土)~9月9日(日) 世田谷パブリックシアター

仙台公演:9月11日(火) 電力ホール

兵庫公演:9月14日(金)~9月17日(月・祝) 兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール

福岡公演:9月20日(木)~9月21日(金) ももちパレス

愛媛公演:9月28日(金) 松山市総合コミュニティセンター キャメリアホール

広島公演:10月4日(木) JMSアステールプラザ 大ホール

 

 

観劇日:2018年9月2日(日)18:00公演

    2018年9月9日(日)13:00公演  東京千秋楽