第64回目のレビューは、風間俊介さん主演「パークビューライフ」です。
世田谷パブリックシアターにて上演中の本作は、朝ドラ「ひよっこ」などを書かれた岡田恵和さんが脚本を書かれており、男性ひとり女性3人の、登場人物4人で繰り広げられる会話劇です。
とある部屋で出会う4人
半ば引きこもり状態の成瀬洋(風間俊介)の部屋に、突如3人の女性が乱入!
成瀬に気づかず不法侵入し、3人での夜を楽しんでいた。
成瀬は部屋に入ってきた3人に驚き、3人も成瀬の存在に気づき大騒ぎ。
しかしこの出会いが、成瀬と3人の運命を大きく変えることになっていくのでした。
成瀬は冒頭から開始20分ほど全く喋りませんでした。
風貌や仕草、表情だけで成瀬のキャラクターを表現する風間さんの演技は圧巻でした。
成瀬の人生を大きく変えることになる3人の女性は倉科カナさん、中川翔子さん、前田亜季さん。
パワフルな同級生3人娘として、ストーリーを引っ張っていきます。
一緒に暮らしませんか?
成瀬は不法侵入してきた3人に対して「一緒に暮らしませんか」と言います。
そしてこう続けます。「僕ゲイなんで。」
成瀬のぶっとんだ提案を受け入れる3人。そこから奇妙な4人暮らしがスタートするのです。
今まで全く人と喋らず生きてきた成瀬にとって人と話すこと自体が新鮮で、3人が自分の人生に彩りを与えてくれる日々。
ひょんなことで口ケンカしたり一緒に笑ったり、過去の自分からは想像できないくらい明るくなった成瀬。
成瀬の生活が一変する様子を"音楽"と"衣装"、そして"ダンス"も交えて表現していて、今まで暗かったステージ上がカラフルになっていく様子は、キャラクターの気持ちの変化が伝わってきて心が躍りました。
誰かと暮らしたり話したりするのは楽しいと同時に面倒であり、時には辛くなってしまったり。自分以外の誰かと暮らした経験のある人なら痛いほどわかる感情が、物語の後半で強く描かれていきます。
物語の中盤、成瀬は彼女たちに対して後ろめたい感情が生まれます。
実は成瀬はゲイではなかったのです。彼女たちと一緒に暮らしたい一心でとっさについた嘘でした。嘘をつき続けることが苦しくなったしまった成瀬。
その嘘を告白することで彼女たちの心をひどく傷つけ、また成瀬自身も傷つくことになってしまいました。
個人的にはゲイだろうがなかろうが、一緒に暮らして仲良くなって心の底から信頼しあっていれば、そこは関係なくなってしまうように思いましたが、やはり暮らすきっかけが嘘だったということで関係性に亀裂が入ってしまった4人。
そこから語られる各々の気持ちが何とも痛々しくて、でも目の前の幸せをこぼしたくないという彼らが愛しくて、大好きなキャラクターたちでした。
ストーリーはぶっとんだ設定でありつつも、そのなかで繰り広げられる会話劇は人が人と生きていくことの尊さを感じることができました。
風間さんは挙動不審で暗かった成瀬の心情の変化を丁寧に演じ、3人に気持ちを吐露する最後のシーンは力強く、観客の心を動かしてくれました。
倉科カナさん、中川翔子さん、前田亜季さん幼馴染3人のやり取りも微笑ましく、また、3人それぞれが抱えている悩みがかなりリアルで、田舎から上京して3人と同じく東京で働いている私は他人事とは思えませんでした。
だからこそさらに彼らが愛おしく感じてしまったのかもしれません。
【公演情報】
『パークビューライフ』
作:岡田恵和
演出:田村孝裕
出演:風間俊介、倉科カナさん、中川翔子さん、前田亜季さん
東京公演:2021年4月7日(水)~18日(日) 世田谷パブリックシアター
大阪公演:2021年4月23日(金)~25日(日) サンケイホールブリーゼ
愛知公演:2021年5月1日(土)・2日(日) ウインクあいち(愛知県産業労働センター)大ホール
観劇日:2021年4月10日(土)12:00公演