第16回目のレビューは『僕だってヒーローになりたかった』です。
構成作家・鈴木おさむと俳優・田中圭が6年ぶりにタッグを組んだ作品として、非常に注目されている作品です。
鈴木おさむさんも明言されているように本作品は田中圭のために書き下ろしたという作品。そしてタイトルが『僕だってヒーローになりたかった』・・・。どんなストーリーなのかとても気になっておりました。
田中圭演じる小中正義は、順風満帆な人生を送っていた。しかし、とある事件をきっかけに人生の転機が訪れる。そんな時、正義の前にひとりの男性が現れる。
『日本のために、社会の悪となってみないか』
愛する人のためにこの仕事を引き受けた正義は、想像もしていなかった国家の陰謀に巻き込まれていく・・・。
正義とは何か、悪とはなにか。『僕だってヒーローになりたかった』正義を演じる田中圭の、命を削るような演技に胸が苦しくなりました。
6年前、鈴木おさむさんと田中圭さんが初めてタッグを組んだ舞台、『芸人交換日記』は、交換日記を読むというスタイルでストーリーが進んでいきました。いわゆるセリフというよりかはモノローグを読んでいる感覚に近いです。
本作品も『芸人交換日記』をインスパイアしている部分が多く、『芸人交換日記』が大好きだった私は感動と同時に懐かしさも感じました。
セリフはモノローグをベースとして会話が途中に入ってくる作りになっており、とにかくセリフ量が尋常じゃない!!!
『芸人交換日記』も交換日記を台詞として読んでいるので、セリフ量がかなり多かったですが、本作品も負けず劣らずの量・・・。
特に田中圭さんは冒頭かなりのスピードで喋りっぱなしです(笑)
それに加えて、舞台上での移動がかなり多い。左右の動きはもちろん、階段を利用した上下の動きもあり、本作品は会話劇な分、動きを取り入れることで最後までスピード感のある演出でした。
後半、『芸人交換日記』の中でも象徴的だったセリフが正義の口から出てきました。
「夢をあきらめることも才能だ」
このセリフは『芸人交換日記』の中でも、田中圭演じる甲本が芸人という夢を諦める決心をしたときに言っています。
今回の作品では田中圭演じる正義が、ヒーローになるという夢を諦めたときに言ったセリフ。6年の時を経て、この言葉をまた聞くことができて、感慨深くなりました。
田中圭さんが一番好きな俳優である私は、彼が出演している作品は必ず観劇しておりますが、やはり毎回思うのは、彼の演技は非常に繊細であるということです。
今回の役、小中正義も喜怒哀楽の激しい役柄で、表情がコロコロ変わるんです。そのスピードと力加減と対応力と・・・。本当に器用な方だなぁと改めてしみじみ思いました。
田中圭と、小中正義は、似てないようで似てるのかもしれません。
『僕だってヒーローになりたかった』
私の中では十分ヒーローです。
【公演情報】
『僕だってヒーローになりたかった』
出演者:田中圭、真野恵里菜、松下優也、手塚とおる・・・etc
東京公演:2017年7月6日(木)~7月23日(日) 俳優座劇場
兵庫公演:2017年7月25日(火)~7月27日(木) 兵庫県立芸術文化センター
観劇日:2017年7月20日(木)19:00公演