第20回目のレビューは、柄本祐・満島ひかり・吉沢亮らが出演する、Bunkamuraシアターコクーン『百鬼オペラ 羅生門』です。
本作は、芥川龍之介の代表作「羅生門」や「蜘蛛の糸」「藪の中」「鼻」を「羅生門」の主人公、"下人"の人生と絡ませ、ひとつのストーリーとして描き出した作品です。
芥川龍之介の作品をオペラに乗せて、というのはどういうアプローチの作品なんだろう、と自分の中でイメージできず、観劇前までかなり不安でした。
そのため観劇前に劇中で使用される芥川作品4作品を読んでから臨んだのですが、かなり功を奏しました。これから観劇する予定の方は、あらかじめ本作で使用される芥川作品を読んでいくことをおすすめします!
ステージ上には丸みを帯びた木枠。その木枠の向こう側で繰り広げられる芥川龍之介の世界。木枠が絵本の縁のようで、まるでからくり絵本を見ているような気分になりました。ステージ上で絵本の登場人物がストーリーを進めているような感覚。
全体的な色味や小道具、セットの全てが何故か懐かしい気持ちにさせてくれるのです。ふと思ったのですがNHKの"みんなの歌"のオープニングみたいだな、と。ほっこりする世界観でした。
羅生門に登場する下人が歩む"夢の中"を軸に、いくつもの芥川作品が絡み合ってストーリー進んでいきます。
次から次へといくつもの作品が継ぎ目なく進んでいくので、どこからが下人の"夢の中"でどこからが"現実の話"なのかが分からなくなりそうでした。
全体を通して、演者が空中に浮遊する演出が多々取り入れられており、それらのシーンでは非現実的な印象を持ちました。
"下人"を演じられたのが柄本祐さん。
やはり下人を軸にストーリーが進んでいくため、ほぼ出ずっぱり状態。なおかつ下人の夢の中で繰り広げられるストーリーの人物も演じるため、一度舞台袖に下がったと思いきやすぐ別の人物として登場するという、かなりハードな役柄を演じられておりました。
下人の夢の中に登場する、"女"を演じられたのが満島ひかりさん。
劇中、歌を歌うシーンがあるのですが、満島さんは最近歌手としても活躍されておりますし、綺麗な透き通った声が会場中に響き渡っていました。
「藪の中」にて殺されてしまう夫の役は吉沢亮さんが演じられておりました。吉沢さんは今人気急上昇中の若手俳優ですが、ただ、かっこいいだけではない。かなり演技派であることをこの舞台で証明したのではないでしょうか。
途中、吉沢さんの15分弱程ある独白のシーンがありました。ひとつひとつの言葉に感情を乗せて、身を削るようにして話すその姿に、とても心揺さぶられたことを覚えています。
かなり抽象的で、なおかつ高尚な作品ではありますが、素晴らしいものを見せていただいた、そんな気持ちになりました。
皆様もぜひ見に行ってみてください!
また、ここでお知らせです。
本サイトを開設して今月で1年が経ちました。そして先月から本サイトの観劇レビューが観劇レビューまとめサイト「演劇感想文リンク http://engeki.kansolink.com/」にリンクいただいております。そちらも是非ご覧ください。
【公演情報】
『百鬼オペラ 羅生門』
出演:柄本 佑、満島ひかり、吉沢 亮、田口浩正、小松和重、銀粉蝶・・・etc
東京公演:2017年9月8日(金)~9月25日(月) Bunkamuraシアターコクーン
兵庫公演:2017年10月6日(金)~10月9日 (月) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
静岡公演:2017年10月14日(土)~10月15日(日) 富士市文化会館ロゼシアター大ホール
名古屋公演:2017年10月22日(日) 愛知県芸術劇場大ホール
観劇日:2017年9月17日(日)17:30公演