第29回目のレビューは、『火花-Ghost of the Novelist-』です。
お笑い芸人ピースの又吉直樹さんの『火花』は、Netflixでドラマ化し、昨年には映画化もされましたが、今回とうとう舞台化されました!
小説の世界、と、作者の世界
まず、この舞台で驚きなのが原作者の又吉さんが出演しているということ。
『火花』の原作者であると同時に、この舞台の出演者として、原作者という役柄を演じている、という不思議な設定。
舞台上に原作者の又吉さんがいる。僕は原作者です、と言う。
そこに女優の観月ありささんが現れる。
観月ありささんは又吉さんに「火花」をください、という。
でも読んだことがないらしく、観月さんは『火花』を読み始める。
観月さんによって『火花』が語られ、登場人物が動き始める。
植田圭輔さん演じるスパークス徳永と、NONSTYLE石田さん演じる、あほんだらの神谷。
2人はどこまでも純粋で、まっすぐで、お笑いという世界でもがいてる。
まったく自分に嘘をついていない、そんな2人の姿が愛おしく、羨ましいとすら思いました。
小説の『火花』が目の前で繰り広げられた途中で、観月さんと又吉さんが出てきて、
小説の世界ではなく、作者の世界というか現実の世界(正確に言うと現実でもないですが・・・)に戻ってきます。
なかなか不思議な感覚です。
小説の中と外、ふたつの側面から『火花』を読んでいる感覚になりました。
徳永と神谷
『火花』の主人公である若手芸人の徳永は、若手俳優の植田圭輔さん。
徳永が弟子入りする先輩芸人、あほんだらの神谷はNONSTYLEの石田さん。
石田さんは舞台にも多数出演しており、演技に定評があります。普段テレビで見るようなNONSTYLEの明るい漫才キャラクターとは打って変わり、あほんだらの神谷は破天荒で身なりも発言も尖ってる。
そんな神谷を石田さんは見事に演じ切っていました。
本当に凄い。喋り方や歩き方やちょっとした仕草まで、神谷さんにしか見えなかった。。。
石田さんはアドリブもふんだんに盛り込んでいて、終始演者さんを笑わせていました!
同じ舞台でも毎回違ったセリフがあったり、何回行っても楽しいんだろうな~と(笑)
石田さんの出演している舞台はほとんど観ているのですが、毎回濃いキャラクターを演じ切っていて、演技力素晴らしいなと思いました。
そして、徳永を演じている植田さん。
弱々しい風貌や、神谷への尊敬を、繊細な演技で演じていました。
スパークスの解散
徳永のコンビ、スパークスは解散することとなります。
相方の山下が結婚し、子供を授かったからです。コンビの解散は胸が苦しくなります。
スパークス解散前最後の漫才。
舞台上で最後の漫才をする2人。私たちはその瞬間から、『火花』を観劇しに来たお客さんではなく、スパークスの解散ライブを観に来たお客さんになります。
この漫才を観ている間、客席からは泣いている音、鼻をすする音が響いていました。
あんなにお客さんが泣いている舞台って今までなかったんじゃないかっているくらい皆泣いていました。お客さんも、スパークスも。
徳永の相方、山下を演じているのはお笑い芸人井下好井の好井さん。好井さんはNetflixのドラマでも山下を演じています。
ドラマの解散前の漫才も好井さん号泣しているんですけど、今回の舞台でも号泣していて。
泣き方が本物のようで。。。本当のコンビが本当に解散するときの涙のようで、私もつられてしまいました・・・。
役者ですね。芸人ですけど、凄い役者です。
舞台『火花』
作中には登場しない、女優観月ありさが「観月ありさ」役としてストーリーテラーのように物語を進める一方、神谷の彼女「真樹」役として小説の中に登場したり、原作者の又吉さんが『火花』について話したり、小説を読むより深くまで『火花』の世界観を感じられる舞台となっていました。
5月には大阪公演もございます。皆様もぜひ行ってみてください!
【公演情報】
『火花-Ghost of the Novelist-』
原作:又吉直樹「火花」
出演者:観月ありさ、植田圭輔、石田明、好井まさお、又吉直樹・・・etc
東京公演:2018年3月30日(金)~4月15日(日) 紀伊国屋ホール
大阪公演:2018年5月9日(水)~5月12日(土) 松下IMPホール
観劇日:2018年4月8日(日)14:00公演