『書きます!#観劇レビュー』

鑑賞した舞台のレビューをただただ書き残していきます!

羽ばたけ小劇団シリーズ③ 座・遅咲会「愛need獣」を観劇した感想

第42回目のレビューは、座・遅咲会5月公演「愛need獣」です。

 

新シリーズ「羽ばたけ小劇団」の第3回レビューとなっておりますが、とうとう自身の演劇概念を覆す衝撃作に出会ってしまいました・・・!!!

 

座・遅咲会とは、女優 中川ミコさんが主宰の劇団で、今年1月~12月まで毎月1本ずつ、12か月連続公演を行うという年間プロジェクトを現在開催しています。

 

本作はその年間プロジェクトの5作品目ということです。

 

観劇前に本作のあらすじを読んだとき、突拍子もない設定でどのようにストーリーが進んでいくのか不安だったのですが、、、不安が一気に吹き飛ぶ素晴らしい作品でした。

 

あらすじは、

ある星に恋をすると異形な形へと姿が変わってしまうという特殊な力を持った種族がいた。その星の女王である“アイ”は種族繁栄のため、恋をせず結婚しなければならないという使命があった。

しかし、許嫁との結婚を拒否したアイは事件に巻き込まれ、地球に舞い降りてきてしまう。

そこで一人の男性“月見 恋”と出会う。

次第に心惹かれていく二人だったが、恋をしてしまったアイの体はどんどん異形な体になっていってしまう・・・。互いに気持ちを伝えられないまま、地球を、そして宇宙を巻き込んだ大騒動に発展していくSFラブロマンスアクションコメディー!

 

衝撃的な演出 

 

本作で衝撃的だったことの一つが「演出」です。

 

全編通して、パワーマイムと呼ばれる手法を用いた演出。

パワーマイムとは、小道具など一切使わず、パントマイムと膨大な説明を駆使して場面描写や登場人物の心情を表現する手法です。

 

また、一人が多数の役を次々に切り替えながら、多くの役をこなすスイッチプレイと呼ばれる手法も用いられていました。

 

そもそも、異星人という突拍子もない設定は、観客としては感情移入が難しい設定ではないかという不安があります。

しかし、パワーマイムを用いることで、場面が変わるごとに状況説明があり、登場人物の心情も分かり易くストレートに表現されるので、少し強引な場面だとしても、観客はストーリーに置いていかれることがないのです。

 

すなわち、小道具がなくとも、ひとつひとつの場面が容易に想像できるのです。

 

更に、スイッチプレイという手法も取り入れ、街中にあるモノや建物なども演者がすべて演じており、衣装もそのままで別の役を演じているのですが、しっかり切り替わっていることに驚きました。衣装が想像の邪魔をしないんです。

 

東京の地名が随所に出てきたのも、場面把握しやすい理由だと思いました。

新宿や池袋、そして、TOHOシネマズ新宿・サンシャインシティなどの建物名もセリフの中に入れることで、状況を把握することが容易でした。

 

 

今まで見たことのない作品

  

本作は、キャラクターはもちろん、セリフや心情表現もすべてアニメのオマージュを多く取り入れていました。

 

キャラクターが緊張していると「ドキドキ」、そわそわしているシーンだと「そわそわ」と実際にセリフとして口に出す。

パワーマイムならではのシーンではありますが、コメディー作品では、ありそうでなかったパターンだなぁと思ったと同時に、作品全体にかなりのスピード感がないと成立しない手法だとも思いました。

しかし!本作は最初から最後までかなりのスピード感!アニメ寄りのセリフが世界観から浮かず、ぴったりはまっていました。

 

 

大前提として演者さん全員が演技が上手で、120パーセント振り切っていた、ということが一番素晴らしかったですが、世界観、演出、セリフ、すべてのバランスが良く、最高としか言いようのない作品でした。

 

 

本作は「アトリエファンファーレ東池袋」という2019年5月にできたばかりの劇場にて上演されております。

客席は50席ほどの小さな劇場でしたが、ステージを客席の真ん中に作っており、作品の迫力を間近で感じることのできるステージ構成でした。

 

 

このステージ構成も世界観とぴったりで、役者の細かな表現・セリフがすべて観客にぶつかってくる。だからこそ、容易にストーリーに入り込める。

 

 

どれか一つでも完成度が低ければ全体のバランスが崩れてしまう、という危険性をはらんでいながら、今まで観てきたどの作品にも当てはまらない、新たな演劇表現を味わうことができました。

 

おおげさかもしれませんが、私の演劇鑑賞人生において、大きな転換となる作品に出会えました。

 

来月には12か月連続公演の6作品目が上演予定です。

私もまた観劇に行こうと思っています。

 

 

【公演情報】

 

 

座・遅咲会5月公演「愛need獣」

 

脚本・演出:矢島慎之介

 

出演者:中川ミコ (中川ミコ 遅咲会5月公演「愛need獣」5/21〜26日 (@ososakikai) | Twitter

下前祐貴、小野寺真美、住吉美紅、村田結香、長田咲紀、光峰ゆりえ、奥野裕介、杉浦勇一、政野屋遊太、真僖祐梨、工藤夏姫、太田純平、矢島慎之介、夢麻呂

 

日程:2019年5月21日(火)~26日(日) 全11公演

 

会場:アトリエファンファーレ東池袋

 

観劇日:2019年5月24日(金)19:30公演