第44回目のレビューは、東京芸術劇場プレイハウスにて上演中の舞台「BACKBEAT」です。
世界中で今も愛されている伝説のバンド、「ビートルズ」。
ビートルズはもともと5人組だった!
本作は、ビートルズの創成期であるハンブルグ時代を描いた、1994年公開の伝記映画「BACKBEAT」を舞台化した作品です。
ビートルズ結成時、ジョン・レノンに誘われてベーシストとなったスチュアートサトクリフ。彼は21歳という若さで病気で亡くなった。画家としての才能も発揮しながら、ビートルズの一員としてメンバーとともにメジャーデビューを目指していた。
スチュアートを中心に、ビートルズの青春と恋・友情を描いた青春群像劇です。
本作は、20曲以上を舞台上で生演奏。
その場で生み出される音とともに観客はビートルズの世界を感じ、彼らと一緒に青春を共有するのです。
5人のビートルズが奏でる音楽を通して、音楽とストレートプレイの新たな融合を見せてもらいました!
スチュアート・サトクリフと戸塚祥太
ジョン・レノンの親友であり、その才能に惚れ、彼が敬愛していたスチュアート・サトクリフを演じたのは、A.B.C-Zの戸塚祥太さん。戸塚さんは毎年、主演で舞台に立たれており、精力的に舞台活動されております。
感想から言いますと、スチュアート・サトクリフを演じられるのは戸塚祥太しかいない!と、そう思わせてくれる存在感でした。
スチュアートは芸術家として圧倒的な資質を持ち、ジョンにもその才能を敬愛されるほどの男。戸塚さんは才能あふれる若きスチュアートを情熱的に演じられていました。
舞台上にいるだけで説得力があり、スチュアートの力強い生き様を色彩豊かに表現されておりました。
一言一言のセリフをここまでしっかりと観客に届けることのできる役者はそういないと思います。ちょっとした表情の変化や、セリフの緩急がとても秀逸で、非常に器用な俳優という印象です。
今後も応援していきたい俳優さんの一人です。
5人のビートルズ
5人のビートルズを演じている俳優はすべて30代というから非常に驚きました。
10代の若さたる葛藤、そして、青春を謳歌している姿をしっかりと演じ切り、彼らの友情・恋・夢を掴もうともがく日々を演じている姿は、まさに夢を追いかける少年達そのもの。
ジョン・レノンを演じられた加藤和樹さんは、秀でた才能を持つジョンを説得力のある演技で観客に魅せてくれました。
ビートルズがのちの大スターになることを、芯までロックンロールな姿で加藤さんが熱演。
ジョンのスチュアートに対する友情とも愛とも呼べる感情は、愛情と尊敬が混ざって強い絆で結ばれている。そんな2人の関係性を戸塚さん、加藤さんがパワフルに、そして丁寧に演じておりました。
物語の後半、2人は大きな決断をし、それぞれ別の道を進むことを決めるのです。ジョンの意とは反してるかもしれない、でも、彼は大親友であるスチュアートを信じ尊敬し、彼の進む道を応援します。
このシーンは本作の中でも象徴的で、浜辺で灯台の明かりに照らされながら、別れを告げ、それぞれに背を向け歩き出すのです。2人の若き青年の、哀しくも強い意志のある将来への決断が丁寧に描かれていました。
ビートルズの世界へ引き込む演出
本作のセットは作り込まれたセットではなく、むき出しの舞台に大きな額縁。左右に階段と小屋が設置してある程度。場面転換も、ネオンボードやライティングを変え、舞台装置をほんの少し移動させることで場面を変えていく。
暗転も、大きなセットチェンジもなく、場面を次から次へと流れるように変えていく転換は、シンプルな中にも趣向が凝らされていて非常に秀逸だと思いました。
また、ステージ全体に奥行や高さを出し、舞台全体を使って表現。
一番最後のシーン、亡くなったスチュアートがジョンを迎えに行き、光に照らされながら肩を組んで舞台奥の暗闇に消えていく演出は、余韻を残しつつ観客の心に深く刻まれる素晴らしいシーンでした。
ビートルズ楽曲の生演奏を観客として純粋に楽しみつつ、彼らの決断や葛藤をテンポ感よく色濃く描いた素敵な作品でした。
【公演情報】
舞台『BACKBEAT』
作:イアン・ソフトリー スティーヴン・ジェフリーズ
翻訳・演出:石丸さち子
音楽:森大輔
出演者:戸塚祥太(A.B.C-Z)、加藤和樹、辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)、JUON(FUZZY CONTROL)、上口耕平、夏子、鍛治直人、田村良太、西川大貴、工藤広夢、鈴木壮麻、尾藤イサオ
東京公演:2019年5月25日(土)~ 6月9日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
兵庫公演:2019年6月12日(水)〜 6月16日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
愛知公演:2019年6月19日(水) 刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
神奈川公演:2019年6月22日(土)・ 23日(日) やまと芸術文化ホール メインホール
観劇日:2019年5月31日(金)18:30公演
2019年6月8日(土)13:00公演