『書きます!#観劇レビュー』

20代の管理人が鑑賞した舞台のレビューを書き残していきます!

舞台「キネマと恋人」を観劇した感想(ネタバレあり)

 

第45回目のレビューは、世田谷パブリックシアターにて上演中の『キネマと恋人』です。

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3年ぶりの再演となる本作は、2016年の初演時に読売演劇賞や紀伊国屋演劇賞など数々の演劇賞を受賞した作品です。

 

私も2016年に初演を観劇しており、心を鷲掴みにされた作品です。

今まで観劇してきた作品の中で一番大好き!と断言できるくらい大好きです。

「キネマと恋人」の世界が目の前に広がった瞬間から、ときめきが止まらないのです。

 

3年前の観劇レビューもよろしければご覧ください!

www.kakimasu-review.com

 

 

再演されるということを知ったときから喜びで胸が躍り、今か今かと心の底から楽しみにしておりました!!!

 

 

愛おしいキャラクターたち

 

 

 

もし映画の中の登場人物が急に目の前に現れて、あなたのことが好きだと言ってきたら・・・。

現実世界ならあり得ないけれど、この「キネマと恋人」の世界では起こるのです。

 

本作は1930年頃の架空の島を舞台にしたファンタジーブコメディ。

 

映画を観ることが生き甲斐のハルコがいつものように映画を観ていると、スクリーンの中から大好きなキャラクター“寅蔵”が話しかけてきた・・・!しかも現実世界に出てきてしまって大変なことに!島中を巻き込む大騒動に発展していくのです。

 

 

ファンタジーであり、ドタバタコメディーでもあり、最後は苦く切ないラブストーリーでもあり。

観終わったあと、感情が整理できず、複雑な気持ちを抱えたまま劇場を出ることになるのですが、夢のような浮遊感のある素敵な物語なのです。

 

ハルコが大好きなキャラクター“寅蔵”と、その寅蔵を演じている役者“高木高助”の2役を演じているのが妻夫木聡さん。

 

その演じ分けが素晴らしい。

 

現実世界を知らない“寅蔵”と、寅蔵が現実世界へ出てきてしまったことで騒動に巻き込まれる残念な役者“高木高助”は、劇中でも同じ人が演じているものの全くの別人。

 

寅蔵は正直者で人懐っこくてどこか憎めなくて、ハルコへの一途な愛を信じてやみません。

 

一方の高木高助は、俳優としての自身の今後に悩みを抱えている売れない役者。

悩んだり苛立ったり、人間らしい。その見えない葛藤を繊細に演じられていました。

 

寅蔵とハルコが海辺で語り合うシーンや、高木高助とハルコが意気投合するシーン。

 

同じ役者のはずなのに、私はどちらも妻夫木さんが演じていることを忘れていました。

 

一瞬で彼らのいる世界へ引き込まれるこの引力は、他の作品では感じたことがありません。ファンタジーの中にもどこかあり得そうな現実味を含ませ、観客を想像の更に向こう側へ連れて行ってくれます。

 

そのキャラクター達が全員愛おしくて、終始口角が上がりっぱなしでした。

 

ハルコを演じられているのは緒川たまきさん。

 

ハルコを自分に置き換えて見てしまうくらい、何かに熱中する人には必ず分かる感情を緒川さんがハルコを通して全身で表現してくださるのです。

 

ごく自然に、ごく当たり前に映画を愛する女性を演じていて、そんなハルコに自分を重ねてしまっていました。

 

私たちは向こう側の世界に救われて、向こう側に感情を委ねて生きているだけなんですよね。

 

 

映画を観ているような演出の数々

 

 

 

3年前に衝撃を受けたのは、本作の演出でした。

 

時間が流れるように、目の前で場面が流れていく。気づいたら次のシーンへ。

転換までもが完璧で、余白がなく、全てが一つの作品として必要不可欠なのです。

 

 

映像を多用し、観る者をファンタジーな世界へと導いていく。演出家・ケラさんの演劇的演出の数々によって「舞台で映画を観ているような」感覚になるのです。

 

黒子にも振付を施し、場面転換はより視覚的に。

 

セットや照明も、演劇だからこそ表現できる方法で、十分すぎるほど堪能させてくれました。

 

物語の終わり。

 

 

ほろ苦いラストで物語は終わります。

 

高木高助、ハルコがそれぞれ目に涙を浮かべて明日を見つめる姿に、気づいたら涙が出ていました。

 

(ほとんど舞台を観て泣いたことがないので、それだけ登場人物に感情移入してしまったんだなと後から気づきました。)

 

人生はそんなに甘くない、それでも生きていかなければならないということなんだろうけど、ほろ苦すぎる結末。でも、最後のハルコとミチル姉妹の笑顔に、苦しいけれど何だか少し救われた気がしました。

 

 

3時間半の上演があっという間で、気づいたら現実世界に引き戻されていて、帰りの電車に乗っている自分がいました。

 

「あれ、さっきまで観てたのは夢?」

 

そう思ってしまうほど、魔法が解けたみたいに消えてしまいそうなんだけど、間違いなく私が出会った世界。

 

ノスタルジックな気持ちを抱えつつ、今日も生きるとしよう。

ハルコが高木に想いを馳せるように、「キネマと恋人」の世界に想いを馳せよう。

そんなことを思わずにはいられない作品でした。

 

 

ハルコと映画は、私と演劇そのもののようで、勝手に自分を投影してしまっていました。

 

何かに熱中したことのある人は、確実にこの世界が愛おしいと思うし、ぜひ彼らに出会ってほしいです。

 

 

【公演情報】

 

 

 

世田谷パブリックシアターKERA・MAP#009 『キネマと恋人』

 

 

台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ

 

出演:妻夫木聡緒川たまきともさかりえ三上市朗、佐藤誓、橋本淳、尾方宣久、廣川三憲、村岡希美、崎山莉奈、王下貴司、仁科幸、北川結、片山敦郎

 

 

東京公演:2019年6月8日(土)~6月23日(日)  世田谷パブリックシアター

北九州公演:2019年6月28日(金)~6月30日(日) 北九州芸術劇場 中劇場

兵庫公演:2019年7月3日(水)~7月7日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

名古屋公演:2019年7月12日(金)~7月15日(月・祝)名古屋市芸術創造センター  

盛岡公演:2019年7月20日(土)~7月21日(日) 盛岡劇場 メインホール

新潟公演:2019年7月26日(金)~7月28日(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場

 

 

観劇日:2019年6月9日(日)13:00公演