第55回目のレビューは、舞台『阿呆浪士』です。
新国立劇場 中劇場にて公演中の本作は、2020年の幕開けにふさわしいお祭り騒ぎな作品で、終始笑いの絶えない、でも最後はホロっとさせるボリューム満点の作品でした!!!
かの有名な「赤穂浪士」。その赤穂浪士を題材とし、エンターテイメント作品へと昇華させた本作。
主役である、長屋に住むアホでお調子者の魚屋、「八」を演じるのはA.B.C-Zの戸塚祥太さん。
八はひょんなことから赤穂浪士の血判状を手にしてしまい、自身を赤穂浪士と嘘をついてしまう。その嘘がさらなる嘘を呼び、本物の赤穂浪士として討ち入りを決行することに・・・!
阿呆らしく生きて、阿呆らしく散る。そんな八の生き様はどこか憎めなくて愛らしく、一人の男としての意地を感じて胸が熱くなりました。
お調子者の八と戸塚祥太
八を演じる戸塚祥太さんは毎年主演の舞台をされ、昨年はデビュー前のビートルズを題材とした「BACK BEAT」で主演をされておりました。
以下にレビューを記載しておりますので、ぜひご覧ください!
八はお調子者ゆえ感情豊かで、そのさまざまな感情が戸塚さんの表情にしっかりのっていて、こんなにコロコロとしっかり表情を変えて演じられる戸塚さんの演技力に感動しました。
BACKBEATで演じられたスチュアートとは全く異なるキャラクターをここまでの完成度で演じられている戸塚さんは、憑依型の役者なのだなぁと思わざるをえません。
戸塚さんはコメディ作品への挑戦は今回が初めてとのことですが、そんなことは微塵も感じさせず、粋で快活で、時に茶目っ気があり、でも芯にはしっかり男気のある八を全身全霊で魅力的に演じておりました。
また、本当の赤穂浪士の一人、田中貞四郎を演じるのはふぉ~ゆ~の福田悠太さん。
福田さんも舞台経験が豊富で、本作のコミカルなシーンもシリアスなシーンもきっちりと演じ切り、その役者としての表現力に非常に器用だという印象を受けました。
田中貞四郎というキャラクターは大石内蔵助や魚屋の八たちに翻弄され、幾度となく振り回されます。赤穂浪士としての使命を果たすのか、それとも一人の人間としての人生を選ぶのか、悩んだ末にひとつの結論を出します。その最期の雄姿はとても勇ましく、福田さんの役者魂を感じるシーンでした。
雪降る討ち入り
物語の後半、しきりに降り続ける雪が印象的でした。
討ち入りの決行が決まってから雪が降り続け、吉良邸へ討ち入り吉良の首を取る、その瞬間まで、雪に見立てた紙吹雪が舞台上に積もっていきました。ここまで多くの紙吹雪を使った演出は見たことなく、とても印象的なシーンになっているなぁと感じました。
大きな舞台転換はないのですが、最後の最後に大仕掛け。
最後に「阿呆浪士」一座が作り出す江戸小屋のような雰囲気を感じることができ、自然と顔がほころんでしまいました。
また、劇中に観客がうちわやペンライトを振って参加できるシーンがありました。演者も観客も全員が参加してお祭り騒ぎができる演出は、あの空間にいるすべての人が笑顔になり、幸せな演出ですよね。
東京公演は1月24日まで公演中で、チケットもまだ発売している日もございます。
とてもエンターテインメント性に溢れた作品ですので、ぜひご覧ください!!!
【公演情報】
パルコ・プロデュース『阿呆浪士』