第62回目のレビューは、新橋演舞場にて上演中の舞台「未来記の番人」です。
本作は築山桂先生原作の「未来記の番人」を舞台化した作品で、聖徳太子が残した予言の書を巡る争いを描いた作品です。
劇中には"異能"と呼ばれる、普通の人には備わっていない能力を持ち合わせている人間が数多く登場し、聖徳太子予言の書「未来記」を巡る攻防に突入していきます。
その争いの中で、主人公の千里丸が自分が今すべきこと、自分の生きる理由について初めて自身に問うのです。
殺陣あり、ダンスあり、めまぐるしく展開する物語に最後まで目が離せませんでした。
異能を持つ主人公・千里丸
主人公は千里先も見えるという"千里眼"という異能を持つ千里丸。
A.B.C-Zの戸塚祥太さんが演じられています。
戸塚さんは毎年主演の舞台をされており、昨年も舞台『阿呆浪士』という作品で主演されていました。
『阿呆浪士』では武士(というか本当は魚屋だったんだけど、ひょんなことから赤穂浪士として討ち入りに参加させられる)を演じられていましたが、今回もまた武士、ではなく忍者です。
原作では19歳設定の千里丸ですが戸塚さんは30代。
でも全然違和感ないんですよね。ここまで違和感ないのかってくらい違和感なくて驚きました。
舞台上で千里丸はずーっと喋ってるし踊ってるし走ってるし悩んでるし怒ってます。とにかく舞台上でひたすらに忙しい。10代だからこその未熟さや幼さが垣間見えるキャラクターです。
話が進んでいくにつれて、千里丸がこの「未来記」を巡る争いの中で様々なことを学び経験し、悩み叫び苦しみながら成長していくのです。
そんな未熟さのある、でも芯の通っている千里丸を戸塚さんが全身全霊で演じられていました。
『阿呆浪士』を観劇した際も感じましたが、戸塚さんの声の張り方、ここだというときがとにかく上手い。どう上手いのか、実際聞いてくださいとしか言えないのがもどかしい。
感情が目に見えるかのように伝わってくるんです。千里丸が何を考えてその言葉を言っているのかが声の出し方から伝わってくる。
千里丸が持つ、不器用さや真面目さやユーモラスさがそれぞれ濃く出るシーンは異なっていて、その場面ごとに感情をころころと変えていく必要のあるキャラクターなんですが、戸塚さんはとにかく上手い。
憑依型の役者さんだなぁと観劇するたび思うのですが、今回も表情・仕草、細かい部分まで千里丸そのものでした。
俳優・戸塚祥太の才能は恐ろしいです。
原作と舞台脚本のちがい
原作を読んでから観劇したので、自分自身の想像と異なるシーンも多々あり、「あっここのシーンが違う」「あの登場人物は出ないんだ」など、異なる部分を探すのが非常に面白く興味深かったです。
原作では四天王寺で白鷹が登場しますが、劇中では雷に代わっており、異能を持つ者として登場する巽の異能が「人を遠くに飛ばす異能」から「人の動きを封じ込める異能」へと代わっていました。
舞台上で表現するにあたり変更したのかと思いますが、自分の予想を上回る展開に「そうきたか!」とわくわくしながら観劇していました。
あの分厚くて500頁もある本を2時間の舞台にまとめ上げる凄さ。
そして、ダンス要素や、懐メロや洋楽など、一見すると時代劇とはミスマッチな踊りや音楽を取り込むことで現代劇的な要素も加えているように感じ、新たな舞台表現だと思いました。
また、本格的な殺陣のシーンも満載で、かつ、ダンス要素を含めた殺陣もあり、視覚的にも面白い印象を受けた作品でした。
【公演情報】
未来記の番人
原作:築山桂「未来記の番人」
出演:戸塚祥太、惣田紗莉渚、松田悟志、富岡健翔、山本健翔、大川良太郎、笠原章、勝野洋、渋谷天外・・・etc
東京公演:2021年3月12日(金)~3月21日(日) 新橋演舞場
愛知公演:2021年3月27日(土) 日本特殊陶業市民会館
福岡公演:2021年3月30日(火) 久留米シティプラザ
大阪公演:2021年4月3日(土)~4月11日(日) 大阪松竹座
観劇日:2021年3月18日(木)17:00公演
2021年3月20日(土)16:00公演