第69回目のレビューは、朗読劇「逃げるは恥だが役に立つ」です。
シアタークリエにて様々なキャストが日替わりで演じるという本作。ドラマ版は社会現象になるほど大ヒット。今年はスペシャルも放送され、今もなお人気の高い作品です。
そんな"逃げ恥"を朗読劇という形で上演するという企画。2019年に第1弾が上演され、今回は再演とのこと。第1弾が好評だったということが伺えます。
朗読劇といえども、ただ読んでいるだけじゃない!
今までの朗読劇の概念が覆るような、驚きの観劇体験でした。
目でも楽しめる朗読劇
本作は、ただ読むだけではなくプロジェクションマッピングを用いて、まるでアニメのような演出が加わっており、耳だけでなく目でも楽しい作品でした。
状況描写や心情の変化なども映像が補完しテンポよくストーリーが展開していくことで、約2時間という上演時間の中で平匡とみくりの恋模様をドラマ版ラストまで描いており、非常に観やすかったです。
ラブコメならではのくすっと笑ってしまうような仕掛けも随所に散りばめられ、心の温かくなる作品でした。
4人の登場人物
本作ではメインである4人のキャラクターが登場し、物語が進んでいきました。
森山みくり(もりやま みくり):25歳。派遣切りに合い職を失うも、平匡の家事代行サービスを請け負うことになる。
津崎平匡(つざき ひらまさ):36歳。恋愛経験なし。独身サラリーマン。
風見涼太(かざみ りょうた):27歳。平匡の会社の同僚。
土屋百合(つちや ゆり):52歳。みくりの叔母。
今回私は8月13日の公演を観劇し、森山みくり役を大原櫻子さん、津崎平匡役を戸塚祥太さん、風見涼太役を梅原裕一郎さん、土屋百合役をシルビア・グラブさんが演じられておりました。
やはり朗読劇ということもあり、演技力そして美しい声を持つ方々がキャスティングされており、非常に耳が幸せでした。
大原櫻子さんは以前からとても好きな女優さんで、歌唱力も抜群で、さらに演技力も高い実力派の女優さんです。
みくりの素直で可愛らしいキャラクターが声のテンションから伝わってきて、終始可愛かったです!
戸塚祥太さんも以前から応援している役者さんで、落ち着いていて透き通る声だなぁと以前から思っていたのですが、今回の朗読劇にキャスティングされたことを知ったとき、とても嬉しかったことを覚えています。
平匡さんの真面目だけど不器用なキャラクターを、落ち着いたトーンで話されており、星野源さんとはまた違う、愛らしい平匡になっていました。
特に心の声を話すシーンが印象的で、みくりと話しているいつもの話し方とはガラッと変わり、焦りや本音がボロボロとこぼれていて、戸塚さんの演じ分けに感心すると同時にくすっと笑ってしまうシーンの数々でした。
キャスティングされている方々は、声優やミュージカル俳優、元宝塚俳優の方々など、素敵な声をお持ちの方々ばかりです。
朗読劇と言えども、目の前で広がるムズキュンの世界にしっかりとムズキュンさせられ、ラストまでドキドキしっぱなしでした。
ラストシーン。婚姻届を提出した平匡とみくりは、これからの2人の生活について気持ちを伝え合います。このシーンは、セリフを少しずつ読みあってひとつの文章にしていき、2人の初めての共同作業を見ているような感覚になりました。ようやく気持ちが通じ合い、幸せを噛みしめている2人を見て幕が閉じる。とても素敵な演出だと感じました。
今回、わたしは1公演のみの観劇でしたが、色々な方の声で逃げ恥の世界を耳から感じてみたくなりました。
【公演情報】
恋を読むinクリエ『逃げるは恥だが役に立つ』
原作:海野つなみ「逃げるは恥だが役に立つ」(講談社「Kiss」所載)
脚本・演出:三浦直之
公演:2021年8月11日(水)~18日(水) シアタークリエ
出演(出演日順):細谷佳正、太田基裕、戸塚祥太(A.B.C-Z)、立石俊樹、荒木宏文 / 仙名彩世、桜井玲香、大原櫻子、花乃まりあ、城妃美伶、内田真礼 / 梅津瑞樹、立花裕大、有澤樟太郎、梅原裕一郎、水田航生、牧島輝、矢田悠祐 / 壮一帆、シルビア・グラブ、友近、春野寿美礼、朴ろ美
観劇日:2021年8月13日(金)18:30公演