『書きます!#観劇レビュー』

鑑賞した舞台のレビューをただただ書き残していきます!

舞台『今度は愛妻家』を観劇した感想(ネタバレあり)

今回のレビューは、舞台「今度は愛妻家」です。


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2002年に初演され、2014年に2度目、今回で3度目の上演となる本作。

2010年には映画化もされ、何度も愛されている作品です。可笑しくも切ない夫婦の物語でした。

 

仕事もせず家のこともしないダメ夫・北見俊介を、今年2度目の主演となるA.B.C-Zの戸塚祥太さんが演じ、その妻である北見さくらを三倉佳奈さんが演じられております。

 

この感想は後半にかけての非常に重要な部分をネタバレしておりますので、ネタバレを避けたい方は以下からご注意ください!

 

以下よりネタバレ含みます

↓↓↓

 

とある夫婦の住む部屋がステージ上に現れ、そこで1組の夫婦が朝から口げんかしています。

外から聞こえてくる車の音や、登下校している子供たちの声がうっすらと聞こえ、なんだかリアルな夫婦の生活を覗き見しているような気分に。

 

そんな夫婦と深く関わる青年・誠は、俊介のアシスタント。そして、ゲイバーのママ・文ちゃんも彼らと仲が良く、よく北見家を出入りしています。

誠が一目ぼれした蘭子という女性は、芸能界で売れるため、売れっ子カメラマンだった俊介に写真を撮ってもらおうと北見家を訪れる。

 

俊介と大きく関わっていく彼らもまた様々な問題を抱えていました。

 

夫婦のたわいない日常を描いた作品かと思いきや、物語の中盤、さくらが実は1年前に亡くなっていたことが分かります。

 

場面は変わり、クリスマス。なんと12月24日はさくらの命日でした。ですが俊介は法要をするわけでもなく酔っぱらった上にクリスマスパーティーをしようの1点張り。

 

奥さんはすでに亡くなっていることも理解していて、冷静だということも自覚しているのに、俊介にはさくらの幻覚がずっと見えていたのです。それは、心の底では彼女の死をいまだ受け止めきれていないということ。

 

「お前、死んだんだよな?」と、彼女に何度も問いかける俊介。

何度も何度も確認するという、冷静さと焦りという真逆の感情を、戸塚さんは落ち着いたトーンで表現していました。

泣きわめいたりオーバーリアクションで悲しみを表現するほうが見ていて分かりやすいけど、そういう方法では表現しない脚本や演出がとても素敵で、フィクションなんだけれど非常にリアルな感情が伝わってきました。

 

前半の夫婦のシーンでは、低レベルな夫婦のケンカが見ていて楽しそうですし、結婚6年目の夫婦ってこんな感じなのかな~というリアリティも感じていました。嫌いな食べ物を妻に食べさせられて、いつの間にか食べられるようになったり。一緒に暮らすことで、自分自身もいつの間にか変わっている姿がいくつも描かれています。

ですが、後半では前半とは雰囲気も変わって、奥さんが亡くなったあとの悲しみを帯びた世界に。 

 

病気や寿命でなく事故という突然の出来事で亡くなってしまい、妻を失った俊介は長い間うつのような状態だったことも分かってきます。

 

悲しみを紛らわすようにパーティーで騒ぐ俊介を、そんな俊介をどうしようもできない文ちゃんや誠の表情も辛く、なんとも苦しい時間が流れます。

 

 

ついにはさくらの幻覚も消えてしまい、グッと悔しさを噛みしめてひとり涙を流す俊介の姿は、非常に芝居力が必要なシーンでしたが、その姿に説得力がありました。

 

ダメ夫の戸塚さんはイメージが出来たんですが、冷静なのに現実を受け入れられない役柄を演じているイメージが無かったので、この真逆の感情を抱えて爆発しそうな戸塚さんの芝居力すさまじかった・・・。

 

 

ストレートプレイの良いところは、細かい表情変化や声のテンション感がダイレクトに伝わってくるというところ。

何度か戸塚さんの作品を観劇していますが、感情表現がとても豊かで、でもオーバー気味にならない凄さを改めて感じました。

 

 

今作を2回観劇したのですが、1回目では時系列がいまいちよくわからず…ですが2回目観劇の際には時系列を理解できました。

驚いたのは、時系列がわかったことで、今まで見えてこなかった伏線がいくつも散りばめられているということ。

とある場面での俊介の言動や表情、さくらの行動、文ちゃんや誠のセリフの言い方など、実はすでにさくらが亡くなっていることを示唆するような伏線がたくさん散りばめられていました。

 

さくら役の三倉佳奈さん、パワフルで明るい奥さんを可愛らしく演じられて、こんな素敵な奥さんがいなくなってしまったら、、、という納得感がありました。

 

突然旅立った者、突然取り残された者。突然の別れほど悲しいものはありませんが、誰もが経験する"死"というものに改めて向き合った、このご時世だからこそ考えるべき内容の作品でした。

 

 

【公演情報】

 

舞台「今度は愛妻家」

 

作:中谷まゆみ

演出:板垣恭一

 

出演:戸塚祥太(A.B.C-Z)、三倉佳奈、黒沢ともよ、浦陸斗(AmBitious/関西ジャニーズJr.)、渡辺徹

 

公演日程:

東京公演 2022年10月7日(金)~10月23日(日) よみうり大手町ホール

大阪公演 2022年10月26日(水)~10月30日(日) COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

宮城公演 2022年11月5日(土)・6日(日) 電力ホール

 

観劇日:

2022年10月18日(火)18:30公演、10月22日(土)17:00公演