今回のレビューは、舞台「風が強く吹いている」です。
大ヒット小説が原作の本作は、映画化やアニメ化もされており、さらには、何度も舞台化されている人気作。
2023年の今年、A.B.C-Z塚田僚一さん主演で再演となりました。
小説原作も未読で、映画も未見だったのですが、こんなに熱い青春ドラマを目の当たりにするとは思いませんでした・・・。真剣に競技に取り組む青年たちの"青春"を真正面から浴びました。
陸上素人が箱根駅伝を目指す!
塚田さん演じる大学4年の清瀬灰二(ハイジ)は、ある日、矢部昌暉さん演じる蔵原走に出会います。彼に走りに魅了され、彼を学生寮の仲間に招き入れます。そこで彼は、一緒に住んでいる学生寮「竹青荘」の住人を巻き込んで、このメンバーでゼロから箱根駅伝を目指すと言いだしたのです。
竹青荘の住人は学年も性格もバラバラで個性豊か。陸上経験のある人も何人かいますが、今は競技から離れている者ばかり。
でもそんな10人で箱根駅伝を目指したいんだ、というハイジの強い気持ちが伝わって、彼らは無謀ともいえる、箱根駅伝出場というチャレンジを開始します。
ハイジ役の塚田さんは昨年熱海五郎一座へ出演し、コメディ部分もアクロバット部分も担う、重要な役を熱演していました。
今回は大学生役、しかも、素人集団をまとめるリーダーとして舞台上でとても大きな存在感がありました。
カーテンコールでは少しトークがあり、二葉勇さんと二葉要さんが稽古場での塚ちゃんの微笑ましいエピソードを話していて、塚ちゃんがカンパニーの皆さんにいかに愛されているか、そしてカンパニーの良い雰囲気が伝わってきました。
駅伝で走る彼らの思い
1幕は駅伝出場に向けての練習や出場決定までのストーリーが描かれ、2幕ではいよいよ箱根駅伝での彼らの走りが描かれていきます。各区間を走る、それぞれの走者にスポットライトを当てながら展開されていきました。
2.5次元らしい、音響・照明を多用した演出で、とにかく疾走感がありました。テンポも早く、様々な仕掛けで走っている様を表現しているので、見ていて飽きません。そしてプロジェクションマッピングを使用して文字を投影し、まるでアニメを見ているような感覚に。
また、ステージに傾斜が付いている八百屋舞台のため、1列で並んで走っていても後方が埋もれず、集団で走っているような駅伝さながらのリアル感がありました。
10人ともに見せ場があり、各区間を走りながら様々な感情が舞台を渦巻いていきます。走ることに対する思いや、メンバーに感じている感情を吐露する場面は、感動のシーンに。
全員が「ハイジの夢を叶えたい!」と強く思い、走の見ている世界を見てみたいと必死にもがき、ここまで来た姿がしっかりと描かれ、メンバーから大きな影響を受けて自分の走りに向き合う全員の姿に、胸が締め付けられました。
【公演情報】
舞台「風が強く吹いている」
原作:三浦しをん『風が強く吹いている』(新潮文庫刊)
脚本:春日康徳
演出:吉田武寛
出演:
塚田僚一(A.B.C-Z)、矢部昌暉(DISH//)、二葉勇(TWiN PARADOX)、二葉要(TWiN PARADOX)、橋本全一、高岡裕貴、阿部快征、澤井一希、安原寛之、冨岡健翔(ジャニーズJr.)、西村菜那子、山田ジェームス武、三津家貴也、旺輝、佐藤淳、鶴岡政希、中谷優斗、藤井雅文、真﨑傑、南舘優雄斗、森田陽大 / 生島ヒロシ(声の出演)
公演日程:
2023年1月18日(水)~1月22日(日) 東京・シアター1010
観劇日:2023年1月21日(土)17:30公演