『書きます!#観劇レビュー』

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宝塚宙組『カジノ・ロワイヤル~我が名はボンド~』を観劇した感想(ネタバレあり)

今回のレビューは、宝塚宙組『カジノ・ロワイヤル~我が名はボンド~』です。


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前作は宝塚の新たな魅力を引き出した「HiGH&LOW」を上演した宙組。そして今作ではあの有名な「007」を上演ということで、非常に楽しみにしていました。

期待を裏切らない、というか超えてきた、、、今回も宙組色全開のパワフルで笑いに満ち溢れた明るい作品でした!

 

バチバチにかっこいいジェームズ・ボンド

 

真風 涼帆さん演じるボンドのかっこよさ。

気品を感じる、美しくカッコいいジェームズ・ボンドです。

 

本作はトップスターコンビの卒業という、通常公演よりも更に特別な重みの増す公演ですが、キャラクターと退団者を重ねた悲しい物語にするのではなく、明るく笑える作品で送り出そうという思いを感じました。愛だなぁと。実際、今の宙組にも合っているのですが、観ている観客も笑顔で今を楽しめる、そして笑顔で送り出せる、晴れやかなとても良い作品だと思います。

 

今作は1本ものですので約2時間ほどの物語。1本ものは場面転換も多く物語に厚みが出ますし、演者の芝居をじっくり堪能できるので個人的にも大好きです。

 

最後のバトル

 

今作の特徴として、悪役がしっかり悪役しているので非常に観やすいです。真風涼帆さん演じるジェームズ・ボンドの宿敵となるのが、芹香斗亜さん演じる青年実業家ル・シッフル。バチバチな構図も見ていてワクワクしますし、ラストで繰り広げられる1対1の大立ち回りも圧巻。

真風さんと芹香さんだからこそのかなりのスピードでの殺陣で、これぞ阿吽の呼吸。刀と拳銃という、近距離で細かな動きを要求される難しい殺陣も繰り広げられました。

これまで宙組を支えてきたトップお二人の、正真正銘最後のバトル。いままでの集大成のようなシーンでした。

 

 

愛すべき登場人物たち

 

彼らを取り巻くキャラクターも全員が可愛らしく、すべて当て書きなんじゃないかというハマりっぷり。

ひょんなことからボンドとル・シッフルの戦いに巻き込まれる青年ミシェルを演じるのは桜木みなとさん。豊かな表現力でキャラクターの心情を表現する方で、前々作「NeverSayGoodbye」の悪役アギラールや前作「HiGH&LOW」での病弱なスモーキーとはまた大きく違う役柄を演じています。今回のミシェルは、好青年だけどポンコツで頼りがいなしといったキャラクター。ル・シッフルの革命思想の餌食となり、気づけば窮地に立たされているという巻き込まれっぷり。

潤花さん演じる彼女・デルフィーヌにも見捨てられ、でも、諦めず恋に夢に奔走する姿が可愛らしい!!!

毎回言っていますが桜木さんはとにかく受けの芝居が上手い。相手の台詞を受け取ったときのミシェルの表情がコロコロ変わって、台詞の強弱からもしっかりとミシェルの感情が伝わってきます。とにかく今回も器用で素晴らしかった!

 

随所に笑いが盛り込まれていた本作ですが、寿つかささん・天彩峰里さん・若翔りつさん・瑠風輝さん・風色日向さん・亜音有星さんを筆頭にコメディエンヌっぷりが存分に発揮されていて面白すぎました。彼らの特徴や個性を生かして、一人一人の実力が各キャラクターを濃いものにし、見どころだらけの物語になっていると思います。

 

個人的にとてもうれしかったのは若翔りつさんの歌唱シーンがあったこと。

星組でいう礼真琴さんのような、宝塚のなかでも飛び抜けて歌が上手い方が各組に数人いらっしゃいますが、宙組だとりつさんがめちゃくちゃ上手い。

りつさん演じるナチスドイツの科学者・ドクトルが自身の野望を歌うシーンは、コミカルでありつつ歌唱力の光るシーンで、セリフと歌の中間のような感覚で歌唱が難しいと思いますが、軽々と歌い上げているようで、さすがとしか言いようがありません・・・。

 

そしてボンドの敵であるル・シッフルを演じる芹香斗亜さん。芹香さんは次期トップとなることが発表されましたので、ル・シッフルのような完全なる悪役を見れるのはこれで最後かと思います。(正義のために悪となる…!ようなキャラクターは演じるかも?)

バチバチに悪に振り切った芹香さんは本当にかっこいい!シャーロック・ホームズのモリアーティを演じられていたときのような、高貴かつ冷徹な雰囲気を醸し出しながらも、自身の野望を叶えようとする執念も感じる演技でした。

 

圧巻の舞台演出

 

巨大トランプや巨大カジノ台が登場し、それらを随所に使った演出の数々は、ステージ上を鮮やかに彩っていました。カジノシーンでの、大金を賭けたボンドvsル・シッフルの直接勝負では、登場人物全員がダンスで勝負を表現する、とても迫力のあるシーンになっていました。

 

物語のラスト、ボンドとデルフィーヌがパラシュートに乗っているというシーンがあったのですが、宝塚劇場の持つ舞台機構があるからこそできる演出で、常設劇場ならではだなぁと感じました。

そもそも回転舞台だったり迫りあがりステージがあったり、様々な演出が可能という時点で素晴らしい劇場ですし、その機構を存分に使った本作は、ダイナミックで華やかな作品でした。

 

 

今作で卒業される現宙組トップスターコンビの真風涼帆さんと潤花さん。

お二人の持つ気品と明るさは、宙組のいまの空気感を作り上げてくださいました。

 

そして、長きにわたって宙組の大黒柱を担っていた組長の寿つかささんも今作でご卒業されます。現体制の宙組の集大成となる本作、最初から最後まで感無量でした・・・!

 

 

【公演情報】

 

宝塚宙組『カジノ・ロワイヤル~我が名はボンド~』

 

 

作・演出・小池修一郎

 

出演:

寿 つかさ、真風 涼帆、松風 輝、芹香 斗亜、桜木 みなと、秋音 光、紫藤 りゅう、秋奈 るい、花菱 りず、小春乃 さよ、瑠風 輝、若翔 りつ、澄風 なぎ、優希 しおん、天彩 峰里、鷹翔 千空、湖々 さくら、真名瀬 みら、水音 志保、雪輝 れんや、潤 花、花宮 沙羅、湖風 珀、風色 日向、春乃 さくら、凰海 るの、夢風 咲也花、輝 ゆう、有愛 きい、亜音 有星、栞菜 ひまり、彩妃 花、琉稀 みうさ、嵐之 真、真白 悠希、梓 唯央、楓姫 るる、舞 こころ、陽彩 風華、愛未 サラ、山吹 ひばり、泉堂 成、美星 帆那、大路 りせ、葵 祐稀、聖 叶亜、鳳城 のあん、渚 ゆり、風羽 咲季、郁 いりや、葉咲 うらら、花咲 美玖、波輝 瑛斗、風翔 夕、結沙 かのん、奈央 麗斗、華乃 みゆ、澄乃 紬、朱 涼、織史 青、梨恋 あやめ、花恋 こまち、愛城 美紗、華楽 逸聖、輝珠 ななせ、海玖里 粋、志凪 咲杜、朝比奈 天

 

公演日:

兵庫:2023年3月11日(土)~4月17日(月) 宝塚大劇場

東京:2023年5月6日(土)~6月11日(日) 東京宝塚劇場

 

 

観劇日:2023年3月21日(火)11:00公演、15:30公演