今回のレビューは、舞台「ウーマン・イン・ブラック<黒い服の女>」です。
イギリスで数十年もの間ロングラン公演を行ったという超人気作品。
演劇では珍しいクラシックなホラー作品といった感じで、想像力も膨らませながら、ある意味”参加型”のような作りで、徐々に明らかになる恐怖の理由に、後半にかけて非常にワクワクする作品でした。
出演者は二人。
日本では9年ぶり8度目の上演ということで、数々の役者さんが演じられてきた本作ですが、今回は勝村政信さんと向井理さん。
役者さんはたった二人ですが、登場人物は二人ではなく、特に勝村さんは数え切れないほどのキャラクターを次から次へと演じ分けておりました。
勝村さんが演じるのは中年の弁護士キップス。向井理さんはキップスに演技指導をする若い俳優として登場。
この二人が、キップスが若いころに体験したという世にも恐ろしい出来事を劇中劇という形で演じていきます。
劇中劇が進むにつれ、徐々に明らかになるキップスの体験した恐ろしい出来事。
もちろん二人のお芝居も素晴らしいですが、緻密で計算された照明と音響がめちゃくちゃ良い。
暗闇や光、鳴り響く音が恐怖を増幅させ、ステージだけではなく客席ごと恐怖空間にしてしまう。
客席丸ごと真っ暗にし、ライトの明かりで恐怖を表現する演出などとても面白く、最初にも書きましたが、観ているだけなのに”参加型”のような作品でした。
この作品のカギとなる”あるモノ”が暗闇に浮かび上がるのですが、見えない人もいるんじゃないかというくらいの暗さ。その暗さが絶妙でしたし、シンプルなステージ構造だからこそ演出が巧妙で、ステージの奥行も利用したストーリーの見せ方も楽しく、後半はひたすらビビり驚いていました。
膨大なセリフを二人で進める難易度の高い作品だと思いますが、勝村さん向井さんあっぱれでした。
そして、いろんな役者さんで観てみたいと思う作品でしたし、ここまでホラー要素の強い演劇作品は初めてで、新感覚でした。
そしてあのラスト…怖すぎ。
【公演情報】
パルコ・プロデュース2024「ウーマン・イン・ブラック<黒い服の女>」
原作:スーザン・ヒル
演出:ロビン・ハーフォード / アントニー・イーデン
出演:
向井理 勝村政信
日程
東京公演:2024年6月9日(日)~6月30日(日) PARCO劇場
大阪公演:2024年7月5日(金)~7月8日(月) 森ノ宮ピロティホール
福岡公演:2024年7月13日(土)~7月14日(日) J:COM北九州劇場 大ホール
愛知公演:2024年7月19日(金)~7月21日(日) 東海市芸術劇場 大ホール
観劇日:2024年6月22日(土)18:00公演