今回のレビューは、舞台「SLEUTH」です。
最初から最後まで本当に二人だけの、濃密な二人芝居。
升毅さん演じる推理小説家のアンドリューと、その妻の浮気相手である戸塚祥太さん演じるマイロとの高尚な推理戦が繰り広げられます。
相手の命をも脅かすほどの危険な推理戦が次から次へと展開され、私も全く次の展開が読めず、固唾をのんでステージを見守っていました。
どこからがゲームで、どこからが真実なのか。境目がどんどんと不明瞭になり、二人の男の運命は予想もしない結末へ…。
升毅さん演じるアンドリューの色気と柔らかな語り口調から、ストーリーが進むにつれての変化は非常に恐ろしく、人相が変わっていく様は圧巻だなと感じました。
アンドリューと危険な心理戦を行うマイロは、もともとA.B.C-Zの橋本良亮さんが演じる予定でしたが、体調不良にて直前で活動休止に。そのため、代役として同グループの戸塚祥太さんがマイロを演じております。
橋本さんも毎年のように主演舞台をされている実力者ですが、知的で好青年な役がとても似合う方なので、本作に出演されるのをとても楽しみにおりました。
公演まで約2週間というところで、代役を任されたのはA.B.C-Zの戸塚祥太さん。
戸塚さんは今年3月にも主演舞台「緑に満ちる夜は長く…」でハンデを背負って生きる青年という難しい役を演じられ、そのお芝居がとても素晴らしく、涙をそそる好演だったのが記憶に新しいです。(とても演劇的で心温まる大好きな作品でした)
アンドリューの心理ゲームに巻き込まれる一方、翻弄させる面も併せ持つマイロを演じる戸塚さんはさすがとしか言いようがなかったです。
代役ということもあって、今まで演じられてきたキャラクターとはかなり異なる雰囲気のキャラクターだなと感じましたが、代役が決定してから時間のない中、あの難解で長いセリフを自分のものに落とし込める凄さ。
マイロは2幕で物語を混乱させる行動を起こします。その掴み切れない本性を表現する表現力や、その言動に説得力を感じるお芝居でした。
こんなに難解で重厚な役なのに同グループ内で代役を立てられてしまうA.B.C-Zの凄さ。
改めて凄いグループだと思い知らされます。
ワンシチュエーションで展開されるからこそ物語に没入できますし、役者二人の芝居をひたすら堪能できる約2時間。
そして脚本が非常に面白く、ハラハラドキドキの連続で、息が詰まりそうなくらいの緊迫感がありますが、これはネタバレを踏まずにぜひ観に行っていただきたい作品です。
升さんのパワフルで惹きつけられるお芝居や戸塚さんの新たなお芝居を楽しめる素晴らしい作品ですし、そして、いつか、橋本さん演じるマイロと升さんの演技バトルも観られる日が来ることを願っております!
【公演情報】
舞台『SLEUTH』
作:アンソニー・シェファー
演出:内藤裕子
出演:戸塚祥太 升毅
日程
東京公演:2024年7月18日(木)~7月28日(日) よみうり大手町ホール
京都公演:2024年8月3日(土)~8月4日(日) 京都劇場
観劇日:2024年7月21日(日)13:00公演