『書きます!#観劇レビュー』

鑑賞した舞台のレビューをただただ書き残していきます!

舞台『ふくすけ2024-歌舞伎町黙示録-』を観劇した感想(ネタバレあり)

今回のレビューは、舞台「ふくすけ2024-歌舞伎町黙示録-」です。


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とてつもない衝撃作。

1991年に初演され、12年ぶり4度目の再演となる本作。

今回初めて観劇したのですが、「ふくすけ」という作品の持つエネルギーに圧倒され、抜け殻のように劇場を後にしました。

 

暴力、薬物、エロ、精神疾患etc、なかなか過激な内容が盛り込まれているのですが、物語の舞台が”歌舞伎町”なので、なぜだろう親和性が高い…。キャラクターと空間にあまり違和感がありませんでした。

 

会場のTHEATER MILANO-Zaから新宿駅に向かうには、歌舞伎町を通らなければならず、帰り道は非常に具合が悪かった。偶像だった世界と現実が交差しているような感覚で、あの世界の延長なのではないかと。

すっかりしない気持ちのまま、駅に向かう数分間を歩いていました。

 

主人公のコオロギ演じる阿部サダヲさんもその妻・サカエを演じる黒木華さんもエネルギッシュでとても素晴らしかった。コオロギの無鉄砲さと知的さ、そして狂気性といういくつもの顔を表現していく阿部さんの器用で繊細な芝居力。おしとやかでありつつ凶暴さをはらんだサカエを演じる黒木さんの、掴み切れぬ危うさを醸し出す上手さ。

そして、物語のキーマンとなるふくすけを演じる岸井ゆきのさんは、本当に芸達者な方。

この作品で何かしらの演劇賞を取るのではないだろうか…。そもそも少年の役であり、衝撃的なバックボーンを抱えながら生きていく姿を演じる難しさもさることながら、後半の舞台上での立ち廻り。圧巻でした。

 

個人的には松本穂香さんも素晴らしかったです。

トー横キッズ?風俗?の女の子を演じていましたが、立ち姿と喋り方も全く違っていて、最初松本さんだって分かりませんでした。人生への絶望を抱えて、その日暮らしのように生きている彼女の物語も別軸で展開され、彼女のストーリーが一番現実でも起こりそうな気がして、観ていて苦しくて悲しかった...。

 

松尾スズキさんの描く世界は、不条理で不謹慎でギリギリアウトなのでは?という世界線。

過去にも観劇して印象に残っているのは「ゴーゴーボーイズゴーゴーヘブン」や「ツダマンの世界」など。

どれも面白いのに毒々しくて、観ていて苦しいシーンもあるのに笑ってしまう。この矛盾を浴び続けなければならないのが松尾さんの作り出す世界だな、と毎回感じています。

 

私自身、スプラッター系の描写や下ネタが苦手なので、正直気分の良くないシーンも多々…。

ですが、怖いもの見たさで観に行ってしまう…。そして毎回しっかりと足取り重く帰ることになるのですが、この感覚を味わえるのが演劇の面白さだなと。

 

どんどんコンプラが厳しくなるこの時代に、反旗を翻すかのごとく上演しているカッコよさ。

閉鎖された空間で、観客と演者、そして作品・劇場に携わる者のみが見ることのできる世界。だからこそ演劇は自由であり、無限であると再認識した瞬間でした。

 

 

私がもし高校生のころにこの作品を生で観ていたとしたら…

演劇の世界に飛び込んでいたかもしれません。

「こんな作品を作ってみたいなぁ」と、高校生のころに将来の夢を想像して目を輝かせていた頃の、純粋な気持ちを久々に思い出しました。

 

 

【公演情報】

 

舞台『ふくすけ2024-歌舞伎町黙示録-』

 

作・演出:松尾スズキ

 

出演: 阿部サダヲ、黒木 華、荒川良々、岸井ゆきの、皆川猿時、松本穂香、伊勢志摩、猫背 椿、宍戸美和公、内田 慈、町田水城、河井克夫、菅原永二、オクイシュージ、松尾スズキ、秋山菜津子

加賀谷一肇、石井千賀、石田彩夏、江原パジャマ、大野明香音、久具巨林、橘 花梨、友野翔太、永石千尋、松本祐華、米良まさひろ、山森大輔

ミュージシャン:山中信人(三味線)

 

日程

東京公演:2024年7月9日(火)~8月4日(日) THEATER MILANO-Za

京都公演:2024年8月9日(金)~8月15日(木) ロームシアター京都 メインホール

福岡公演:2024年8月23日(金)~8月26日(月) キャナルシティ劇場

 

 

観劇日:2024年8月2日(金)18:00公演