今回のレビューは、舞台「て」です。
祖母の葬式に集まった家族。
葬式のシーンから時間がさかのぼり、まだ祖母が生きていた頃、認知症を患っていた祖母のため数十年ぶりに家族が集まる場面へと切り替わる。
久々に顔を合わせる長男(大倉孝二)、長女(伊勢佳世)、次男(田村健太郎)、次女(藤谷理子)。
“親ガチャ”なんて言葉がありますが、子供は親を選べない訳で、素行の悪い父親から理不尽な暴力を受けてきた四兄弟。それぞれの想いが交錯するなか、次男が口火を切って父親に感情をぶつけてしまう。
同じ場面をA面B面のように視点を変えて描き、観ている我々はあの場面の裏で起こっていた出来事の答え合わせをしているような感覚に。場面と場面、点と点が繋がったとき、登場人物の表情やセリフに意味が乗っかって、改めて家族の難しさを考えさせられるのでした。
枠組みだけのシンプルな舞台セット、むき出しの照明。シンプルだからこそ役者が際立つお芝居でした。
後半になるとシンプルな枠組みが歪みだす演出も加わり、ぎりぎり保っていた家族間の均衡が崩れだすような危うさを表現しているよう。
大倉さん田村さんを筆頭に、飾り気のないありのままの感情が届いてきて、面白いのに辛いし、笑っているけど最後泣いているし、悲喜劇ってなんだか感情が忙しい。
この物語を通して、自分の家族や自分の人生を回顧したり、役者の皆さんの”人間力”も感じることができる物語でした。
【公演情報】
ハイバイ20周年「て」
作・演出: 岩井秀人
出演: 大倉孝二、伊勢佳世、田村健太郎、後藤剛範、川上友里、藤谷理子、板垣雄亮、岡本昌也、梅里アーツ、乙木瓜広/岩井秀人、小松和重
日程
東京公演:2024年12月19日(木)~12月29日(日) 本多劇場
富山公演:2025年1月8日(水)~1月9日(木) 富山オーバードホール
高知公演:2025年1月18日(土) 高知県立県民文化ホール
兵庫公演:2025年2月1日(土)~2月2日(日)兵庫県立芸術文化センター
観劇日:2024年12月21日(土)19:00公演