『書きます!#観劇レビュー』

鑑賞した舞台のレビューをただただ書き残していきます!

舞台『真夜中に起こった出来事』を観劇した感想(ネタバレあり)

今回のレビューは、舞台「真夜中に起こった出来事」です。


f:id:kanazaaaaaawa:20250316175121j:image

 

ヒトラー政権となったドイツで、政治犯として強制収容所へ収容されてしまった弁護士のハンスと、彼を救い出そうと奮闘する母親を描いた、史実を元にした作品です。

 

理不尽な暴力や拷問など、残虐なシーンが多く描かれているのですが、これが史実に基づいているというのだから恐ろしい。いかにヒトラーが虐殺お構いなしの史上最低の独裁者であったかが分かります。

そのような独裁国家ドイツで、ハンスやその母親のように勇敢に戦っていた人々がいたのだと。消えそうな光を必死に掴み自分を信じて諦めない姿に、涙なしには見られませんでした。

 

ハンスの母、イルムガルトを演じたのは高橋恵子さん。

観客に対するストーリーテラーのように、こちら側に状況を説明しながら物語を伝える役割を担っていました。

70歳とは思えないパワフルさと美しさ。息子を一途に思い続け、一人で大きな組織に戦い続けるその姿が勇ましいと同時に辛く、心を打たれました。

 

ハンスを演じたのは戸塚祥太さん。

毎年重厚なストレートプレイに数多く出演され、今回もまた難しい役柄でしたが、安心感あるお芝居で我々を物語の世界に導いてくれました。

無意味な暴力や拷問で体中が負傷し、目や足、手が思うように動かなくなっていくさまを時間の経過とともに表現し、細かな体の使い方がとても素晴らしかったです。

 

物語のラスト、ボロボロになったハンスから一転、収容されるきっかけにもなった裁判のシーンへとシーンが変わり、ハンスは凛とした姿で証言台のヒトラーと対峙しています。

戸塚さんはこの約10分にもわたる裁判シーンを一人で語り続けます。テンポや強弱も素晴らしい。勇敢で、聡明で、間違いなく正しい行いをしていたハンスという人間に説得力を持たせる圧巻のパフォーマンスでした。

 

ハンスが人生で最も輝いていたそのシーンの直後、彼は収容所の中で自殺をしてしまいます。

 

なんともショッキングな演出でした…。

そして、ハンスが非道な扱いを受け続け、なぜ最期には自殺をしてしまう運命になってしまったのか。彼は歴史の犠牲者というほかありません。

 

今を生きる我々は過去の過ちをしっかりと知り、もう二度と、絶対に、繰り返してはならないのだと、この作品を通して胸に刻みました。

 

 

【公演情報】

 

舞台「真夜中に起こった出来事」

 

作:マーク・ヘイハースト

翻訳:小田島恒志、小田島恒志

演出:深作健太

 

出演:高橋惠子、戸塚祥太、モロ師岡、畠中洋、松井工、生津徹、小日向春平、西岡德馬

 

 

日程

東京公演:2025年3月7日(金)~3月17日(月) よみうり大手町ホール

大阪公演:2025年3月22日(土)~3月23日(日) サンケイホールブリーゼ

 

観劇日:2025年3月13日(木)18:30公演