『書きます!#観劇レビュー』

20代の管理人が鑑賞した舞台のレビューを書き残していきます!

舞台『ブラッケン・ムーア~荒地の亡霊~』を観劇した感想(ネタバレあり)


第50回目のレビューは、「ブラッケン・ムーア~荒地の亡霊~」です。

 

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とある村のある家族と、その親友家族の物語。

 

 

亡くなった息子の亡霊が突如目の前に現れたら・・・。

 

ぞっとするシーンも随所にちりばめられたヒューマンサスペンス作品でした。

 

主演のテレンス・エイブリーを務めるのは岡田将生さん。

 

今年は4月に自身初のシェイクスピア作品「ハムレット」にも主演され、近年は精力的に舞台に出演されております。

(以下にレビューを記載しております。ぜひご覧ください!)

www.kakimasu-review.com

 

岡田将生演じる22歳のテレンスには親友エドガーがおりました。しかし10年前、エドガーはブラッケン・ムーアという荒野の廃虚に落ち、不慮の事故で12歳という若さでこの世を去っていたのです。

 

以前は家族同士で仲良くしていたのだが、エドガー亡き後、疎遠になっていた両家。

 

エドガーの母、エリザベスは息子の事故以来、家にこもって塞ぎがちになっており、彼女を元気付けるためにテレンス一家は久しぶりにエドガー家を訪れたのです。

 

10年ぶりに訪れた親友の家に1週間ほど滞在することにしたテレンス一家。

 

彼はエドガーの部屋を借りることにしたのですが、彼は毎晩何かにうなされるようになりました。 

 

そしてある晩、テレンスが突然、皆の前でこう話しはじめたのです。

 

「ブラッケン・ムーアに連れていって。そこで何があったか話してあげる。」

 

なんと、テレンスにエドガーの亡霊が憑依し、母のエリザベスや父に対して話しかけてきたのです。

 

12歳のエドガーが憑依したテレンスはブラッケン・ムーアに行き、残された家族に当時の真実を伝えはじめました・・・。

 

基本的にあらすじも何も知らないまま観劇するので、本作に関してストーリーに驚かされました。

 

 

岡田将生と12歳の亡霊

 

 

岡田さんに亡霊が憑依するシーンが何ともリアルで、テレンスの人格とエドガーの人格が一つの体に入り込んでいるという描写が生々しく舞台上で表現されており、岡田さんの演技力が光るシーンでした。

 

 

12歳のエドガーを、まだ幼さのある喋り方で岡田さんが演じ、見事に二人の人間を演じ分けておりました。

 

エドガーを演じている岡田さんの、体の動かし方や話し方が純粋な少年のようで、何とも可愛らしかったです。

 

一方で、ブラッケン・ムーアでの出来事を話すシーンでは、床を這う・泣き叫ぶなどの痛々しい描写が続き、身を削って演じているエドガーの最期は、観ていて心が締め付けられました。

 

 

エドガーの母エリザベスを演じていたのは木村多江さん。

 

息子を亡くした辛さから心を閉ざしてしまった難しい役どころでした。

 

テレンスにエドガーの亡霊が憑依してから、自分の息子と話せるかもしれないという希望と、本当の息子はおらず、テレンスに憑依しただけの亡霊であるという絶望、ふたつの感情をオーバーではない繊細な演技で演じられており、息子を亡くした母親というキャラクターに説得力を持たせていました。

 

 

最後にエドガーはテレンスの体を借り、両親に当時の思い・今の思いを伝えます。

 

その後、亡霊は消え、いつも通りの朝を迎えました。

 

テレンス一家が帰る日、テレンスはエドガーの両親に対し、衝撃の事実を口にします。

 

その事実によって今までの伏線が回収され、物語が今までとは全く別の色を帯びていくのです。

 

予想もしていなかった展開に、物語の行く末に固唾を飲みました。

 

そしてあの恐ろしい終わり方。ぞっとする終わり方でした・・・(笑)

 

 

近年、難しい作品に果敢に挑戦されている岡田さんの、舞台俳優としての実力が着実にあがっていると確信した作品となりました。

 

また、後半になるにつれて非常に面白い作品で、目が離せないストーリー展開でした。

 

 

【公演情報】

 

『ブラッケン・ムーア~荒地の亡霊~』

 

作:アレクシ・ケイ・キャンベル

 

演出:上村聡史

 

出演:岡田将生木村多江峯村リエ相島一之、立川三貴、前田亜季、益岡 徹、大西統眞、宏田 力

 

公演日程:

東京プレビュー公演:2019年8月2日(金)~4日(日) シアター1010

長野公演:2019年8月6日(火) 長野県県民文化会館 ホクト文化ホール 大ホール

愛知公演:2019年8月8日(木)・9日(金) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール

静岡公演:2019年8月11日(日) 静岡市清水文化会館 マリナート

東京公演:2019年8月14日(水)~27日(火) シアタークリエ

大阪公演:2019年8月30日(金)~9月1日(日)梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

 

 

観劇日:2019年8月17日(土)18:00公演

 

 

 

 

舞台『二度目の夏』を観劇した感想(ネタバレあり)


第49回目のレビューは、下北沢・本多劇場にて上演中の『二度目の夏』です。

 

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多くを話せば話すほど、自分の気持ちが伝わるわけではない。

 

 

話すほどに気持ちがすれ違い、元には戻れないほど心の距離が離れてしまうこともある。

 

愛情や嫉妬で感情がねじれることで、物語は思わぬ方向に進んでいきました。

 

社長夫婦とその友人、社長秘書、そしてお屋敷に使える家政婦。

 

それぞれの身に起こる些細な出来事が、少しずつ不協和音となって感情のもつれを生み出していくのです。

 

 

東出さんは会社の社長。裕福な家庭に育って、何不自由なく生きてきた余裕を見せながらも、仲野大賀演じる友人に対して、わずかな嫉妬心を募らせていきます。

 

仲野大賀さんは東出さんの友人を演じ、社長業で忙しい東出さんの頼みを聞き、奥さんの相手をすることに。友人の助けになってあげようとする心優しい大学生を純粋に演じられておりました。

 

社長の自宅家政婦として仕えているのが片桐はいりさん。

 

社長が出張中に起きたい家での出来事や、奥さんと大学生との関係性を神経質なまでに心配し、不穏な空気をもたらします。片桐さんのセリフかアドリブか分からないような台詞も度々登場し、観客の笑い声が会場に響いておりました。

 

 

くすっと笑ってしまうような掛け合いもありながら、物語は後半になるにつれて、緊張感あるシーンへ。

 

徐々に人間関係の均衡が崩れていきます。

 

自分自身を守るため、大切な相手を傷つけてしまう。人間の心は思ってるより弱いのです。

 

物語は予測していなかった結末を迎えます。仲野大賀さん演じる大学生は、ある行動を起こします。

 

私の妹も大学生で、彼女も本作を観劇し「彼は大学生だから、彼なりの結論を出したんじゃないか。」と言っていました。確かに・・・、そうかも、と少し納得。

 

俳優さんの演技力が光る、会話重視の作品でしたが、“言葉という道具の重要性を改めて考えさせられる作品でした。

 

 

【公演情報】

 

M&Oplaysプロデュース『二度目の夏』

 

作・演出:岩松了

 

出演: 東出昌大、仲野大賀、水上京香、清水葉月、菅原永二岩松了片桐はいり 

 

東京公演:2019年7月20日(土)~8月12日(月・祝) 本多劇場

福岡公演:2019年8月17日(土)・18日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール

広島公演:2019年8月20日(火) JMSアステールプラザ 大ホール

静岡公演:2019年8月22日(木) 静岡市民文化会館 中ホール

大阪公演:2019年8月24日(土)・25日(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

名古屋公演:2019年8月27日(火)・28日(水) 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール

神奈川公演:2019年9月1日(日) 湘南台文化センター市民シアター

 

 

観劇日:2019年8月4日(日)13:00公演

舞台『奇子』を観劇した感想

第48回目のレビューは、「奇子(あやこ)」です。

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本作は手塚治虫さんの漫画「奇子」が原作となっており、第二次世界大戦敗北後の日本で崩壊していく、ある一族を描いた作品です。

 

原作の漫画は、手塚治虫作品のなかでも“問題作”と称されており、映像化や舞台化が難しいとされてきました。

 

 

暗殺、遺産相続、監禁、近親相姦など、過激でセンセーショナルな問題を多く取り上げ、欲望のままに生きてしまうことで一族が崩壊していく様を描いた、刺激の強い作品でした。

 

 

主役である天外(てんげ)家の次男、二朗を演じるのは、A.B.C-Zの五関晃一さん。舞台への出演は多いですが、単独での主演は初。

 

本心の見えないキャラクターですが、五関さんそのもののキャラクターとも妙に似ているような。二朗の波乱万丈な人生と、そして天外家に起こるいくつもの不可思議な出来事が彼の語り口によって少しずつ明らかになっていきます。

 

 

天外家の崩壊

 

 

二朗には妹がいました。彼女の名は「奇子(あやこ)」。

 

彼女は一家の中では特異な存在で、周囲の人に隠されて生きていました。

 

彼女は、天外家当主である二朗の父と、二朗の兄である一郎が遺産欲しさに差し出した妻との間に生まれた子だったのです。

そして権力掌握や罪の意識から、一郎は奇子を地下に閉じ込めて、死んだことにしてしまったのです。

 

それから11年もの間、奇子は地下に閉じ込められながらも生き延びてきました。

 

現実では起こりえない設定ながらも、私利私欲に働く人間の強情さや、破滅へと向かう愚かさから目を背くことはできませんでした。目の前で起こっている世界をしっかりと見なければいけないという、説得力がありました。

 

 

赤い穴倉

 

 

舞台上には地下の穴倉をイメージしたセットが置かれ、中央には急な斜面を配置。広くないステージだからこそ大きな舞台美術を設置し、穴倉の閉塞感を演出。

 

また演者は全員が赤い衣装を身に着け、天外家の持つ不気味な雰囲気を表現していました。

 

手塚治虫さんの凄さを再確認したとともに、本作を舞台化した人々にも拍手をお送りしたい作品でした。

 

 

【公演情報】

 

 

手塚治虫生誕90周年記念事業 パルコ・プロデュース 『奇子

 

原作:手塚治虫

 

演出:中屋敷法仁

 

出演:五関晃一(A.B.C-Z)、三津谷亮、味方良介、駒井蓮深谷由梨香、松本妃代、相原雪月花、中村まこと梶原善

 

 

水戸公演:2019年7月14日(日)~15日(月・祝)  水戸芸術館ACM劇場

東京公演:2019年7月19日(金)~7月28日(日) 紀伊国屋ホール

大阪公演:2019年8月3日(土)~8月4日(日) サンケイホールブリーゼ

 

 

観劇日:2019年7月27日(土)18:00公演

 

舞台『美しく青く』を観劇した感想(ネタバレあり)

 

第47回目のレビューは、向井理さん主演「美しく青く」です。

 

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東日本大震災の被害を受けたある地区を舞台に、そこで生きる人たちの“日常”と“希望”を描いた作品です。

 

一見どこにでもいるような人の、どこにでもあるような日々の生活を表現し、その日々の中で、人間くささというか人間の面倒くさい部分が哀れなほどまっすぐに描かれていました。

 

 

個人的にあまり見たことのないストーリーでした。

誰かの生活を垣間見ているような感覚になり、自分の地元とは異なる地域設定にも関わらず、自身の田舎を思い出して、懐かしさすら感じてしまいました。

 

 

“普通”な日々を描く

 

 

 

向井理さんは、その地域で働きながら自警団を結成し、田畑を荒らす猿達へのパトロールを行っているという青年の役柄でした。

イケメン役を封印し、ただただその地域で日々暮らしている青年を自然体の演技でリアルに表現。過剰でなく適度に力の抜けたその姿に、向井さんの繊細な演技力を感じました。

 

ストーリーが進むにつれて、一見、何とでもないような会話や出来事が、不満や鬱憤となって人々の心に積っていく。その様が、表情や説明台詞ではないちょっとしたセリフを通して観客に伝わってくるのです。

 

 

田舎は地域のつながりが強くて、多くの人達との関わりがあります。関わりがあるということは、それだけ多くの問題も生まれてしまうということ。ある小さな出来事が多くの人々を巻き込む騒動に発展することも少なくありません。

 

 

そういう日々の積み重ねを描くことで、居酒屋での何気ない会話や、意味のない会話からも感情が見えてくるのです。飲み会の端と端の席で同時に2つの会話が進んでいく雰囲気だったり、この前言ってたことと真逆のこと言ってる人がいたり、誰しもが必ず遭遇したことのあるシーンを目の前で見せられ、人間のばかばかしさだったり愚かさが痛いほど伝わってきました。

 

 

でも人はそうやって日々過ごして生きていく。

そうやってしか生きていけないのかもしれません。

 

 

平田満さん、秋山菜津子さん、銀粉蝶さんらベテランの皆さんの演技が作品を引き締めてくださいました。そして、役場の人を演じられていた大倉孝二さんの“普通さ”が際立っていて、作品の芯としての役割を担っていたと感じました。

 

大倉さんの演技は元々大好きなのですが、今回はいつも以上に“普通”で、その普通さに親近感を持ちつつ、人間の弱い部分や愛らしい部分を表現する才能が素晴らしいので、出演されている舞台を観に行きたい役者さんの一人です。

 

 

人間って面倒だし、生きるって面倒。だけど生きていかなければならなくて、自己の生活風景を投影したかのような普遍的な生活を、作品として私たちに見せてくれました。

 

永遠に答えのない問いを突き付けられているようで、ほろ苦い作品ではありましたが、SF題材のような作品からは得られない、本当に知らなきゃいけない“姿”を少し教えてもらった気がしました。

 

 

【公演情報】

 

 

Bunkamura30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2019「美しく青く」

 

作・演出:赤堀雅秋

 

出演:向井理田中麗奈大倉孝二大東駿介横山由依、駒木根隆介、森優作、福田転球赤堀雅秋銀粉蝶秋山菜津子平田満

 

 

東京公演:2019年7月11日(木)~7月28日(日) Bunkamura シアターコクーン

大阪公演:2019年8月1日(木)~8月3日(土) 森ノ宮ピロティホール

 

 

観劇日:2019年7月18日(木)19:00公演

舞台「オレステイア」を観劇した感想(ネタバレあり)

 

第46回目のレビューは、生田斗真さん主演「オレステイア」です。

 

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本作はなんと、上演時間が4時間10分という超大作!

途中2回の休憩を挟みながら第1章から第4章まで分かれており、アトレウス一家に起こった悲劇が徐々に明らかになりながら、物語は進んでいきます。

 

 

ギリシャ悲劇を再構築した物語とあって、とある家族に起こった惨劇と一人の青年の抱える悲痛を軸に、重厚感のある演出で生み出していきます。

 

 

オレステスの記憶

 

 

 

この物語の主人公である青年、オレステスを演じるのが生田斗真さん。

オレステスは、自分の家族に起きた悲劇がトラウマで、ある記憶が欠落しており、その記憶を呼び戻すため、医師とともに自分の過去を思い出そうとします。

 

 

驚くことにオレステスは舞台上にほとんど出ずっぱりの状態で、斗真さん演じるオレステスは自分の記憶をステージ上で再構築しながら、自身に起こった過去の出来事を俯瞰しているような状況。

 

 

斗真さんのオレステスはとにかく美しい。しかし、自身の家族に次々と起こる惨劇によって莫大なストレスを抱え、精神が崩壊してしまったオレステスを演じるということは、その存在を表現するだけでも多くのエネルギーを必要とするということ。

 

非常に難しく壮絶な宿命を背負う役ですが、オレステスは台詞が多くないので、立ち姿や仕草で悲痛を表現し、オレステスの抱えている深い闇や苦しみを表現されている、と感じました。  

 

 

過去の回想と現在が複雑に絡み合い、サスペンス要素も含みながら、一家に起こった惨劇とは一体何なのか、観客はオレステスと共にステージ上で起こるアトレウス一家の過去の出来事を見返していきます。

 

 

 

アトレウス一家に起こった悲劇

 

 

 

オレステスの記憶は実に曖昧で、実際には存在しない姉・エレクトラすら別人格として作り出していました。

それだけ、過去のトラウマによって本当の出来事から目をそらしているということです。

 

 

第2幕の最後、とうとうオレステスの身に起こった悲劇を知ることとなります。

 

オレステスは自らの母を殺したのです。

 

父は戦争に勝つため生贄としてオレステスの姉イピゲネイアを殺し、母は娘を殺された復讐から自らの夫を殺した。そして、オレステスは父の仇として母を殺したのです。

 

 

殺人が連鎖し一家は崩壊。唯一の生き残りがオレステスだけ。

 

 

今まで隠されていたオレステスの過去が明らかになったとき、オレステスと観客は一気に現実世界に戻されることとなるのです。

ステージ上が一転、法廷へと様代わりし、オレステスは母親殺しの罪で裁判にかけられていました。

 

本作は一家に起こった出来事を一部始終見せたのち、後半は法廷のシーンになるという2部構成の作りになっており、衝撃を受ける展開となりました。

 

 

幾度となく劇中で登場する言葉、「未払いの死がある。その支払いは子ども」。

 

 

犯した罪は“死”をもって償う、ということだと思いますが、裁判によってオレステスは無罪となります。

 

無罪となって自由の身となったオレステスですが、そこに自由はなく、母親殺しの罪を背負ったまま生きていくことが彼にとって最も苦しく、生きていくには重すぎる宿命であると感じざるをえませんでした。

 

 

これぞ命を削るような作品だと感じました。

 

役者さんやスタッフの皆さんの気合を、本作を通して感じさせてもらいました。

 

 

 

極めて現代劇な演出

 

 

ステージ上には作りこまれたセットはなく、後方に白い四角い枠。そしてその枠をなぞるように上からは半透明なカーテンが垂れています。

 

 

頭上には壁があり、その壁に時間が投影されます。

 

その時間は現実世界と同じ時間を刻んでおり、劇中でも現実世界と同じく時を刻むのです。

 

私は13:00公演を観劇しましたが、時計が13:00を回った瞬間、舞台は幕を開け、登場人物も観客も、同じ時を刻みます。

本作は舞台を現在に置き換えた現代劇なのです。

 

 

第4幕になると徐々に分かってきますが、観客は裁判の傍聴人であり、それまで私達の目の前で繰り広げられてきた一家惨劇の一部始終は、裁判の証拠となるオレステスの記憶を呼び戻すために法廷で行っていた状況確認だったのです。

 

 

裁判の証拠となる品の数々も物語が進むごとに壁に映し出され、まるで法廷での証拠提出のように私達に示されます。

 

 

事実が徐々に明らかになるサスペンス要素や、何度も事実がひっくり返っていく緊張感。ひとつのギリシャ悲劇をふたつの側面から見せていく面白さ。

 

 

結末も非常に考えさせられ、演出含め非常に面白く、刺激的な作品でした。

 

 

 

【公演情報】

 

 

新国立劇場2018/2019シーズン演劇公演 『オレステイア』

 

 

原作:アイスキュロス

作:ロバート・アイク

翻訳:平川大作

演出:上村聡史

 

出演:生田斗真音月桂趣里横田栄司、下総源太朗、松永玲子、佐川和正、チョウ ヨンホ、草彅智文、髙倉直人、倉野章子、神野三鈴

 

公演: 2019年6月6日(木)~30日(日) 新国立劇場 中劇場 

 

 

観劇日:2019年6月26日(水)13:00公演

舞台「キネマと恋人」を観劇した感想(ネタバレあり)

 

第45回目のレビューは、世田谷パブリックシアターにて上演中の『キネマと恋人』です。

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3年ぶりの再演となる本作は、2016年の初演時に読売演劇賞や紀伊国屋演劇賞など数々の演劇賞を受賞した作品です。

 

私も2016年に初演を観劇しており、心を鷲掴みにされた作品です。

今まで観劇してきた作品の中で一番大好き!と断言できるくらい大好きです。

「キネマと恋人」の世界が目の前に広がった瞬間から、ときめきが止まらないのです。

 

3年前の観劇レビューもよろしければご覧ください!

www.kakimasu-review.com

 

 

再演されるということを知ったときから喜びで胸が躍り、今か今かと心の底から楽しみにしておりました!!!

 

 

愛おしいキャラクターたち

 

 

 

もし映画の中の登場人物が急に目の前に現れて、あなたのことが好きだと言ってきたら・・・。

現実世界ならあり得ないけれど、この「キネマと恋人」の世界では起こるのです。

 

本作は1930年頃の架空の島を舞台にしたファンタジーブコメディ。

 

映画を観ることが生き甲斐のハルコがいつものように映画を観ていると、スクリーンの中から大好きなキャラクター“寅蔵”が話しかけてきた・・・!しかも現実世界に出てきてしまって大変なことに!島中を巻き込む大騒動に発展していくのです。

 

 

ファンタジーであり、ドタバタコメディーでもあり、最後は苦く切ないラブストーリーでもあり。

観終わったあと、感情が整理できず、複雑な気持ちを抱えたまま劇場を出ることになるのですが、夢のような浮遊感のある素敵な物語なのです。

 

ハルコが大好きなキャラクター“寅蔵”と、その寅蔵を演じている役者“高木高助”の2役を演じているのが妻夫木聡さん。

 

その演じ分けが素晴らしい。

 

現実世界を知らない“寅蔵”と、寅蔵が現実世界へ出てきてしまったことで騒動に巻き込まれる残念な役者“高木高助”は、劇中でも同じ人が演じているものの全くの別人。

 

寅蔵は正直者で人懐っこくてどこか憎めなくて、ハルコへの一途な愛を信じてやみません。

 

一方の高木高助は、俳優としての自身の今後に悩みを抱えている売れない役者。

悩んだり苛立ったり、人間らしい。その見えない葛藤を繊細に演じられていました。

 

寅蔵とハルコが海辺で語り合うシーンや、高木高助とハルコが意気投合するシーン。

 

同じ役者のはずなのに、私はどちらも妻夫木さんが演じていることを忘れていました。

 

一瞬で彼らのいる世界へ引き込まれるこの引力は、他の作品では感じたことがありません。ファンタジーの中にもどこかあり得そうな現実味を含ませ、観客を想像の更に向こう側へ連れて行ってくれます。

 

そのキャラクター達が全員愛おしくて、終始口角が上がりっぱなしでした。

 

ハルコを演じられているのは緒川たまきさん。

 

ハルコを自分に置き換えて見てしまうくらい、何かに熱中する人には必ず分かる感情を緒川さんがハルコを通して全身で表現してくださるのです。

 

ごく自然に、ごく当たり前に映画を愛する女性を演じていて、そんなハルコに自分を重ねてしまっていました。

 

私たちは向こう側の世界に救われて、向こう側に感情を委ねて生きているだけなんですよね。

 

 

映画を観ているような演出の数々

 

 

 

3年前に衝撃を受けたのは、本作の演出でした。

 

時間が流れるように、目の前で場面が流れていく。気づいたら次のシーンへ。

転換までもが完璧で、余白がなく、全てが一つの作品として必要不可欠なのです。

 

 

映像を多用し、観る者をファンタジーな世界へと導いていく。演出家・ケラさんの演劇的演出の数々によって「舞台で映画を観ているような」感覚になるのです。

 

黒子にも振付を施し、場面転換はより視覚的に。

 

セットや照明も、演劇だからこそ表現できる方法で、十分すぎるほど堪能させてくれました。

 

物語の終わり。

 

 

ほろ苦いラストで物語は終わります。

 

高木高助、ハルコがそれぞれ目に涙を浮かべて明日を見つめる姿に、気づいたら涙が出ていました。

 

(ほとんど舞台を観て泣いたことがないので、それだけ登場人物に感情移入してしまったんだなと後から気づきました。)

 

人生はそんなに甘くない、それでも生きていかなければならないということなんだろうけど、ほろ苦すぎる結末。でも、最後のハルコとミチル姉妹の笑顔に、苦しいけれど何だか少し救われた気がしました。

 

 

3時間半の上演があっという間で、気づいたら現実世界に引き戻されていて、帰りの電車に乗っている自分がいました。

 

「あれ、さっきまで観てたのは夢?」

 

そう思ってしまうほど、魔法が解けたみたいに消えてしまいそうなんだけど、間違いなく私が出会った世界。

 

ノスタルジックな気持ちを抱えつつ、今日も生きるとしよう。

ハルコが高木に想いを馳せるように、「キネマと恋人」の世界に想いを馳せよう。

そんなことを思わずにはいられない作品でした。

 

 

ハルコと映画は、私と演劇そのもののようで、勝手に自分を投影してしまっていました。

 

何かに熱中したことのある人は、確実にこの世界が愛おしいと思うし、ぜひ彼らに出会ってほしいです。

 

 

~追記~

7月28日(日)の新潟公演大千秋楽を観劇してきました。

約2か月ぶりの「キネマと恋人」。

やっぱりこの空間が好きだ。すべてのキャラクターが好きだ。

上演後の割れんばかりの拍手とスタンディングオベーション。あの空間にいた全員が笑顔になって、幸せな浮遊感とともに会場を後にしました。

最後の最後まで寅蔵さんが愛くるしかったなぁ~~~。笑

 

そして、10月にWOWOWで放送が決定したとのことです。

こちらも非常に楽しみにしております!

 

 

【公演情報】

 

 

 

世田谷パブリックシアターKERA・MAP#009 『キネマと恋人』

 

 

台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ

 

出演:妻夫木聡緒川たまきともさかりえ三上市朗、佐藤誓、橋本淳、尾方宣久、廣川三憲、村岡希美、崎山莉奈、王下貴司、仁科幸、北川結、片山敦郎

 

 

東京公演:2019年6月8日(土)~6月23日(日)  世田谷パブリックシアター

北九州公演:2019年6月28日(金)~6月30日(日) 北九州芸術劇場 中劇場

兵庫公演:2019年7月3日(水)~7月7日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

名古屋公演:2019年7月12日(金)~7月15日(月・祝)名古屋市芸術創造センター  

盛岡公演:2019年7月20日(土)~7月21日(日) 盛岡劇場 メインホール

新潟公演:2019年7月26日(金)~7月28日(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場

 

 

観劇日:2019年6月9日(日)13:00公演

2019年7月28日(日)13:00公演(大千秋楽公演)

 

 

舞台「BACKBEAT」を観劇した感想(ネタバレあり)

 

第44回目のレビューは、東京芸術劇場プレイハウスにて上演中の舞台「BACKBEAT」です。

 

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世界中で今も愛されている伝説のバンド、「ビートルズ」。

ビートルズはもともと5人組だった!

本作は、ビートルズの創成期であるハンブルグ時代を描いた、1994年公開の伝記映画「BACKBEAT」を舞台化した作品です。

 

 

ビートルズ結成時、ジョン・レノンに誘われてベーシストとなったスチュアートサトクリフ。彼は21歳という若さで病気で亡くなった。画家としての才能も発揮しながら、ビートルズの一員としてメンバーとともにメジャーデビューを目指していた。

スチュアートを中心に、ビートルズの青春と恋・友情を描いた青春群像劇です。

 

 

 

本作は、20曲以上を舞台上で生演奏。

 

その場で生み出される音とともに観客はビートルズの世界を感じ、彼らと一緒に青春を共有するのです。

5人のビートルズが奏でる音楽を通して、音楽とストレートプレイの新たな融合を見せてもらいました!

 

 

スチュアート・サトクリフ戸塚祥太

 

 

 

ジョン・レノンの親友であり、その才能に惚れ、彼が敬愛していたスチュアート・サトクリフを演じたのは、A.B.C-Z戸塚祥太さん。戸塚さんは毎年、主演で舞台に立たれており、精力的に舞台活動されております。

 

感想から言いますと、スチュアート・サトクリフを演じられるのは戸塚祥太しかいない!と、そう思わせてくれる存在感でした。

 

スチュアートは芸術家として圧倒的な資質を持ち、ジョンにもその才能を敬愛されるほどの男。戸塚さんは才能あふれる若きスチュアートを情熱的に演じられていました。

舞台上にいるだけで説得力があり、スチュアートの力強い生き様を色彩豊かに表現されておりました。

 

一言一言のセリフをここまでしっかりと観客に届けることのできる役者はそういないと思います。ちょっとした表情の変化や、セリフの緩急がとても秀逸で、非常に器用な俳優という印象です。

 

今後も応援していきたい俳優さんの一人です。

 

 

 5人のビートルズ

 

 

 

 

5人のビートルズを演じている俳優はすべて30代というから非常に驚きました。

 

10代の若さたる葛藤、そして、青春を謳歌している姿をしっかりと演じ切り、彼らの友情・恋・夢を掴もうともがく日々を演じている姿は、まさに夢を追いかける少年達そのもの。

 

 

ジョン・レノンを演じられた加藤和樹さんは、秀でた才能を持つジョンを説得力のある演技で観客に魅せてくれました。

 

ビートルズがのちの大スターになることを、芯までロックンロールな姿で加藤さんが熱演。

 

ジョンのスチュアートに対する友情とも愛とも呼べる感情は、愛情と尊敬が混ざって強い絆で結ばれている。そんな2人の関係性を戸塚さん、加藤さんがパワフルに、そして丁寧に演じておりました。

 

 

物語の後半、2人は大きな決断をし、それぞれ別の道を進むことを決めるのです。ジョンの意とは反してるかもしれない、でも、彼は大親友であるスチュアートを信じ尊敬し、彼の進む道を応援します。

このシーンは本作の中でも象徴的で、浜辺で灯台の明かりに照らされながら、別れを告げ、それぞれに背を向け歩き出すのです。2人の若き青年の、哀しくも強い意志のある将来への決断が丁寧に描かれていました。

 

 

 

ビートルズの世界へ引き込む演出

 

 

 

本作のセットは作り込まれたセットではなく、むき出しの舞台に大きな額縁。左右に階段と小屋が設置してある程度。場面転換も、ネオンボードやライティングを変え、舞台装置をほんの少し移動させることで場面を変えていく。

 

暗転も、大きなセットチェンジもなく、場面を次から次へと流れるように変えていく転換は、シンプルな中にも趣向が凝らされていて非常に秀逸だと思いました。

 

 

また、ステージ全体に奥行や高さを出し、舞台全体を使って表現。

 

一番最後のシーン、亡くなったスチュアートがジョンを迎えに行き、光に照らされながら肩を組んで舞台奥の暗闇に消えていく演出は、余韻を残しつつ観客の心に深く刻まれる素晴らしいシーンでした。

 

 

 

ビートルズ楽曲の生演奏を観客として純粋に楽しみつつ、彼らの決断や葛藤をテンポ感よく色濃く描いた素敵な作品でした。

 

 

 

 

【公演情報】

 

 

 

舞台『BACKBEAT

 

 

作:イアン・ソフトリー  スティーヴン・ジェフリーズ

翻訳・演出:石丸さち子

音楽:森大輔

 

 

出演者:戸塚祥太(A.B.C-Z)、加藤和樹辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)、JUON(FUZZY CONTROL)、上口耕平、夏子、鍛治直人、田村良太、西川大貴、工藤広夢、鈴木壮麻、尾藤イサオ 

 

 

東京公演:2019年5月25日(土)~ 6月9日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス

兵庫公演:2019年6月12日(水)〜 6月16日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

愛知公演:2019年6月19日(水) 刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール

神奈川公演:2019年6月22日(土)・ 23日(日) やまと芸術文化ホール メインホール

 

 

観劇日:2019年5月31日(金)18:30公演

2019年6月8日(土)13:00公演