『書きます!#観劇レビュー』

20代の管理人が鑑賞した舞台のレビューを書き残していきます!

舞台「オレステイア」を観劇した感想(ネタバレあり)

 

第46回目のレビューは、生田斗真さん主演「オレステイア」です。

 

f:id:kanazaaaaaawa:20190629144918j:plain 

 

本作はなんと、上演時間が4時間10分という超大作!

途中2回の休憩を挟みながら第1章から第4章まで分かれており、アトレウス一家に起こった悲劇が徐々に明らかになりながら、物語は進んでいきます。

 

 

ギリシャ悲劇を再構築した物語とあって、とある家族に起こった惨劇と一人の青年の抱える悲痛を軸に、重厚感のある演出で生み出していきます。

 

 

オレステスの記憶

 

 

 

この物語の主人公である青年、オレステスを演じるのが生田斗真さん。

オレステスは、自分の家族に起きた悲劇がトラウマで、ある記憶が欠落しており、その記憶を呼び戻すため、医師とともに自分の過去を思い出そうとします。

 

 

驚くことにオレステスは舞台上にほとんど出ずっぱりの状態で、斗真さん演じるオレステスは自分の記憶をステージ上で再構築しながら、自身に起こった過去の出来事を俯瞰しているような状況。

 

 

斗真さんのオレステスはとにかく美しい。しかし、自身の家族に次々と起こる惨劇によって莫大なストレスを抱え、精神が崩壊してしまったオレステスを演じるということは、その存在を表現するだけでも多くのエネルギーを必要とするということ。

 

非常に難しく壮絶な宿命を背負う役ですが、オレステスは台詞が多くないので、立ち姿や仕草で悲痛を表現し、オレステスの抱えている深い闇や苦しみを表現されている、と感じました。  

 

 

過去の回想と現在が複雑に絡み合い、サスペンス要素も含みながら、一家に起こった惨劇とは一体何なのか、観客はオレステスと共にステージ上で起こるアトレウス一家の過去の出来事を見返していきます。

 

 

 

アトレウス一家に起こった悲劇

 

 

 

オレステスの記憶は実に曖昧で、実際には存在しない姉・エレクトラすら別人格として作り出していました。

それだけ、過去のトラウマによって本当の出来事から目をそらしているということです。

 

 

第2幕の最後、とうとうオレステスの身に起こった悲劇を知ることとなります。

 

オレステスは自らの母を殺したのです。

 

父は戦争に勝つため生贄としてオレステスの姉イピゲネイアを殺し、母は娘を殺された復讐から自らの夫を殺した。そして、オレステスは父の仇として母を殺したのです。

 

 

殺人が連鎖し一家は崩壊。唯一の生き残りがオレステスだけ。

 

 

今まで隠されていたオレステスの過去が明らかになったとき、オレステスと観客は一気に現実世界に戻されることとなるのです。

ステージ上が一転、法廷へと様代わりし、オレステスは母親殺しの罪で裁判にかけられていました。

 

本作は一家に起こった出来事を一部始終見せたのち、後半は法廷のシーンになるという2部構成の作りになっており、衝撃を受ける展開となりました。

 

 

幾度となく劇中で登場する言葉、「未払いの死がある。その支払いは子ども」。

 

 

犯した罪は“死”をもって償う、ということだと思いますが、裁判によってオレステスは無罪となります。

 

無罪となって自由の身となったオレステスですが、そこに自由はなく、母親殺しの罪を背負ったまま生きていくことが彼にとって最も苦しく、生きていくには重すぎる宿命であると感じざるをえませんでした。

 

 

これぞ命を削るような作品だと感じました。

 

役者さんやスタッフの皆さんの気合を、本作を通して感じさせてもらいました。

 

 

 

極めて現代劇な演出

 

 

ステージ上には作りこまれたセットはなく、後方に白い四角い枠。そしてその枠をなぞるように上からは半透明なカーテンが垂れています。

 

 

頭上には壁があり、その壁に時間が投影されます。

 

その時間は現実世界と同じ時間を刻んでおり、劇中でも現実世界と同じく時を刻むのです。

 

私は13:00公演を観劇しましたが、時計が13:00を回った瞬間、舞台は幕を開け、登場人物も観客も、同じ時を刻みます。

本作は舞台を現在に置き換えた現代劇なのです。

 

 

第4幕になると徐々に分かってきますが、観客は裁判の傍聴人であり、それまで私達の目の前で繰り広げられてきた一家惨劇の一部始終は、裁判の証拠となるオレステスの記憶を呼び戻すために法廷で行っていた状況確認だったのです。

 

 

裁判の証拠となる品の数々も物語が進むごとに壁に映し出され、まるで法廷での証拠提出のように私達に示されます。

 

 

事実が徐々に明らかになるサスペンス要素や、何度も事実がひっくり返っていく緊張感。ひとつのギリシャ悲劇をふたつの側面から見せていく面白さ。

 

 

結末も非常に考えさせられ、演出含め非常に面白く、刺激的な作品でした。

 

 

 

【公演情報】

 

 

新国立劇場2018/2019シーズン演劇公演 『オレステイア』

 

 

原作:アイスキュロス

作:ロバート・アイク

翻訳:平川大作

演出:上村聡史

 

出演:生田斗真音月桂趣里横田栄司、下総源太朗、松永玲子、佐川和正、チョウ ヨンホ、草彅智文、髙倉直人、倉野章子、神野三鈴

 

公演: 2019年6月6日(木)~30日(日) 新国立劇場 中劇場 

 

 

観劇日:2019年6月26日(水)13:00公演

舞台「キネマと恋人」を観劇した感想(ネタバレあり)

 

第45回目のレビューは、世田谷パブリックシアターにて上演中の『キネマと恋人』です。

f:id:kanazaaaaaawa:20190610211855j:plain

 

3年ぶりの再演となる本作は、2016年の初演時に読売演劇賞や紀伊国屋演劇賞など数々の演劇賞を受賞した作品です。

 

私も2016年に初演を観劇しており、心を鷲掴みにされた作品です。

今まで観劇してきた作品の中で一番大好き!と断言できるくらい大好きです。

「キネマと恋人」の世界が目の前に広がった瞬間から、ときめきが止まらないのです。

 

3年前の観劇レビューもよろしければご覧ください!

www.kakimasu-review.com

 

 

再演されるということを知ったときから喜びで胸が躍り、今か今かと心の底から楽しみにしておりました!!!

 

 

愛おしいキャラクターたち

 

 

 

もし映画の中の登場人物が急に目の前に現れて、あなたのことが好きだと言ってきたら・・・。

現実世界ならあり得ないけれど、この「キネマと恋人」の世界では起こるのです。

 

本作は1930年頃の架空の島を舞台にしたファンタジーブコメディ。

 

映画を観ることが生き甲斐のハルコがいつものように映画を観ていると、スクリーンの中から大好きなキャラクター“寅蔵”が話しかけてきた・・・!しかも現実世界に出てきてしまって大変なことに!島中を巻き込む大騒動に発展していくのです。

 

 

ファンタジーであり、ドタバタコメディーでもあり、最後は苦く切ないラブストーリーでもあり。

観終わったあと、感情が整理できず、複雑な気持ちを抱えたまま劇場を出ることになるのですが、夢のような浮遊感のある素敵な物語なのです。

 

ハルコが大好きなキャラクター“寅蔵”と、その寅蔵を演じている役者“高木高助”の2役を演じているのが妻夫木聡さん。

 

その演じ分けが素晴らしい。

 

現実世界を知らない“寅蔵”と、寅蔵が現実世界へ出てきてしまったことで騒動に巻き込まれる残念な役者“高木高助”は、劇中でも同じ人が演じているものの全くの別人。

 

寅蔵は正直者で人懐っこくてどこか憎めなくて、ハルコへの一途な愛を信じてやみません。

 

一方の高木高助は、俳優としての自身の今後に悩みを抱えている売れない役者。

悩んだり苛立ったり、人間らしい。その見えない葛藤を繊細に演じられていました。

 

寅蔵とハルコが海辺で語り合うシーンや、高木高助とハルコが意気投合するシーン。

 

同じ役者のはずなのに、私はどちらも妻夫木さんが演じていることを忘れていました。

 

一瞬で彼らのいる世界へ引き込まれるこの引力は、他の作品では感じたことがありません。ファンタジーの中にもどこかあり得そうな現実味を含ませ、観客を想像の更に向こう側へ連れて行ってくれます。

 

そのキャラクター達が全員愛おしくて、終始口角が上がりっぱなしでした。

 

ハルコを演じられているのは緒川たまきさん。

 

ハルコを自分に置き換えて見てしまうくらい、何かに熱中する人には必ず分かる感情を緒川さんがハルコを通して全身で表現してくださるのです。

 

ごく自然に、ごく当たり前に映画を愛する女性を演じていて、そんなハルコに自分を重ねてしまっていました。

 

私たちは向こう側の世界に救われて、向こう側に感情を委ねて生きているだけなんですよね。

 

 

映画を観ているような演出の数々

 

 

 

3年前に衝撃を受けたのは、本作の演出でした。

 

時間が流れるように、目の前で場面が流れていく。気づいたら次のシーンへ。

転換までもが完璧で、余白がなく、全てが一つの作品として必要不可欠なのです。

 

 

映像を多用し、観る者をファンタジーな世界へと導いていく。演出家・ケラさんの演劇的演出の数々によって「舞台で映画を観ているような」感覚になるのです。

 

黒子にも振付を施し、場面転換はより視覚的に。

 

セットや照明も、演劇だからこそ表現できる方法で、十分すぎるほど堪能させてくれました。

 

物語の終わり。

 

 

ほろ苦いラストで物語は終わります。

 

高木高助、ハルコがそれぞれ目に涙を浮かべて明日を見つめる姿に、気づいたら涙が出ていました。

 

(ほとんど舞台を観て泣いたことがないので、それだけ登場人物に感情移入してしまったんだなと後から気づきました。)

 

人生はそんなに甘くない、それでも生きていかなければならないということなんだろうけど、ほろ苦すぎる結末。でも、最後のハルコとミチル姉妹の笑顔に、苦しいけれど何だか少し救われた気がしました。

 

 

3時間半の上演があっという間で、気づいたら現実世界に引き戻されていて、帰りの電車に乗っている自分がいました。

 

「あれ、さっきまで観てたのは夢?」

 

そう思ってしまうほど、魔法が解けたみたいに消えてしまいそうなんだけど、間違いなく私が出会った世界。

 

ノスタルジックな気持ちを抱えつつ、今日も生きるとしよう。

ハルコが高木に想いを馳せるように、「キネマと恋人」の世界に想いを馳せよう。

そんなことを思わずにはいられない作品でした。

 

 

ハルコと映画は、私と演劇そのもののようで、勝手に自分を投影してしまっていました。

 

何かに熱中したことのある人は、確実にこの世界が愛おしいと思うし、ぜひ彼らに出会ってほしいです。

 

 

【公演情報】

 

 

 

世田谷パブリックシアターKERA・MAP#009 『キネマと恋人』

 

 

台本・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ

 

出演:妻夫木聡緒川たまきともさかりえ三上市朗、佐藤誓、橋本淳、尾方宣久、廣川三憲、村岡希美、崎山莉奈、王下貴司、仁科幸、北川結、片山敦郎

 

 

東京公演:2019年6月8日(土)~6月23日(日)  世田谷パブリックシアター

北九州公演:2019年6月28日(金)~6月30日(日) 北九州芸術劇場 中劇場

兵庫公演:2019年7月3日(水)~7月7日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

名古屋公演:2019年7月12日(金)~7月15日(月・祝)名古屋市芸術創造センター  

盛岡公演:2019年7月20日(土)~7月21日(日) 盛岡劇場 メインホール

新潟公演:2019年7月26日(金)~7月28日(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場

 

 

観劇日:2019年6月9日(日)13:00公演

 

 

舞台「BACKBEAT」を観劇した感想(ネタバレあり)

 

第44回目のレビューは、東京芸術劇場プレイハウスにて上演中の舞台「BACKBEAT」です。

 

f:id:kanazaaaaaawa:20190602145100p:plain

 

 

世界中で今も愛されている伝説のバンド、「ビートルズ」。

ビートルズはもともと5人組だった!

本作は、ビートルズの創成期であるハンブルグ時代を描いた、1994年公開の伝記映画「BACKBEAT」を舞台化した作品です。

 

 

ビートルズ結成時、ジョン・レノンに誘われてベーシストとなったスチュアートサトクリフ。彼は21歳という若さで病気で亡くなった。画家としての才能も発揮しながら、ビートルズの一員としてメンバーとともにメジャーデビューを目指していた。

スチュアートを中心に、ビートルズの青春と恋・友情を描いた青春群像劇です。

 

 

 

本作は、20曲以上を舞台上で生演奏。

 

その場で生み出される音とともに観客はビートルズの世界を感じ、彼らと一緒に青春を共有するのです。

5人のビートルズが奏でる音楽を通して、音楽とストレートプレイの新たな融合を見せてもらいました!

 

 

スチュアート・サトクリフ戸塚祥太

 

 

 

ジョン・レノンの親友であり、その才能に惚れ、彼が敬愛していたスチュアート・サトクリフを演じたのは、A.B.C-Z戸塚祥太さん。戸塚さんは毎年、主演で舞台に立たれており、精力的に舞台活動されております。

 

感想から言いますと、スチュアート・サトクリフを演じられるのは戸塚祥太しかいない!と、そう思わせてくれる存在感でした。

 

スチュアートは芸術家として圧倒的な資質を持ち、ジョンにもその才能を敬愛されるほどの男。戸塚さんは才能あふれる若きスチュアートを情熱的に演じられていました。

舞台上にいるだけで説得力があり、スチュアートの力強い生き様を色彩豊かに表現されておりました。

 

一言一言のセリフをここまでしっかりと観客に届けることのできる役者はそういないと思います。ちょっとした表情の変化や、セリフの緩急がとても秀逸で、非常に器用な俳優という印象です。

 

今後も応援していきたい俳優さんの一人です。

 

 

 5人のビートルズ

 

 

 

 

5人のビートルズを演じている俳優はすべて30代というから非常に驚きました。

 

10代の若さたる葛藤、そして、青春を謳歌している姿をしっかりと演じ切り、彼らの友情・恋・夢を掴もうともがく日々を演じている姿は、まさに夢を追いかける少年達そのもの。

 

 

ジョン・レノンを演じられた加藤和樹さんは、秀でた才能を持つジョンを説得力のある演技で観客に魅せてくれました。

 

ビートルズがのちの大スターになることを、芯までロックンロールな姿で加藤さんが熱演。

 

ジョンのスチュアートに対する友情とも愛とも呼べる感情は、愛情と尊敬が混ざって強い絆で結ばれている。そんな2人の関係性を戸塚さん、加藤さんがパワフルに、そして丁寧に演じておりました。

 

 

物語の後半、2人は大きな決断をし、それぞれ別の道を進むことを決めるのです。ジョンの意とは反してるかもしれない、でも、彼は大親友であるスチュアートを信じ尊敬し、彼の進む道を応援します。

このシーンは本作の中でも象徴的で、浜辺で灯台の明かりに照らされながら、別れを告げ、それぞれに背を向け歩き出すのです。2人の若き青年の、哀しくも強い意志のある将来への決断が丁寧に描かれていました。

 

 

 

ビートルズの世界へ引き込む演出

 

 

 

本作のセットは作り込まれたセットではなく、むき出しの舞台に大きな額縁。左右に階段と小屋が設置してある程度。場面転換も、ネオンボードやライティングを変え、舞台装置をほんの少し移動させることで場面を変えていく。

 

暗転も、大きなセットチェンジもなく、場面を次から次へと流れるように変えていく転換は、シンプルな中にも趣向が凝らされていて非常に秀逸だと思いました。

 

 

また、ステージ全体に奥行や高さを出し、舞台全体を使って表現。

 

一番最後のシーン、亡くなったスチュアートがジョンを迎えに行き、光に照らされながら肩を組んで舞台奥の暗闇に消えていく演出は、余韻を残しつつ観客の心に深く刻まれる素晴らしいシーンでした。

 

 

 

ビートルズ楽曲の生演奏を観客として純粋に楽しみつつ、彼らの決断や葛藤をテンポ感よく色濃く描いた素敵な作品でした。

 

 

 

 

【公演情報】

 

 

 

舞台『BACKBEAT

 

 

作:イアン・ソフトリー  スティーヴン・ジェフリーズ

翻訳・演出:石丸さち子

音楽:森大輔

 

 

出演者:戸塚祥太(A.B.C-Z)、加藤和樹辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)、JUON(FUZZY CONTROL)、上口耕平、夏子、鍛治直人、田村良太、西川大貴、工藤広夢、鈴木壮麻、尾藤イサオ 

 

 

東京公演:2019年5月25日(土)~ 6月9日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス

兵庫公演:2019年6月12日(水)〜 6月16日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

愛知公演:2019年6月19日(水) 刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール

神奈川公演:2019年6月22日(土)・ 23日(日) やまと芸術文化ホール メインホール

 

 

観劇日:2019年5月31日(金)18:30公演

2019年6月8日(土)13:00公演

 

舞台『ハムレット』を観劇した感想(ネタバレあり)

第43回目のレビューは、岡田将生さん主演「ハムレット」です。

 

f:id:kanazaaaaaawa:20190527210828j:plain

 

 

演劇界不朽の名作として世界中で上演されている「ハムレット」。

本作は、シェイクスピア作品へ初挑戦する岡田将生さんが主演を務めるとあって、情報解禁直後から非常に注目されている作品です。

 

 

若々しく荒々しいハムレット

 

 

 

2014年に上演された舞台「皆既食 ーTotal Eclipseー」以降、数々の舞台に出演されてきた岡田さん。そして2019年、シェイクスピア作品へ初挑戦することとなりました。

 

ハムレット」は非常に難解な戯曲であり、役者がどう演じても正解のない作品です。

その非常に難解なハムレットを、岡田さんが若々しく荒々しいハムレットとして魅せてくれました。

 

 

ハムレットは王であった父の亡霊に語り掛けられ、父が叔父に毒を盛られ殺害されたことを知ります。そして、叔父への復讐に燃えるのであるが、そもそも自分が見た亡霊は本物なのか、ハムレットは悩み苦しむのです。

 

感情を観客に吐露する独白が多いですが、言葉一つ一つに感情が乗り、苦しみの最中から自分の進むべき道を探ろうともがく岡田さんの姿はハムレットそのものでした。

 

 

ストーリーの軸となる点は、ハムレットが叔父の真意を探ることにありますが、彼は父の亡霊が「悪魔」なのではないかと疑います。悪魔ではないことを確認し、亡霊からの命令に従い叔父へ復讐することが本作の面白さです。

 

 

ハムレットの独白シーンを含め、彼の口から発せられる言葉は、妙に論理的。

あの有名なセリフ、「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」も論理的な言い回しで日本人には聞き馴染みがありません。

 

 

ですが、岡田さんの言葉の発し方、喋り方には説得力があり、ハムレットと相性が良いと感じました。観客にしっかり聞かせなければならないセリフがきちんと届いている。

彼の亡霊への疑いや戸惑いを岡田さんが粗削りさを残しつつ熱演し、復讐心を燃やす感情の高鳴りも全身全霊で表現されていました。

 

 

時に子供っぽさを垣間見せつつ、苦悩を色気で表現。

新たな岡田さんの魅力が詰まっていると感じました。

 

 

ハムレットの演出アイディア

 

 

 

ハムレット」は非常に解釈が難しいため、事前に予習が必要だと思いますが、私は2015年に蜷川幸雄さん演出の「ハムレット」を観劇したことがあり、その際の演出と比べながら観劇しました。

 

 

何度も上演されている本作は、様々な解釈での演出がなされています。

キャラクターの関係性をどう切り取り、どう観客へ伝えるか、演出によって全く異なります。

 

 

今回の演出家、サイモン・ゴドウィンの演出は、古典演劇を軽妙な切り口で表現していると感じました。

全体的に軽く、観やすいハムレットだったと思います。

 

 

舞台は回転式で、暗転せず場面を転換していき、流動的に次のシーンへ繋げているのが印象的でした。セットは2階建てで、階段や上下を使い、複雑な状況を視覚的に表現。

 

暗いシーンが多いイメージの「ハムレット」ですが、本作は色彩豊かなシーンが多く、明るく、軽快な印象を持ちました。

衣装やセットに赤や緑など原色を多数用いる一方、ハムレットが苦悩を語る独白シーンは衣装や照明含め全体的に暗い印象となり、緩急をつけた演出だったと思います。

 

 

 

岡田さんは今年の8月にも舞台「ブラッケン・ムーア~荒地の亡霊~」に出演予定で、舞台への強い熱意が伺えます。

 

 

Bunmkamuraシアターコクーンにて6月2日(日)まで上演中の「ハムレット」、そして、次回作の「ブラッケン・ムーア~荒地の亡霊~」どちらも注目作です。

ぜひ見に行ってみてください!

 

 

【公演情報】

 

 

 

Bunkamura30周年記念シアターコクーン・オンレパートリー2019 

DISCOVER WORLD THEATRE vol.6「ハムレット

 

作:ウィリアム・シェイクスピア

演出:サイモン・ゴドウィン

翻訳:河合祥一郎

 

出演:岡田将生黒木華、青柳翔、村上虹郎、竪山隼太、玉置孝匡、冨岡弘、町田マリー、薄平広樹、内田靖子、永島敬三、穴田有里、遠山悠介、渡辺隼斗、秋本奈緒美、福井貴一、山崎一松雪泰子

 

 

東京公演:2019年5月9日(木)~6月2日(日)  Bunmkamuraシアターコクーン

大阪公演:2019年6月7日(金)~6月11日(火)  森ノ宮ピロティホール

 

 

観劇日:2019年5月26日(日)13:00公演

 

 

 

羽ばたけ小劇団シリーズ③ 座・遅咲会「愛need獣」を観劇した感想

第42回目のレビューは、座・遅咲会5月公演「愛need獣」です。

 

新シリーズ「羽ばたけ小劇団」の第3回レビューとなっておりますが、とうとう自身の演劇概念を覆す衝撃作に出会ってしまいました・・・!!!

 

座・遅咲会とは、女優 中川ミコさんが主宰の劇団で、今年1月~12月まで毎月1本ずつ、12か月連続公演を行うという年間プロジェクトを現在開催しています。

 

本作はその年間プロジェクトの5作品目ということです。

 

観劇前に本作のあらすじを読んだとき、突拍子もない設定でどのようにストーリーが進んでいくのか不安だったのですが、、、不安が一気に吹き飛ぶ素晴らしい作品でした。

 

あらすじは、

ある星に恋をすると異形な形へと姿が変わってしまうという特殊な力を持った種族がいた。その星の女王である“アイ”は種族繁栄のため、恋をせず結婚しなければならないという使命があった。

しかし、許嫁との結婚を拒否したアイは事件に巻き込まれ、地球に舞い降りてきてしまう。

そこで一人の男性“月見 恋”と出会う。

次第に心惹かれていく二人だったが、恋をしてしまったアイの体はどんどん異形な体になっていってしまう・・・。互いに気持ちを伝えられないまま、地球を、そして宇宙を巻き込んだ大騒動に発展していくSFラブロマンスアクションコメディー!

 

衝撃的な演出 

 

本作で衝撃的だったことの一つが「演出」です。

 

全編通して、パワーマイムと呼ばれる手法を用いた演出。

パワーマイムとは、小道具など一切使わず、パントマイムと膨大な説明を駆使して場面描写や登場人物の心情を表現する手法です。

 

また、一人が多数の役を次々に切り替えながら、多くの役をこなすスイッチプレイと呼ばれる手法も用いられていました。

 

そもそも、異星人という突拍子もない設定は、観客としては感情移入が難しい設定ではないかという不安があります。

しかし、パワーマイムを用いることで、場面が変わるごとに状況説明があり、登場人物の心情も分かり易くストレートに表現されるので、少し強引な場面だとしても、観客はストーリーに置いていかれることがないのです。

 

すなわち、小道具がなくとも、ひとつひとつの場面が容易に想像できるのです。

 

更に、スイッチプレイという手法も取り入れ、街中にあるモノや建物なども演者がすべて演じており、衣装もそのままで別の役を演じているのですが、しっかり切り替わっていることに驚きました。衣装が想像の邪魔をしないんです。

 

東京の地名が随所に出てきたのも、場面把握しやすい理由だと思いました。

新宿や池袋、そして、TOHOシネマズ新宿・サンシャインシティなどの建物名もセリフの中に入れることで、状況を把握することが容易でした。

 

 

今まで見たことのない作品

  

本作は、キャラクターはもちろん、セリフや心情表現もすべてアニメのオマージュを多く取り入れていました。

 

キャラクターが緊張していると「ドキドキ」、そわそわしているシーンだと「そわそわ」と実際にセリフとして口に出す。

パワーマイムならではのシーンではありますが、コメディー作品では、ありそうでなかったパターンだなぁと思ったと同時に、作品全体にかなりのスピード感がないと成立しない手法だとも思いました。

しかし!本作は最初から最後までかなりのスピード感!アニメ寄りのセリフが世界観から浮かず、ぴったりはまっていました。

 

 

大前提として演者さん全員が演技が上手で、120パーセント振り切っていた、ということが一番素晴らしかったですが、世界観、演出、セリフ、すべてのバランスが良く、最高としか言いようのない作品でした。

 

 

本作は「アトリエファンファーレ東池袋」という2019年5月にできたばかりの劇場にて上演されております。

客席は50席ほどの小さな劇場でしたが、ステージを客席の真ん中に作っており、作品の迫力を間近で感じることのできるステージ構成でした。

 

 

このステージ構成も世界観とぴったりで、役者の細かな表現・セリフがすべて観客にぶつかってくる。だからこそ、容易にストーリーに入り込める。

 

 

どれか一つでも完成度が低ければ全体のバランスが崩れてしまう、という危険性をはらんでいながら、今まで観てきたどの作品にも当てはまらない、新たな演劇表現を味わうことができました。

 

おおげさかもしれませんが、私の演劇鑑賞人生において、大きな転換となる作品に出会えました。

 

来月には12か月連続公演の6作品目が上演予定です。

私もまた観劇に行こうと思っています。

 

 

【公演情報】

 

 

座・遅咲会5月公演「愛need獣」

 

脚本・演出:矢島慎之介

 

出演者:中川ミコ (中川ミコ 遅咲会5月公演「愛need獣」5/21〜26日 (@ososakikai) | Twitter

下前祐貴、小野寺真美、住吉美紅、村田結香、長田咲紀、光峰ゆりえ、奥野裕介、杉浦勇一、政野屋遊太、真僖祐梨、工藤夏姫、太田純平、矢島慎之介、夢麻呂

 

日程:2019年5月21日(火)~26日(日) 全11公演

 

会場:アトリエファンファーレ東池袋

 

観劇日:2019年5月24日(金)19:30公演

 

 

 

 

 

 

ミュージカル『キンキーブーツ』を観劇した感想(ネタバレあり)

第41回目のレビューは、渋谷 東急シアターオーブにて上演中の「キンキーブーツ」です!

 

f:id:kanazaaaaaawa:20190508215936j:plain

 

 

三浦春馬さん・小池徹平さんのダブル主演の本作は、廃業寸前の靴屋の跡取りとドラァグクイーンの出会いから、靴工場の経営を立て直す、サクセスストーリーのミュージカルです。

 

本作は、2016年に初演が行われ、チケットは全日即完。連日スタンディングオベーションの大盛況となった作品です!多くの観客に愛されたこの「キンキーブーツ」が今年帰ってくるとあって、情報解禁直後から、非常に注目されておりました。

 

 

キャストは2016年の初演から引き続き続投し、靴屋の跡取り息子であるチャーリーを小池徹平さん、ドラァグクイーンのローラを三浦春馬さんが演じております。

 

また、主演の二人を囲むキャストである、チャーリーの婚約者を玉置成美さん、チャーリーに恋する従業員のローレンをソニンさん、その他、勝矢さん、ひのあらたさんら初演のキャストも全員再集結し、キンキーブーツの世界へ戻ってきました!

 

 

 

チャーリーとローラが帰ってきた!

 

 

小池徹平三浦春馬という2人のキャストでしかチャーリーとローラを演じることができないと感じる程のキャラクターの完成度であり、初演時よりも更にパワーアップして帰ってきてくれた!という喜びで、胸がいっぱいになりました。

 

 

本作は管理者自身思い入れが強い作品で、本サイトの第1回レビューが2016年のキンキーブーツなのです。

 

 

それから3年、相変わらず演劇鑑賞が趣味の私が、改めてキンキーブーツの感想を書くことができると思うと、嬉しさも一入です。

 

 

本作の魅力の一つが、個性あるキャラクター達。

 

靴屋の跡取りとして、廃業寸前の靴屋の経営を任されることになったチャーリーを小池徹平さん。

そして、そんなチャーリーと運命的な出会いをするドラァグクイーンのローラを三浦春馬さんが演じております。

 

三浦春馬さんのローラが本当にパワフルで煌びやかで美しい!

 

観客は全員ローラの虜です。

 

10センチのピンヒール・真っ赤なドレスを身に付けたローラは、自信を全身にまとって踊り歌います。その姿は女性よりも女性であり、伸び伸びと自己を表現している。

 

そんなローラに憧れ、観客は心を奪われる。

 

しかし、ローラはドラァグクイーンとして生きる自分に悩んでいたのです。

 

社会から求められる自分と本当の自分。その違いに悩み、生きることに苦しんでいる。しかし、自分の気持ちを貫き通してありのままの自分を受け入れ、未来への希望を見つけ出す。

そんなローラの姿は、"自分の進む道"に悩むチャーリーの背中を押すだけでなく、私たち観客にも勇気をくれるのです。

 

ローラはほとんど煌びやかな衣装で登場しますが、男性の格好のシーンもあり、

同じキャラクターでも、衣装やシーンによってローラの抱えている感情が異なるため、大胆さのなかにも繊細な表現が必要で、春馬さんは丁寧に演じられていました。

 

パワフルだけど繊細なローラは三浦春馬さんしか演じることができない、そう感じました。キンキーブーツを観てしまったら、彼の持つ才能と魅力に落ちてしまうのではないでしょうか。

 

 

そんなローラと出会うのが、靴屋の跡取り息子チャーリー。

 

父の死をきっかけに靴屋の跡を継ぐことになるのですが、会社は倒産寸前であることを知り、再建に尽力することとなります。

 

その途中で出会ったのがドラァグクイーンのローラ。

 

男性の体重を支えることができるブーツが無いことをローラから知り、チャーリーはドラァグクイーン用のブーツを作ることを閃くのです。

 

チャーリーは他のキャラクターに引っ掻き回される、非常に忙しいキャラクターです。

婚約者、靴工場の従業員たち、そしてローラ。彼らの要求や不満を浴びせられ、チャーリー自身、右へ左へ奔走することになるのです。

 

全体的に小池徹平さんは受け身の演技をしなければならず、非常に難しい役どころだったと思います。それぞれのキャラクターの感情を汲み取り、それに対してチャーリーは行動を起こす。

 

ローラが注目されがちな本作ですが、本当の軸、主役はチャーリーなのではないでしょうか。

 

小柄な小池徹平さんですが、彼の放つ歌声には強くて太い一本の芯が通っていました。

 

チャーリーは自身の生き方に迷うキャラクターですが、小池徹平さん自身は座長としての自信に満ち溢れ、ステージに立っているように見えました。

 

 

 

キャラクターを更に魅力的にする楽曲の数々

 

 

ミュージカルであるキンキーブーツは数多くの楽曲が登場します。

 

キャラクターの感情は楽曲に乗せて観客に届けられ、その魅力的な楽曲の数々はキンキーブーツという作品を語るうえでは外せません。

 

チャーリー、ローラ、そして、ソニン演じるローレン達が秘めた思いを歌うシーンの数々は、生き生きとステージ上に存在しているキャラクター達をさらに輝かせていました。

 

 

最強ミュージカル「キンキーブーツ」 

 

 

本サイト開設から3年、多くの作品を観劇しましたが、やっぱり作品から貰うパワーが大きいのはこの「キンキーブーツ」だと思いました!

 

観劇後、こんなにハッピーになり、スカっとした気持ちになり、心の底から楽しかった!と思える作品はキンキーブーツが一番です。

 

連日スタンディングオベーションが続き、会場が一体となって作品を楽しむ。

こんなに会場全体が幸福感に包まれる作品はそうないと思います。

 

ミュージカルの持つパワーを全身で感じられる作品です。

 

チケットは全日即完ですが、当日券の販売があります。

皆様にぜひ観ていただきたい!と心の底から思う作品です。ぜひキンキーブーツの世界を味わってみてください!

 

 

【公演情報】

 

 

ブロードウェイミュージカル「キンキーブーツ」

 

脚本:ハーヴェイ・ファイアスタイン
音楽・作詞:シンディ・ローパー
演出・振付:ジェリー・ミッチェル
日本版演出協力・上演台本:岸谷五朗
訳詞:森雪乃丞

 

出演者:小池徹平三浦春馬ソニン玉置成実、勝矢、ひのあらた、飯野めぐみ、白木美貴子、施鐘泰JONTE)、穴沢裕介、森雄基、風間由次郎、森川次朗、遠山裕介、浅川文也、佐久間雄生、藤浦功一佐々木誠、高原紳輔、中村百花、丹羽麻由美、舩山智香子、清水隆伍、加藤潤一、岩間甲樹、山口祐輝、若林大空、犾守大空翔、高畑遼大、阿部カノン

 

 

東京公演:2019年4月16日(火)~5月12日(日) 東急シアターオーブ

大阪公演:2019年5月19日(日)~5月28日(火) オリックス劇場

 

 

観劇日:2019年5月5日(日)13:00公演

 

 

羽ばたけ小劇団シリーズ② 劇団スカブラボー「天野博士の憂鬱」を観劇した感想

第40回目のレビューは、劇団スカブラボー第8回公演「天野博士の憂鬱」です。

 

新シリーズ「羽ばたけ小劇団」の第2回目!

下北沢の「劇」小劇場での公演。演劇の聖地である下北沢で、本作は上演されておりました。

 

 

主人公は数々の発明を生み出した天才、天野博士。

彼が発明したパワーエネルギー"Lパワー"が悪用され、地球の半分が溶解してしまった世界。残された人類を守るため、天野博士が見つけた無人惑星に人類を移住させる計画を立てる。

そして、移住計画を実行するために博士と研究員はその惑星に調査に向かう。

惑星を探索すると、なんと!人間に似た生物の姿が!

無人惑星だと思っていた星には、別の生物がいた!!!

無人ではないことが分かり、退散しようとしたのだが、惑星の抱える問題に巻き込まれてしまった博士一行。そして、その問題を解決しようと手を貸すことにしたのだが、惑星の運命を揺るがす大きな事件が・・・!

 

 

展開の早い1時間40分の上演。次から次へとキャラクターが入れ替わり立ち替わり、ストーリーが進んでいきました。

 

驚いたのは、出演者全員が非常に芝居が上手く、キャラクターとしてしっかりと舞台上に存在していたことです。

そして、場面転換が多い中でも、暗転を使わず音響や照明で転換を表現している点が非常に印象に残っていて、作品全体の一体感を感じました。

 

 

 

【公演情報】

 

 

劇団スカブラボー 第8回公演「天野博士の憂鬱」

 

劇団:劇団スカブラボー 

 

出演者:阿部遼哉、内藤慎人、大塚かよ、雁瀬有子、さらら、鈴木拓也(レティクル座)、高槻しおり(偶像ぱんでみっく)、つりはるこ、野木ナツキ、堀内愛海、松下美優(志事務所)、宮本圭介、横内のぞみ

 

日程:2019年4月24日(水)~4月28日(日)

 

会場:「劇」小劇場(下北沢)

 

観劇日:2019年4月26日(金)19:30公演