『書きます!#観劇レビュー』

20代の管理人が鑑賞した舞台のレビューを書き残していきます!

『渦が森団地の眠れない子たち』を観劇した感想(ネタバレあり)

第52回目のレビューは、「渦が森団地の眠れない子たち」です。

 

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藤原竜也さんと鈴木亮平さんがダブル主演の本作。

 

そしてなんと、お二人が小学生役を演じるという非常に面白そうな作品で、情報解禁後から大きな話題となっておりました。

 

 

ここはとある団地。

震災によって団地に引っ越してきた小学6年生の圭一郎(鈴木亮平)は、団地のキングと名乗る同級生の鉄志(藤原竜也)と出会い、共に遊ぶようになる。そして彼らは、母親が双子で“いとこ”だったことを知る。鉄志は圭一郎と“血縁の儀”なるものを交わし親友と呼ぶ。しかし、圭一郎は鉄志のことを好きになれない。鉄志は圭一郎の最も嫌いな人間だったのだ・・・。

 

 

大人が演じる子ども

 

 

子どもは正直だ。自分の言いたいことは言うし、「バカ」とか「アホ」とか、大人が普段口にしないような言葉も直接、物怖じせず言う。そんな姿を大人が演じることで、子どもの幼稚さや愛嬌や、時には社会を知らない滑稽さなんかが浮き出てくる。

 

しかし、子どもながらに人間関係に悩み、自分の気持ちを抑えたり相手に合わせたりすることはある。

 

 

本作は大人になった圭一郎が小学生時代を回想することで始まります。

 

大人の圭一郎がその当時の自身の気持ちを吐露しながら、舞台は小学生時代に戻っていくのです。

 

圭一郎を演じる鈴木亮平さんは、大人と子どもを場面によって演じ分けながら物語は進みます。

一方、団地のキング・鉄志を演じる藤原竜也さんは最初から子どもとして登場。彼の姿を見て大人の圭一郎は「僕の最も嫌いな人間でした」とつぶやくのです。

 

 

そう言った後に暗転し、子どもの頃のシーンへと移る転換は、ドラマ第1話の導入シーンを観たようで物語に入りやすい印象を受けました。

 

そして場面ひとつひとつにタイトルが付いており、場面として独立しながらもそれぞれが別の場面に意味をもたらし、繋がっている面白さもありました。

 

 

子どもの喧嘩といじめ

  

小学生の喧嘩やいじめを大人が演じる。

 

この演劇的表現は、私自身に新たな視点を持たせてくれたと思いました。

 

喧嘩やいじめは、大人の世界でも消えません。私たち大人が、社会で出くわす喧嘩やいじめも、この子どもたちと何ら変わらないじゃないか、そう思いました。子どもの延長線上に大人がいて、彼らも数年後大人になる。

 

子どもだからこその薄情な無責任さが、観ている大人達に刺さるのです。

 

震災の余震は続き、劇中でも何度か余震が起こりました。

震災によって人々の心は荒み、余裕がなくなる。圭一郎も震災によって心に深い闇を負い、動物を殺すことで生きている実感を得ているという事実を鉄志に見つかってしまいます。

 

また、鉄志は母親から暴言を吐かれ、まともな愛情を与えられていませんでした。

 

だから鉄志は友達に対して暴力的な言葉や態度を使うのです。

 

社会や大人が生み出した理不尽さが子どもたちの“暴力”という形で表れます。

 

全体を通して、子どもというフィルターを通した社会のひずみ・世の生きづらさを映した作品なんだと思いました。

 

 

藤原竜也vs鈴木亮平

 

 

鉄志と圭一郎はいじめをきっかけに大喧嘩をして対立します。

 

藤原竜也さんと鈴木亮平さんという実力派のお二人だからこそ、対立する子どもという構図が非常に面白く、それぞれの良さが存分に発揮されている設定だと思いました。

 

 

喧嘩のシーンでお互いのパワーをこれでもかと相手にぶつけ合う。

 

殴って泣いてわめいて叫んで、自分をさらけ出す鉄志と圭一郎。

 

どこかそんな二人が羨ましくも思ったり。

 

大人の設定ではなかなかあそこまで全身全霊で相手に怒りをぶつけることはないので、人の本当の姿を二人を通して見せてもらったような気がしています。

 

本作は、大人の圭一郎が子どもの鉄志を見つめるシーンで始まったのですが、物語の終わり、大人の鉄志を子ども姿の圭一郎が見つめるというシーンで終わったのが印象的でした。始まりと逆の立場で終わっているのと同時に、大人になってもまだ会えていない、ということを表すシーンでもありました。

 

観ているうちに、重たいテーマの作品なのかとも思ったのですが、随所に笑ってしまうシーンがちりばめられ、ポスター同様ポップさもありつつ、シリアスなシーンもありという、とにかく感情の忙しい作品でした。

 

私も小学生のとき、喧嘩した友達同士の間に入って、それぞれを取り持ちながら仲裁したな~頑張ってたよなぁ~なんて、舞台を観てるときに思い出したり(笑)

 

最近観劇した中では非常に好きな作品でした。

 

基本買わないのですが、パンフレットも購入してしまいました・・・!

数年度、「あ~こんな素敵な作品あったよなぁ」と想い返したくなる作品でした。

 

 

 【公演情報】

  

『渦が森団地の眠れない子たち』

 

作・演出:蓬莱竜太

 

出演: 藤原竜也鈴木亮平、奥貫 薫、木場勝己、岩瀬 亮、蒲野紳之助、辰巳智秋、林 大貴、宮崎敏行、青山美郷、伊東沙保、太田緑ロランス、田原靖子、傳田うに

 

 

東京公演:2019年10月4日(金)〜20日(日) 東京国立劇場 中劇場

鳥栖公演:2019年10月26日(土)~27日(日) 鳥栖市民文化会館 大ホール

大阪公演:2019年10月29日(火)~30日(水) 森ノ宮ピロティホール

名古屋公演:2019年11月1日(金)~4日(月・祝) 御園座

広島公演:2019年11月7日(木)~8日(金) JMSアステールプラザ大ホール

仙台公演:2019年11月16日(土)~17日(日) 多賀城市民会館 大ホール

 

 

観劇日:2019年10月14日(月)13:30公演

 

 

舞台『アジアの女』を観劇した感想(ネタバレあり)

第51回目のレビューは、石原さとみさん主演「アジアの女」です。

 

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昨年、4年ぶりに舞台へ出演し大きな話題となった石原さとみさんですが、今年も主演舞台をされるということで、非常に注目度の高い作品です。

 

 

※昨年度の主演舞台「密やかな結晶」のレビューは以下に記載しております。ぜひご覧ください!

www.kakimasu-review.com

 

本作の舞台は、大災害によって壊滅状態となったとある町。

その町に兄・晃郎(山内圭哉)と妹・麻希子(石原さとみ)が住み続けていました。

そこに売れない作家・一ノ瀬(吉田鋼太郎)が訪れ、元編集者だった晃郎へ「新しい物語」を書かせろと迫ってきました。

 

緊迫した状況のなかでも平穏だった兄妹の生活が、一ノ瀬の登場によって静かに壊れ始めていくのです。

 

純粋さと狂気さ

 

石原さとみさん演じる麻希子は、かつて精神を病んでいたが、徐々に回復状態に戻ってきていました。

誰も疑うことのない純粋さと、自身の感情をコントロールできず狂気性が垣間見える役柄で、微妙な精神のバランスの中で、一ノ瀬の登場をきっかけに少しずつ変化していきます。

 

石原さんの、人を疑わない目や、自分自身をコントロールできないほどの突発的なエネルギーで感情表現されており、目を奪われました。

 

 

闇を抱えた書けない作家

 

吉田鋼太郎さんの出演されている舞台を初めて観劇したのですが、鋼太郎さんの舞台上でのパワーに圧巻されました。

 

他のキャラクターを巻き込むパワーも、闇を抱え込んだ繊細な表現も、全部が素晴らしかったです。

 

【公演情報】

 

 

『アジアの女』

 

作:長塚圭史
演出:吉田鋼太郎

 

出演:石原さとみ山内圭哉矢本悠馬、水口早香、吉田鋼太郎

 

2019年9月6日(金)~9月29日(日)  Bunkamuraシアターコクーン

 

 

観劇日:2019年9月23日(月・祝) 13:00公演

 

 

 

 

 

 

舞台『ブラッケン・ムーア~荒地の亡霊~』を観劇した感想(ネタバレあり)


第50回目のレビューは、「ブラッケン・ムーア~荒地の亡霊~」です。

 

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とある村のある家族と、その親友家族の物語。

 

 

亡くなった息子の亡霊が突如目の前に現れたら・・・。

 

ぞっとするシーンも随所にちりばめられたヒューマンサスペンス作品でした。

 

主演のテレンス・エイブリーを務めるのは岡田将生さん。

 

今年は4月に自身初のシェイクスピア作品「ハムレット」にも主演され、近年は精力的に舞台に出演されております。

(以下にレビューを記載しております。ぜひご覧ください!)

www.kakimasu-review.com

 

岡田将生演じる22歳のテレンスには親友エドガーがおりました。しかし10年前、エドガーはブラッケン・ムーアという荒野の廃虚に落ち、不慮の事故で12歳という若さでこの世を去っていたのです。

 

以前は家族同士で仲良くしていたのだが、エドガー亡き後、疎遠になっていた両家。

 

エドガーの母、エリザベスは息子の事故以来、家にこもって塞ぎがちになっており、彼女を元気付けるためにテレンス一家は久しぶりにエドガー家を訪れたのです。

 

10年ぶりに訪れた親友の家に1週間ほど滞在することにしたテレンス一家。

 

彼はエドガーの部屋を借りることにしたのですが、彼は毎晩何かにうなされるようになりました。 

 

そしてある晩、テレンスが突然、皆の前でこう話しはじめたのです。

 

「ブラッケン・ムーアに連れていって。そこで何があったか話してあげる。」

 

なんと、テレンスにエドガーの亡霊が憑依し、母のエリザベスや父に対して話しかけてきたのです。

 

12歳のエドガーが憑依したテレンスはブラッケン・ムーアに行き、残された家族に当時の真実を伝えはじめました・・・。

 

基本的にあらすじも何も知らないまま観劇するので、本作に関してストーリーに驚かされました。

 

 

岡田将生と12歳の亡霊

 

 

岡田さんに亡霊が憑依するシーンが何ともリアルで、テレンスの人格とエドガーの人格が一つの体に入り込んでいるという描写が生々しく舞台上で表現されており、岡田さんの演技力が光るシーンでした。

 

 

12歳のエドガーを、まだ幼さのある喋り方で岡田さんが演じ、見事に二人の人間を演じ分けておりました。

 

エドガーを演じている岡田さんの、体の動かし方や話し方が純粋な少年のようで、何とも可愛らしかったです。

 

一方で、ブラッケン・ムーアでの出来事を話すシーンでは、床を這う・泣き叫ぶなどの痛々しい描写が続き、身を削って演じているエドガーの最期は、観ていて心が締め付けられました。

 

 

エドガーの母エリザベスを演じていたのは木村多江さん。

 

息子を亡くした辛さから心を閉ざしてしまった難しい役どころでした。

 

テレンスにエドガーの亡霊が憑依してから、自分の息子と話せるかもしれないという希望と、本当の息子はおらず、テレンスに憑依しただけの亡霊であるという絶望、ふたつの感情をオーバーではない繊細な演技で演じられており、息子を亡くした母親というキャラクターに説得力を持たせていました。

 

 

最後にエドガーはテレンスの体を借り、両親に当時の思い・今の思いを伝えます。

 

その後、亡霊は消え、いつも通りの朝を迎えました。

 

テレンス一家が帰る日、テレンスはエドガーの両親に対し、衝撃の事実を口にします。

 

その事実によって今までの伏線が回収され、物語が今までとは全く別の色を帯びていくのです。

 

予想もしていなかった展開に、物語の行く末に固唾を飲みました。

 

そしてあの恐ろしい終わり方。ぞっとする終わり方でした・・・(笑)

 

 

近年、難しい作品に果敢に挑戦されている岡田さんの、舞台俳優としての実力が着実にあがっていると確信した作品となりました。

 

また、後半になるにつれて非常に面白い作品で、目が離せないストーリー展開でした。

 

 

【公演情報】

 

『ブラッケン・ムーア~荒地の亡霊~』

 

作:アレクシ・ケイ・キャンベル

 

演出:上村聡史

 

出演:岡田将生木村多江峯村リエ相島一之、立川三貴、前田亜季、益岡 徹、大西統眞、宏田 力

 

公演日程:

東京プレビュー公演:2019年8月2日(金)~4日(日) シアター1010

長野公演:2019年8月6日(火) 長野県県民文化会館 ホクト文化ホール 大ホール

愛知公演:2019年8月8日(木)・9日(金) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール

静岡公演:2019年8月11日(日) 静岡市清水文化会館 マリナート

東京公演:2019年8月14日(水)~27日(火) シアタークリエ

大阪公演:2019年8月30日(金)~9月1日(日)梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

 

 

観劇日:2019年8月17日(土)18:00公演

 

 

 

 

舞台『二度目の夏』を観劇した感想(ネタバレあり)


第49回目のレビューは、下北沢・本多劇場にて上演中の『二度目の夏』です。

 

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多くを話せば話すほど、自分の気持ちが伝わるわけではない。

 

 

話すほどに気持ちがすれ違い、元には戻れないほど心の距離が離れてしまうこともある。

 

愛情や嫉妬で感情がねじれることで、物語は思わぬ方向に進んでいきました。

 

社長夫婦とその友人、社長秘書、そしてお屋敷に使える家政婦。

 

それぞれの身に起こる些細な出来事が、少しずつ不協和音となって感情のもつれを生み出していくのです。

 

 

東出さんは会社の社長。裕福な家庭に育って、何不自由なく生きてきた余裕を見せながらも、仲野大賀演じる友人に対して、わずかな嫉妬心を募らせていきます。

 

仲野大賀さんは東出さんの友人を演じ、社長業で忙しい東出さんの頼みを聞き、奥さんの相手をすることに。友人の助けになってあげようとする心優しい大学生を純粋に演じられておりました。

 

社長の自宅家政婦として仕えているのが片桐はいりさん。

 

社長が出張中に起きたい家での出来事や、奥さんと大学生との関係性を神経質なまでに心配し、不穏な空気をもたらします。片桐さんのセリフかアドリブか分からないような台詞も度々登場し、観客の笑い声が会場に響いておりました。

 

 

くすっと笑ってしまうような掛け合いもありながら、物語は後半になるにつれて、緊張感あるシーンへ。

 

徐々に人間関係の均衡が崩れていきます。

 

自分自身を守るため、大切な相手を傷つけてしまう。人間の心は思ってるより弱いのです。

 

物語は予測していなかった結末を迎えます。仲野大賀さん演じる大学生は、ある行動を起こします。

 

私の妹も大学生で、彼女も本作を観劇し「彼は大学生だから、彼なりの結論を出したんじゃないか。」と言っていました。確かに・・・、そうかも、と少し納得。

 

俳優さんの演技力が光る、会話重視の作品でしたが、“言葉という道具の重要性を改めて考えさせられる作品でした。

 

 

【公演情報】

 

M&Oplaysプロデュース『二度目の夏』

 

作・演出:岩松了

 

出演: 東出昌大、仲野大賀、水上京香、清水葉月、菅原永二岩松了片桐はいり 

 

東京公演:2019年7月20日(土)~8月12日(月・祝) 本多劇場

福岡公演:2019年8月17日(土)・18日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール

広島公演:2019年8月20日(火) JMSアステールプラザ 大ホール

静岡公演:2019年8月22日(木) 静岡市民文化会館 中ホール

大阪公演:2019年8月24日(土)・25日(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

名古屋公演:2019年8月27日(火)・28日(水) 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール

神奈川公演:2019年9月1日(日) 湘南台文化センター市民シアター

 

 

観劇日:2019年8月4日(日)13:00公演

舞台『奇子』を観劇した感想

第48回目のレビューは、「奇子(あやこ)」です。

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本作は手塚治虫さんの漫画「奇子」が原作となっており、第二次世界大戦敗北後の日本で崩壊していく、ある一族を描いた作品です。

 

原作の漫画は、手塚治虫作品のなかでも“問題作”と称されており、映像化や舞台化が難しいとされてきました。

 

 

暗殺、遺産相続、監禁、近親相姦など、過激でセンセーショナルな問題を多く取り上げ、欲望のままに生きてしまうことで一族が崩壊していく様を描いた、刺激の強い作品でした。

 

 

主役である天外(てんげ)家の次男、二朗を演じるのは、A.B.C-Zの五関晃一さん。舞台への出演は多いですが、単独での主演は初。

 

本心の見えないキャラクターですが、五関さんそのもののキャラクターとも妙に似ているような。二朗の波乱万丈な人生と、そして天外家に起こるいくつもの不可思議な出来事が彼の語り口によって少しずつ明らかになっていきます。

 

 

天外家の崩壊

 

 

二朗には妹がいました。彼女の名は「奇子(あやこ)」。

 

彼女は一家の中では特異な存在で、周囲の人に隠されて生きていました。

 

彼女は、天外家当主である二朗の父と、二朗の兄である一郎が遺産欲しさに差し出した妻との間に生まれた子だったのです。

そして権力掌握や罪の意識から、一郎は奇子を地下に閉じ込めて、死んだことにしてしまったのです。

 

それから11年もの間、奇子は地下に閉じ込められながらも生き延びてきました。

 

現実では起こりえない設定ながらも、私利私欲に働く人間の強情さや、破滅へと向かう愚かさから目を背くことはできませんでした。目の前で起こっている世界をしっかりと見なければいけないという、説得力がありました。

 

 

赤い穴倉

 

 

舞台上には地下の穴倉をイメージしたセットが置かれ、中央には急な斜面を配置。広くないステージだからこそ大きな舞台美術を設置し、穴倉の閉塞感を演出。

 

また演者は全員が赤い衣装を身に着け、天外家の持つ不気味な雰囲気を表現していました。

 

手塚治虫さんの凄さを再確認したとともに、本作を舞台化した人々にも拍手をお送りしたい作品でした。

 

 

【公演情報】

 

 

手塚治虫生誕90周年記念事業 パルコ・プロデュース 『奇子

 

原作:手塚治虫

 

演出:中屋敷法仁

 

出演:五関晃一(A.B.C-Z)、三津谷亮、味方良介、駒井蓮深谷由梨香、松本妃代、相原雪月花、中村まこと梶原善

 

 

水戸公演:2019年7月14日(日)~15日(月・祝)  水戸芸術館ACM劇場

東京公演:2019年7月19日(金)~7月28日(日) 紀伊国屋ホール

大阪公演:2019年8月3日(土)~8月4日(日) サンケイホールブリーゼ

 

 

観劇日:2019年7月27日(土)18:00公演

 

舞台『美しく青く』を観劇した感想(ネタバレあり)

 

第47回目のレビューは、向井理さん主演「美しく青く」です。

 

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東日本大震災の被害を受けたある地区を舞台に、そこで生きる人たちの“日常”と“希望”を描いた作品です。

 

一見どこにでもいるような人の、どこにでもあるような日々の生活を表現し、その日々の中で、人間くささというか人間の面倒くさい部分が哀れなほどまっすぐに描かれていました。

 

 

個人的にあまり見たことのないストーリーでした。

誰かの生活を垣間見ているような感覚になり、自分の地元とは異なる地域設定にも関わらず、自身の田舎を思い出して、懐かしさすら感じてしまいました。

 

 

“普通”な日々を描く

 

 

 

向井理さんは、その地域で働きながら自警団を結成し、田畑を荒らす猿達へのパトロールを行っているという青年の役柄でした。

イケメン役を封印し、ただただその地域で日々暮らしている青年を自然体の演技でリアルに表現。過剰でなく適度に力の抜けたその姿に、向井さんの繊細な演技力を感じました。

 

ストーリーが進むにつれて、一見、何とでもないような会話や出来事が、不満や鬱憤となって人々の心に積っていく。その様が、表情や説明台詞ではないちょっとしたセリフを通して観客に伝わってくるのです。

 

 

田舎は地域のつながりが強くて、多くの人達との関わりがあります。関わりがあるということは、それだけ多くの問題も生まれてしまうということ。ある小さな出来事が多くの人々を巻き込む騒動に発展することも少なくありません。

 

 

そういう日々の積み重ねを描くことで、居酒屋での何気ない会話や、意味のない会話からも感情が見えてくるのです。飲み会の端と端の席で同時に2つの会話が進んでいく雰囲気だったり、この前言ってたことと真逆のこと言ってる人がいたり、誰しもが必ず遭遇したことのあるシーンを目の前で見せられ、人間のばかばかしさだったり愚かさが痛いほど伝わってきました。

 

 

でも人はそうやって日々過ごして生きていく。

そうやってしか生きていけないのかもしれません。

 

 

平田満さん、秋山菜津子さん、銀粉蝶さんらベテランの皆さんの演技が作品を引き締めてくださいました。そして、役場の人を演じられていた大倉孝二さんの“普通さ”が際立っていて、作品の芯としての役割を担っていたと感じました。

 

大倉さんの演技は元々大好きなのですが、今回はいつも以上に“普通”で、その普通さに親近感を持ちつつ、人間の弱い部分や愛らしい部分を表現する才能が素晴らしいので、出演されている舞台を観に行きたい役者さんの一人です。

 

 

人間って面倒だし、生きるって面倒。だけど生きていかなければならなくて、自己の生活風景を投影したかのような普遍的な生活を、作品として私たちに見せてくれました。

 

永遠に答えのない問いを突き付けられているようで、ほろ苦い作品ではありましたが、SF題材のような作品からは得られない、本当に知らなきゃいけない“姿”を少し教えてもらった気がしました。

 

 

【公演情報】

 

 

Bunkamura30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2019「美しく青く」

 

作・演出:赤堀雅秋

 

出演:向井理田中麗奈大倉孝二大東駿介横山由依、駒木根隆介、森優作、福田転球赤堀雅秋銀粉蝶秋山菜津子平田満

 

 

東京公演:2019年7月11日(木)~7月28日(日) Bunkamura シアターコクーン

大阪公演:2019年8月1日(木)~8月3日(土) 森ノ宮ピロティホール

 

 

観劇日:2019年7月18日(木)19:00公演

舞台「オレステイア」を観劇した感想(ネタバレあり)

 

第46回目のレビューは、生田斗真さん主演「オレステイア」です。

 

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本作はなんと、上演時間が4時間10分という超大作!

途中2回の休憩を挟みながら第1章から第4章まで分かれており、アトレウス一家に起こった悲劇が徐々に明らかになりながら、物語は進んでいきます。

 

 

ギリシャ悲劇を再構築した物語とあって、とある家族に起こった惨劇と一人の青年の抱える悲痛を軸に、重厚感のある演出で生み出していきます。

 

 

オレステスの記憶

 

 

 

この物語の主人公である青年、オレステスを演じるのが生田斗真さん。

オレステスは、自分の家族に起きた悲劇がトラウマで、ある記憶が欠落しており、その記憶を呼び戻すため、医師とともに自分の過去を思い出そうとします。

 

 

驚くことにオレステスは舞台上にほとんど出ずっぱりの状態で、斗真さん演じるオレステスは自分の記憶をステージ上で再構築しながら、自身に起こった過去の出来事を俯瞰しているような状況。

 

 

斗真さんのオレステスはとにかく美しい。しかし、自身の家族に次々と起こる惨劇によって莫大なストレスを抱え、精神が崩壊してしまったオレステスを演じるということは、その存在を表現するだけでも多くのエネルギーを必要とするということ。

 

非常に難しく壮絶な宿命を背負う役ですが、オレステスは台詞が多くないので、立ち姿や仕草で悲痛を表現し、オレステスの抱えている深い闇や苦しみを表現されている、と感じました。  

 

 

過去の回想と現在が複雑に絡み合い、サスペンス要素も含みながら、一家に起こった惨劇とは一体何なのか、観客はオレステスと共にステージ上で起こるアトレウス一家の過去の出来事を見返していきます。

 

 

 

アトレウス一家に起こった悲劇

 

 

 

オレステスの記憶は実に曖昧で、実際には存在しない姉・エレクトラすら別人格として作り出していました。

それだけ、過去のトラウマによって本当の出来事から目をそらしているということです。

 

 

第2幕の最後、とうとうオレステスの身に起こった悲劇を知ることとなります。

 

オレステスは自らの母を殺したのです。

 

父は戦争に勝つため生贄としてオレステスの姉イピゲネイアを殺し、母は娘を殺された復讐から自らの夫を殺した。そして、オレステスは父の仇として母を殺したのです。

 

 

殺人が連鎖し一家は崩壊。唯一の生き残りがオレステスだけ。

 

 

今まで隠されていたオレステスの過去が明らかになったとき、オレステスと観客は一気に現実世界に戻されることとなるのです。

ステージ上が一転、法廷へと様代わりし、オレステスは母親殺しの罪で裁判にかけられていました。

 

本作は一家に起こった出来事を一部始終見せたのち、後半は法廷のシーンになるという2部構成の作りになっており、衝撃を受ける展開となりました。

 

 

幾度となく劇中で登場する言葉、「未払いの死がある。その支払いは子ども」。

 

 

犯した罪は“死”をもって償う、ということだと思いますが、裁判によってオレステスは無罪となります。

 

無罪となって自由の身となったオレステスですが、そこに自由はなく、母親殺しの罪を背負ったまま生きていくことが彼にとって最も苦しく、生きていくには重すぎる宿命であると感じざるをえませんでした。

 

 

これぞ命を削るような作品だと感じました。

 

役者さんやスタッフの皆さんの気合を、本作を通して感じさせてもらいました。

 

 

 

極めて現代劇な演出

 

 

ステージ上には作りこまれたセットはなく、後方に白い四角い枠。そしてその枠をなぞるように上からは半透明なカーテンが垂れています。

 

 

頭上には壁があり、その壁に時間が投影されます。

 

その時間は現実世界と同じ時間を刻んでおり、劇中でも現実世界と同じく時を刻むのです。

 

私は13:00公演を観劇しましたが、時計が13:00を回った瞬間、舞台は幕を開け、登場人物も観客も、同じ時を刻みます。

本作は舞台を現在に置き換えた現代劇なのです。

 

 

第4幕になると徐々に分かってきますが、観客は裁判の傍聴人であり、それまで私達の目の前で繰り広げられてきた一家惨劇の一部始終は、裁判の証拠となるオレステスの記憶を呼び戻すために法廷で行っていた状況確認だったのです。

 

 

裁判の証拠となる品の数々も物語が進むごとに壁に映し出され、まるで法廷での証拠提出のように私達に示されます。

 

 

事実が徐々に明らかになるサスペンス要素や、何度も事実がひっくり返っていく緊張感。ひとつのギリシャ悲劇をふたつの側面から見せていく面白さ。

 

 

結末も非常に考えさせられ、演出含め非常に面白く、刺激的な作品でした。

 

 

 

【公演情報】

 

 

新国立劇場2018/2019シーズン演劇公演 『オレステイア』

 

 

原作:アイスキュロス

作:ロバート・アイク

翻訳:平川大作

演出:上村聡史

 

出演:生田斗真音月桂趣里横田栄司、下総源太朗、松永玲子、佐川和正、チョウ ヨンホ、草彅智文、髙倉直人、倉野章子、神野三鈴

 

公演: 2019年6月6日(木)~30日(日) 新国立劇場 中劇場 

 

 

観劇日:2019年6月26日(水)13:00公演