『書きます!#観劇レビュー』

鑑賞した舞台のレビューをただただ書き残していきます!

舞台『美しく青く』を観劇した感想(ネタバレあり)

 

第47回目のレビューは、向井理さん主演「美しく青く」です。

 

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東日本大震災の被害を受けたある地区を舞台に、そこで生きる人たちの“日常”と“希望”を描いた作品です。

 

一見どこにでもいるような人の、どこにでもあるような日々の生活を表現し、その日々の中で、人間くささというか人間の面倒くさい部分が哀れなほどまっすぐに描かれていました。

 

 

個人的にあまり見たことのないストーリーでした。

誰かの生活を垣間見ているような感覚になり、自分の地元とは異なる地域設定にも関わらず、自身の田舎を思い出して、懐かしさすら感じてしまいました。

 

 

“普通”な日々を描く

 

 

 

向井理さんは、その地域で働きながら自警団を結成し、田畑を荒らす猿達へのパトロールを行っているという青年の役柄でした。

イケメン役を封印し、ただただその地域で日々暮らしている青年を自然体の演技でリアルに表現。過剰でなく適度に力の抜けたその姿に、向井さんの繊細な演技力を感じました。

 

ストーリーが進むにつれて、一見、何とでもないような会話や出来事が、不満や鬱憤となって人々の心に積っていく。その様が、表情や説明台詞ではないちょっとしたセリフを通して観客に伝わってくるのです。

 

 

田舎は地域のつながりが強くて、多くの人達との関わりがあります。関わりがあるということは、それだけ多くの問題も生まれてしまうということ。ある小さな出来事が多くの人々を巻き込む騒動に発展することも少なくありません。

 

 

そういう日々の積み重ねを描くことで、居酒屋での何気ない会話や、意味のない会話からも感情が見えてくるのです。飲み会の端と端の席で同時に2つの会話が進んでいく雰囲気だったり、この前言ってたことと真逆のこと言ってる人がいたり、誰しもが必ず遭遇したことのあるシーンを目の前で見せられ、人間のばかばかしさだったり愚かさが痛いほど伝わってきました。

 

 

でも人はそうやって日々過ごして生きていく。

そうやってしか生きていけないのかもしれません。

 

 

平田満さん、秋山菜津子さん、銀粉蝶さんらベテランの皆さんの演技が作品を引き締めてくださいました。そして、役場の人を演じられていた大倉孝二さんの“普通さ”が際立っていて、作品の芯としての役割を担っていたと感じました。

 

大倉さんの演技は元々大好きなのですが、今回はいつも以上に“普通”で、その普通さに親近感を持ちつつ、人間の弱い部分や愛らしい部分を表現する才能が素晴らしいので、出演されている舞台を観に行きたい役者さんの一人です。

 

 

人間って面倒だし、生きるって面倒。だけど生きていかなければならなくて、自己の生活風景を投影したかのような普遍的な生活を、作品として私たちに見せてくれました。

 

永遠に答えのない問いを突き付けられているようで、ほろ苦い作品ではありましたが、SF題材のような作品からは得られない、本当に知らなきゃいけない“姿”を少し教えてもらった気がしました。

 

 

【公演情報】

 

 

Bunkamura30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2019「美しく青く」

 

作・演出:赤堀雅秋

 

出演:向井理田中麗奈大倉孝二大東駿介横山由依、駒木根隆介、森優作、福田転球赤堀雅秋銀粉蝶秋山菜津子平田満

 

 

東京公演:2019年7月11日(木)~7月28日(日) Bunkamura シアターコクーン

大阪公演:2019年8月1日(木)~8月3日(土) 森ノ宮ピロティホール

 

 

観劇日:2019年7月18日(木)19:00公演