今回のレビューは、舞台「海をゆく者」です。
とあるクリスマスの夜を描いた濃厚な会話劇かと思いきや、SF要素ありコメディ要素もあり、もちろん膨大なセリフ量で進む素晴らしい会話劇だったのですが、予想のつかない展開に背筋がぞくぞくしました。
そしてとにかく5人の俳優さん方の演技が素晴らしく、圧巻です。厚みと奥行きがとんでもない。
なんであんなに力が抜けていて自然なのだろう。
平田満さん演じるシャーキーとその兄、高橋克実さん演じるリチャードの住む家が舞台。ワンシチュエーションで展開され、一夜のスリリングな時間が描かれていきます。
酒にケンカにダメダメな中年おやじたちですが、クリスマスを楽しみにしているのがとても愛らしい。そして兄弟ケンカばかりの彼らですが、言動の端々に家族愛が覗く、やっぱり家族っていいなぁ~と思う作品でした。
その家を訪ねてきた小日向さん演じるロックハートが本作のキーパーソン。
登場した瞬間から只者ではない雰囲気はしてたのですが、徐々に明らかになる本当の姿。
そこから思わぬ方向に進んでゆく物語の気味の悪さ。
楽しいクリスマスの夜の物語が一変、ひとりの男の命がかかる運命の夜になってしまうなんて……。
1幕の終わり、舞台の端と端に対になるかたちで座っているロックハートとシャーキー。
シャーキーに向かってロックハートがゆっくりと近づきながら幕が降りていく演出なんてゾッとしました。
小日向さんの淡々とした話し方が何を考えているか分からない怖さを醸し出していて、めちゃくちゃ気味悪かったです(褒めてます)
全体を通して光の演出がとてもいい味を出してました。
薄暗い部屋からぱっと明るくなったり、豆電球だけになったり、キャラクターの心情を表現するようなライティングがとても印象的でした。
本作は2009年に初演、2014年に再演をしていて、今回で3回目の上演ということで、小日向さん、浅野さん、大谷さん、平田さんの4名が初演時から続投しています。
同じ役を同じメンバーで10年以上演じているなんて奇跡ですし、前作までは吉田鋼太郎さんが演じていたリチャードを今作では高橋克実さん。
吉田鋼太郎のリチャードも観たいなぁと思いましたが、克実さんのリチャードはとても泥臭くダメダメなお兄ちゃんでとても力強く愛らしかったです。
濃厚でノンストップな5人のベテラン俳優たちの会話劇、演劇好きならぜったい観たほうが良いと思います。
【公演情報】
PARCO STAGE 「海をゆく者」
作:コナー・マクファーソン
翻訳:小田島恒志
演出:栗山民也
出演:小日向文世、高橋克実、浅野和之、大谷亮介、平田満
公演日程
東京公演 2023年12月7日(木)~12月27日(水) PARCO劇場
新潟公演 2024年1月7日(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
愛知公演 2024年1月12日(金)~1月14日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
岡山公演 2024年1月17日(水) 岡山芸術創造劇場ハレノワ中劇場
福岡公演 2024年1月20日(土)~1月21日(日) キャナルシティ劇場
広島公演 2024年1月24日(水) JMSアステールプラザ 大ホール
大阪公演 2024年1月27日(土)~1月29日(月) サンケイホールブリーゼ
観劇日 2023年12月7日(木)18:00公演