今回のレビューは、舞台「ベイジルタウンの女神」です。
愛に溢れたストーリー、そしてあっという間に感じる3時間半の演劇体験。
演劇の面白さを全身で感じることのできる多幸感に満ち溢れた素晴らしいファンタジー作品でした。
本作は2020年に初演され、今回が再演。
2020年当時、楽しそうなお芝居だな~と思いつつ、コロナ禍ど真ん中のタイミングで足を運ぶことができませんでした。もし当時初演を観劇していたら、もう少し気持ちを明るく持ってコロナ禍を過ごすことができたかもなぁ...など、観劇後に思ったりしました。
作・演出を手掛けられたKERAさんの作品では珍しいハッピーエンドな作品。
KERAさんの作品は少し苦いエンディングが多い印象なのですが、本作は終始ハッピーで明るくほっこりしました。
登場人物全員が魅力的で、一人の役者が複数役を演じるのも観ていてワクワクしますし演劇的な面白さがあります。
主演の緒川たまきさんは唯一無二の女優さんだなぁとしみじみ。愛嬌抜群で、キャラクターとリンクしていて何を言っても微笑ましい。可愛らしいセリフを言ったら可愛らしいし、少し毒づいてもあまり刺々しく感じない。彼女が演じるからこそキャラクターが存在以上に魅力的に映るのだと感じます。
古田新太さんはマーガレットが1ヵ月の間過ごすこととなるベイジルタウンで暮らしている、王様と呼ばれている乞食。古田新太さんとしては珍しいハッピーエンド作品への出演のように感じますが、堅物で愛のあるキャラクターはとても似合いますし、緒川さん演じるマーガレットに対する的確なツッコみは観客の代弁者のようで、作品全体を通して観客の笑いを誘います。
個人的にとても大好きな役者さんである山内さんは緒川さん演じるマーガレットの婚約者ハットンを演じており、物語のキーパーソン。最初は良い人だったのに、物語が進むにつれて化けの皮が剝がれていき、悪役そのものになる展開は観ていて面白い。言うならば「アナと雪の女王」のハンス王子のよう。
山内さんはハットンともう一役演じておりますが、やっぱり上手いです。山内さんにしかできないキャラクターだと思いました。
約3時間35分という長尺の作品でありながら、全く飽きさせない演出・ストーリー。
観劇した今、「ベイジルタウンの女神」という作品に出会えてよかった、という気持ちでいっぱいです。
KERAさん作品ではよく見かけるプロジェクションマッピングを使った演出もしばしお別れだとKERAさんもインタビューで話されており、少し悲しくもありますが、またファンタジー溢れるKERAさん作品に出会える日を楽しみにしております。
【公演情報】
ケムリ研究室 no.4 舞台『ベイジルタウンの女神』
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:緒川たまき、古田新太、水野美紀、山内圭哉、坂東龍汰、藤間爽子、小園茉奈、後東ようこ、斉藤悠、依田朋子、中上サツキ、秋元龍太朗、尾方宣久、菅原永二、植本純米、温水洋一、犬山イヌコ、高田聖子
日程
東京公演:2025年5月6日(火)~5月18日(日) 世田谷パブリックシアター
兵庫公演:2025年5月22日(木)~5月25日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
久留米公演:2025年5月29日(木)・30日(金) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
豊橋公演:2025年6月6日(金)~6月8日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
新潟公演:2025年6月14日(土)~6月15日(日) りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館・劇場
観劇日:2025年5月10日(土)18:00公演