『書きます!#観劇レビュー』

鑑賞した舞台のレビューをただただ書き残していきます!

ナイロン100℃『イモンドの勝負』を観劇した感想(ネタバレあり)

第76回目のレビューは、ナイロン100℃「イモンドの勝負」です。

 

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劇団ナイロン100℃、3年ぶりの新作ということで情報解禁時から楽しみにしていた作品です。


公演情報に関する記事で本作は「ナンセンス・コメディー」と紹介されていて、ナンセンスってどんな意味だっけ?と辞書で引いてみました。

 


ナンセンス : 意味のないこと。ばかげたこと。つまらないこと。


そうか。なるほど。確かに、間違いなく、この舞台はナンセンスでした。

そして、とにかくお洒落。


ナンセンスでお洒落な世界に、溺れてきました。

 


ナンセンス×ブラックコメディ

 


ケラさんの書く台詞には毒があります。
でも、それがケラさんの世界で、私の大好きな世界です。

 

ここ1年はケラさんの作品を観劇できておらず、一番新しいのが「キネマと恋人」です。この作品は私が今まで観劇したなかで一番大好きな作品です(DVD出てるの本当にありがたい・・)

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「キネマと恋人」はラスト、それまでの展開と打って変わって苦い終わり方なのですが、今回の「イモンドの勝負」もただ面白いだけではないだろうと思っていたので、期待を裏切らない作品でした。


今回は「孤児」「首吊り」など、ブラックコメディ的テーマを盛り込んでいるにも関わらず、ダークさを感じさせないというところが逆に怖いんですよね。


重たい素材を扱いながら軽々とストーリーが進んでいくのは、とにかく芸達者な役者さんと演出に全く無駄がないから。

 

無駄がなく流れるように展開する場面の数々には感動させられっぱなしなのですが、ステージ全体にプロジェクションマッピングで映像を投影し、映像とリンクさせながらの役者紹介は、劇場で観た者にしか味わえない高揚感を感じます。

 

プロジェクションマッピングを使用した舞台は最近かなり多いですが、ケラさん演出の作品は群を抜いて迫力があります。


役者さんとの連動性もかなり高く、視覚的にとても楽しいです。
その分役者さんは大変なんだろうな・・とも思いますが、観客は最高にワクワクしています。

 


大好きな役者の皆さん

 


ナイロン100℃といえば大倉孝二さんというイメージで、大好きな役者さんの一人なのですが、圧倒的に演技が上手い。というか演技でした・・・?


演技に見えないんです。自然体過ぎるんです。


間違いなく演技なんでしょうけれど、リアリティに溢れすぎてて恐ろしいです。

哀愁ただよう佇まいをされている時点で優勝じゃないですか。コメディものとの相性が良すぎますね。

本作は大倉さん演じるスズキタモツのヘンテコな人生を軸としてストーリーが展開されていきますが、大倉さんのドキュメンタリーを見ているみたいな感覚でした。

振り回される役うますぎランキングダントツで1位です。

 

以前観劇した舞台「美しく青く」にも出演されていて、こちらではどこにでもいそうな"THE普通の人"を演じられていたのですが、それもまたリアルすぎて存在感に説得力があったのを覚えています。

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今回、客演として本作に出演された山内圭哉さん。

山内さんも大好きな役者さんの一人です。
本作が情報解禁されたとき、「山内さんがナイロン100℃の新作に!?絶対行く!」と一瞬で決心しました。
台詞の言い方が独特で、センスの塊だと思います。山内さんにしか表現できない世界があります。

 

そしてもう一人、池谷のぶえさん。

ポンコツな台詞がとても似合いますよね・・・本心から言っているような雰囲気を常にまとっていて、クスッとしてしまいます。存在感もすさまじく、本作での様々なキャラクターすべてが愛しかったです。

 


本作に出演されている役者のみなさんをドラマや映画でもお目にする機会が多いですが、やっぱり卓越した力を感じるためには劇場で直接パワーーを浴びなきゃ!と思います。

 


ばかばかしくてなんぼ

 


演劇はナンセンスであればあるほど最高だと思っています。


辻褄が合わなくても、時間軸がずれていても、意味が分からなくても演劇は成立してしまうんです。


今から8年前くらい、私がまだ10代だったときに蜷川幸雄さんが演出の舞台作品を観劇したとき、全く理解できないシーンが一つだけあったんです。
どういう意味なのか気になって、帰りにパンフレットを買って読んでみたら、蜷川さんがそのシーンについて「伝えたいことは何もない」と書かれていたんです。

 

「伝えたいことはない」!!!!!!????

 

この言葉のおかげで、演劇に対する見方が変わりました。
すべてのシーンに理由があるわけではないんだなと。でもそれでいいんだと。

 

この言葉をきっかけに、わけのわからない作品、大好きになりました。

とんでもないものを観て、自分にはない才能を浴びたとき、細胞が喜ぶんですよね。「わたし、生きてる~!!!!」


なぜか生命力がみなぎります。なぜだ・・・・。

 


舞台を観た帰り、普段はバスで酔うことなんてないのに、下北沢から三軒茶屋に向かうバスの中で胃がむかむかしてきて、確実に、体がこの作品から何らかの影響を受けていたのだと思います。
この酔いまでもナンセンス。私は一体なにを観ていたんだ。

 

ゆめ?

 

混沌とした気持ちをそのまま抱えて、清々しさとは程遠い感覚を引きずりながら、劇場を後にするのも洒落てるな~などとわけのわからないことを考えながら家に帰りました。

 

また、ケラさんの描く世界を観に行きたいと思います。

 


【公演情報】

 

ナイロン100℃ 47th SESSION「イモンドの勝負」


作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ

 

出演:大倉孝二 /みのすけ、犬山イヌコ、三宅弘城、峯村リエ、松永玲子、長田奈麻、廣川三憲、喜安浩平、吉増裕士、猪俣三四郎 /赤堀雅秋、山内圭哉、池谷のぶえ

 

日程:

東京公演 2021年11月20日(土)~12月12日(日) 本多劇場

兵庫公演 2021年12月18日(土)~12月19日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

広島公演 2021年12月21日(火) JMSアステールプラザ 大ホール

北九州公演 2021年12月25日(土)~12月26日(火) 北九州芸術劇場 中劇場

 


観劇日:2021年11月24日(水)18:00公演