今回のレビューは、ミュージカル「フランケンシュタイン」です。
ミュージカル好きで観たことのない人はいないのでは…?というほどの名作を、今回初めて観劇してきました。
重く苦しいストーリーが続く人間ドラマですが、そのドロドロした展開と個性的なキャラクター達がTHEミュージカル!という感じで、ただひたすらに圧倒された3時間でした。
本作はダブルキャストでの上演でしたが、ビクター・フランケンシュタイン/ジャック役を中川晃教さん、アンリ・デュプレ/怪物役を加藤和樹さんという、初演から続投しているお二人の回を観劇。
2017年の初演・2020年の再演を経て今回3度目の出演ということは、それだけファンの方々から熱望され、愛されていることが分かりましたし、この二人から生み出される愛と憎悪のお芝居は、鬼気迫るものがありました。
ビクターとアンリ、二人の固く結ばれた友情から一転、怪物の姿になり果てたアンリを殺してしまおうとしたビクターの行動をきっかけに、二人の関係性、そして、彼らの運命も大きく変わっていってしまうストーリーは非常に悲劇的。さらに、物語を彩る楽曲たちが壮大で素晴らしく、魂を削って歌う皆さんの姿に圧倒されっぱなしでした。
2幕では全員が別の役を演じるという、”全員一人二役”を演じ、全員が真逆といっていいほどふり幅のある2役を演じるという、非常に面白いストーリー&演出でした。
衣装やメイクまで全く異なりますし、あまりの違いっぷりに役者が役者たる所以をまざまざと見せつけられたようでした。
ビクター演じる中川さんの高音伸びやかな力強い歌声を聴きたくて本作を観劇したのですが、中川さんの繊細かつパワフルな歌声は唯一無二だなぁと感動しっぱなしでした。
天才ゆえの孤独さやビクターの抱える闇など、場面ごとの心情の機微を歌声に乗せながら、会場の空気を一瞬にして変える存在感。飄々としながらも圧倒的実力で殴りつけてくるなぁこの人は、と改めて思いました。真ん中がとにかく似合います。真ん中にいるべき人です。
怪物役を演じる加藤さんはとにかく凄かった。体の使い方、ステージ上での振る舞い方、全て圧倒されました。体力も命も削っているな、と思うほどの熱演でした。
怪物を演じるにあたっての鍛え上げられた体も凄まじいですし、人間離れした動きも体力的に酷使すると思いますが、とにかく体の使い方に感動しました。
初演コンビである中川さん・加藤さんペアこその空気感があるはずですし、Wキャストである小林さん・島さんコンビならではの新たな解釈もあるでしょう。更にはコンビが固定というわけではないので、中川さん・島さん、小林さん・加藤さんというNEWコンビもあるわけで、私に時間とお金(特にお金)があったら全4ペアすべて観たかった…。
ペアごとの化学反応があるでしょうし、観る側としても新たな「フランケンシュタイン」を観劇することができたはずです。
固く結ばれた友情から生涯の敵というほどの憎き存在となり、そしてラストは二人で…という非常に悲しい結末ですが、お互いにとっての”知己”というべき存在なんでしょうね。
ビクターと怪物それぞれの生き様を、素晴らしいお芝居と歌声で感じることができました。
【公演情報】
ミュージカル『フランケンシュタイン』
潤色・演出:板垣恭一
出演:
ビクター・フランケンシュタイン/ジャック:中川晃教/小林亮太(Wキャスト)
アンリ・デュプレ/怪物:加藤和樹/島 太星(Wキャスト)
ジュリア/カトリーヌ:花乃まりあ
ルンゲ/イゴール:鈴木壮麻
ステファン/フェルナンド:松村雄基
エレン/エヴァ:朝夏まなと
笠原竜司、栗山絵美、石川新太、松村曜生、三木麻衣子、齋藤桐人、宇部洋之、山田裕美子、宮野怜雄奈、半澤 昇、荒木啓佑、りんたろう、伊宮理恵、吉田萌美、松田未莉亜、江見ひかる、杉山真梨佳、荒川湧太、田中真由
SWING:高木裕和、大川 永
リトル・ビクター:鈴木琉音、下永龍正
リトル・ジュリア:森田みなも、杉山穂乃果
日程
東京公演:2025年4月10日(木)~4月30日(水) 東京建物Brillia HALL
愛知公演:2025年5月5日(月・祝)~5月6日(火・祝) 愛知県芸術劇場 大ホール
茨城公演:2025年5月10日(土)~5月11日(日) 水戸市市民会館 グロービスホール
兵庫公演:2025年5月17日(土)~5月21日(水)神戸国際会館 こくさいホール
観劇日:2025年4月24日(木)18:00公演