『書きます!#観劇レビュー』

鑑賞した舞台のレビューをただただ書き残していきます!

舞台『「葵上」「弱法師」』を観劇した感想(ネタバレあり)

第75回目のレビューは、舞台「葵上」「弱法師」です。

 

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作家、三島由紀夫の代表作「近代能楽集」から2作品を上演するという本作。

舞台が始まり、第一声を聞くや否や、三島由紀夫の描く文学の世界へ一気に引き込まれてしまいました。

 

「近代能楽集」というのは、能の物語を現代化した作品なのですね。なにも知らないまま観劇してしまったので、もっと本作への理解を深めるためには原作を読んでおくべきだったと今更ながら後悔しています・・・。

 

 

能の世界観を生かした演出と現代的演出

 

ステージ上にあるのは、最低限の小道具と真っ白な背景。また、その背景を囲むように額縁のような枠があり、枠は薄く光っています。

 

ステージを枠で囲む演出はたまに見かけますが、文学的作品によく用いられる印象があります。まるでその枠のなかで上演されている小説を観ている(聞いている)かのような錯覚になり、客席とは一線を隔てているような、作られた世界観を切り取って観ているような印象を受けます。

 

能も、舞台装置などない空間で繰り広げられますが、限りなく能に近い状況で上演しているのだなと感じました。

一方で、プロジェクションマッピングで白い背景に映像を投影し、登場人物が見ている世界を観客に共有するという、最新の映像技術も取り入れていて面白い演出だと思いました。

 

 

「葵上(あおいのうえ)」

 

 

こちらは恋愛の絡む、人間のどろどろした部分が見えてくる作品でした。

女の深い嫉妬や、そこから展開されるホラー的なラスト。見終わったあとの後味はかなり苦めでした。

文学作品を演劇的に表現すると、動きは多くなくとも言葉で表現するシーンがかなり多いと感じますが、たばこを吸う・抱きつくなど、大人で艶めかしいシーンも効果的に取り入れ、登場人物の心情が変化していくさまを演劇的に表現していました。

 

 

「弱法師(よろぼし)」

 

こちらは先ほどの「葵上」とはガラッと変わる、主演の神宮寺さんの演技力に驚かされました。

目の見えない二十歳の男"俊徳"が、育ての親と生みの親たちの前で大人たちに復讐を仕掛けていくという展開です。徐々に明らかになる俊徳の狂気性を演じる難しさは、考えただけで絶対にしんどいんですが、それを演じ切る神宮寺さんの演技力はすさまじいものがありました。

二十歳という若さから来る無鉄砲さ、凶暴さ、そして、親たちを傷つけているようで自身も傷つけているような痛々しさが俊徳から伝わってきて、見ているこっちも目を背けたくなるシーンが繰り広げられていきました。

 

「葵上」では仕事のできる大人な男性を演じ、「弱法師」では狂気性のある若い男性という全く違うキャラクターを演じ分ける神宮寺さんの演技力に驚きましたし、今後さらに舞台で様々な役柄を演じてほしいと思いました。

 

今後の舞台での活躍に期待したいと思います。

 

 

【公演情報】

 

『葵上』『弱法師』―「近代能楽集」より―

 

作:三島由紀夫


演出:宮田慶子

 

出演:神宮寺勇太(King & Prince)、中山美穂
   篠塚 勝、木村靖司、加藤 忍、渋谷はるか、佐藤みゆき、金井菜々

 

日程:

東京公演:2021年11月8日(月)~28日(日) 東京グローブ座

大阪公演:2021年12月1日(水)~5日(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

 

観劇日:2021年11月22日(月)18:00公演