『書きます!#観劇レビュー』

20代の管理人が鑑賞した舞台のレビューを書き残していきます!

舞台「オレステイア」を観劇した感想(ネタバレあり)

 

第46回目のレビューは、生田斗真さん主演「オレステイア」です。

 

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本作はなんと、上演時間が4時間10分という超大作!

途中2回の休憩を挟みながら第1章から第4章まで分かれており、アトレウス一家に起こった悲劇が徐々に明らかになりながら、物語は進んでいきます。

 

 

ギリシャ悲劇を再構築した物語とあって、とある家族に起こった惨劇と一人の青年の抱える悲痛を軸に、重厚感のある演出で生み出していきます。

 

 

オレステスの記憶

 

 

 

この物語の主人公である青年、オレステスを演じるのが生田斗真さん。

オレステスは、自分の家族に起きた悲劇がトラウマで、ある記憶が欠落しており、その記憶を呼び戻すため、医師とともに自分の過去を思い出そうとします。

 

 

驚くことにオレステスは舞台上にほとんど出ずっぱりの状態で、斗真さん演じるオレステスは自分の記憶をステージ上で再構築しながら、自身に起こった過去の出来事を俯瞰しているような状況。

 

 

斗真さんのオレステスはとにかく美しい。しかし、自身の家族に次々と起こる惨劇によって莫大なストレスを抱え、精神が崩壊してしまったオレステスを演じるということは、その存在を表現するだけでも多くのエネルギーを必要とするということ。

 

非常に難しく壮絶な宿命を背負う役ですが、オレステスは台詞が多くないので、立ち姿や仕草で悲痛を表現し、オレステスの抱えている深い闇や苦しみを表現されている、と感じました。  

 

 

過去の回想と現在が複雑に絡み合い、サスペンス要素も含みながら、一家に起こった惨劇とは一体何なのか、観客はオレステスと共にステージ上で起こるアトレウス一家の過去の出来事を見返していきます。

 

 

 

アトレウス一家に起こった悲劇

 

 

 

オレステスの記憶は実に曖昧で、実際には存在しない姉・エレクトラすら別人格として作り出していました。

それだけ、過去のトラウマによって本当の出来事から目をそらしているということです。

 

 

第2幕の最後、とうとうオレステスの身に起こった悲劇を知ることとなります。

 

オレステスは自らの母を殺したのです。

 

父は戦争に勝つため生贄としてオレステスの姉イピゲネイアを殺し、母は娘を殺された復讐から自らの夫を殺した。そして、オレステスは父の仇として母を殺したのです。

 

 

殺人が連鎖し一家は崩壊。唯一の生き残りがオレステスだけ。

 

 

今まで隠されていたオレステスの過去が明らかになったとき、オレステスと観客は一気に現実世界に戻されることとなるのです。

ステージ上が一転、法廷へと様代わりし、オレステスは母親殺しの罪で裁判にかけられていました。

 

本作は一家に起こった出来事を一部始終見せたのち、後半は法廷のシーンになるという2部構成の作りになっており、衝撃を受ける展開となりました。

 

 

幾度となく劇中で登場する言葉、「未払いの死がある。その支払いは子ども」。

 

 

犯した罪は“死”をもって償う、ということだと思いますが、裁判によってオレステスは無罪となります。

 

無罪となって自由の身となったオレステスですが、そこに自由はなく、母親殺しの罪を背負ったまま生きていくことが彼にとって最も苦しく、生きていくには重すぎる宿命であると感じざるをえませんでした。

 

 

これぞ命を削るような作品だと感じました。

 

役者さんやスタッフの皆さんの気合を、本作を通して感じさせてもらいました。

 

 

 

極めて現代劇な演出

 

 

ステージ上には作りこまれたセットはなく、後方に白い四角い枠。そしてその枠をなぞるように上からは半透明なカーテンが垂れています。

 

 

頭上には壁があり、その壁に時間が投影されます。

 

その時間は現実世界と同じ時間を刻んでおり、劇中でも現実世界と同じく時を刻むのです。

 

私は13:00公演を観劇しましたが、時計が13:00を回った瞬間、舞台は幕を開け、登場人物も観客も、同じ時を刻みます。

本作は舞台を現在に置き換えた現代劇なのです。

 

 

第4幕になると徐々に分かってきますが、観客は裁判の傍聴人であり、それまで私達の目の前で繰り広げられてきた一家惨劇の一部始終は、裁判の証拠となるオレステスの記憶を呼び戻すために法廷で行っていた状況確認だったのです。

 

 

裁判の証拠となる品の数々も物語が進むごとに壁に映し出され、まるで法廷での証拠提出のように私達に示されます。

 

 

事実が徐々に明らかになるサスペンス要素や、何度も事実がひっくり返っていく緊張感。ひとつのギリシャ悲劇をふたつの側面から見せていく面白さ。

 

 

結末も非常に考えさせられ、演出含め非常に面白く、刺激的な作品でした。

 

 

 

【公演情報】

 

 

新国立劇場2018/2019シーズン演劇公演 『オレステイア』

 

 

原作:アイスキュロス

作:ロバート・アイク

翻訳:平川大作

演出:上村聡史

 

出演:生田斗真音月桂趣里横田栄司、下総源太朗、松永玲子、佐川和正、チョウ ヨンホ、草彅智文、髙倉直人、倉野章子、神野三鈴

 

公演: 2019年6月6日(木)~30日(日) 新国立劇場 中劇場 

 

 

観劇日:2019年6月26日(水)13:00公演