第49回目のレビューは、下北沢・本多劇場にて上演中の『二度目の夏』です。
多くを話せば話すほど、自分の気持ちが伝わるわけではない。
話すほどに気持ちがすれ違い、元には戻れないほど心の距離が離れてしまうこともある。
愛情や嫉妬で感情がねじれることで、物語は思わぬ方向に進んでいきました。
社長夫婦とその友人、社長秘書、そしてお屋敷に使える家政婦。
それぞれの身に起こる些細な出来事が、少しずつ不協和音となって感情のもつれを生み出していくのです。
東出さんは会社の社長。裕福な家庭に育って、何不自由なく生きてきた余裕を見せながらも、仲野大賀演じる友人に対して、わずかな嫉妬心を募らせていきます。
仲野大賀さんは東出さんの友人を演じ、社長業で忙しい東出さんの頼みを聞き、奥さんの相手をすることに。友人の助けになってあげようとする心優しい大学生を純粋に演じられておりました。
社長の自宅家政婦として仕えているのが片桐はいりさん。
社長が出張中に起きたい家での出来事や、奥さんと大学生との関係性を神経質なまでに心配し、不穏な空気をもたらします。片桐さんのセリフかアドリブか分からないような台詞も度々登場し、観客の笑い声が会場に響いておりました。
くすっと笑ってしまうような掛け合いもありながら、物語は後半になるにつれて、緊張感あるシーンへ。
徐々に人間関係の均衡が崩れていきます。
自分自身を守るため、大切な相手を傷つけてしまう。人間の心は思ってるより弱いのです。
物語は予測していなかった結末を迎えます。仲野大賀さん演じる大学生は、ある行動を起こします。
私の妹も大学生で、彼女も本作を観劇し「彼は大学生だから、彼なりの結論を出したんじゃないか。」と言っていました。確かに・・・、そうかも、と少し納得。
俳優さんの演技力が光る、会話重視の作品でしたが、“言葉という道具の重要性を改めて考えさせられる作品でした。
【公演情報】
M&Oplaysプロデュース『二度目の夏』
作・演出:岩松了
出演: 東出昌大、仲野大賀、水上京香、清水葉月、菅原永二、岩松了、片桐はいり
東京公演:2019年7月20日(土)~8月12日(月・祝) 本多劇場
福岡公演:2019年8月17日(土)・18日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
広島公演:2019年8月20日(火) JMSアステールプラザ 大ホール
静岡公演:2019年8月22日(木) 静岡市民文化会館 中ホール
大阪公演:2019年8月24日(土)・25日(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
名古屋公演:2019年8月27日(火)・28日(水) 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
神奈川公演:2019年9月1日(日) 湘南台文化センター市民シアター
観劇日:2019年8月4日(日)13:00公演