第50回目のレビューは、「ブラッケン・ムーア~荒地の亡霊~」です。
とある村のある家族と、その親友家族の物語。
亡くなった息子の亡霊が突如目の前に現れたら・・・。
ぞっとするシーンも随所にちりばめられたヒューマンサスペンス作品でした。
主演のテレンス・エイブリーを務めるのは岡田将生さん。
今年は4月に自身初のシェイクスピア作品「ハムレット」にも主演され、近年は精力的に舞台に出演されております。
(以下にレビューを記載しております。ぜひご覧ください!)
岡田将生演じる22歳のテレンスには親友エドガーがおりました。しかし10年前、エドガーはブラッケン・ムーアという荒野の廃虚に落ち、不慮の事故で12歳という若さでこの世を去っていたのです。
以前は家族同士で仲良くしていたのだが、エドガー亡き後、疎遠になっていた両家。
エドガーの母、エリザベスは息子の事故以来、家にこもって塞ぎがちになっており、彼女を元気付けるためにテレンス一家は久しぶりにエドガー家を訪れたのです。
10年ぶりに訪れた親友の家に1週間ほど滞在することにしたテレンス一家。
彼はエドガーの部屋を借りることにしたのですが、彼は毎晩何かにうなされるようになりました。
そしてある晩、テレンスが突然、皆の前でこう話しはじめたのです。
「ブラッケン・ムーアに連れていって。そこで何があったか話してあげる。」
なんと、テレンスにエドガーの亡霊が憑依し、母のエリザベスや父に対して話しかけてきたのです。
12歳のエドガーが憑依したテレンスはブラッケン・ムーアに行き、残された家族に当時の真実を伝えはじめました・・・。
基本的にあらすじも何も知らないまま観劇するので、本作に関してストーリーに驚かされました。
岡田将生と12歳の亡霊
岡田さんに亡霊が憑依するシーンが何ともリアルで、テレンスの人格とエドガーの人格が一つの体に入り込んでいるという描写が生々しく舞台上で表現されており、岡田さんの演技力が光るシーンでした。
12歳のエドガーを、まだ幼さのある喋り方で岡田さんが演じ、見事に二人の人間を演じ分けておりました。
エドガーを演じている岡田さんの、体の動かし方や話し方が純粋な少年のようで、何とも可愛らしかったです。
一方で、ブラッケン・ムーアでの出来事を話すシーンでは、床を這う・泣き叫ぶなどの痛々しい描写が続き、身を削って演じているエドガーの最期は、観ていて心が締め付けられました。
息子を亡くした辛さから心を閉ざしてしまった難しい役どころでした。
テレンスにエドガーの亡霊が憑依してから、自分の息子と話せるかもしれないという希望と、本当の息子はおらず、テレンスに憑依しただけの亡霊であるという絶望、ふたつの感情をオーバーではない繊細な演技で演じられており、息子を亡くした母親というキャラクターに説得力を持たせていました。
最後にエドガーはテレンスの体を借り、両親に当時の思い・今の思いを伝えます。
その後、亡霊は消え、いつも通りの朝を迎えました。
テレンス一家が帰る日、テレンスはエドガーの両親に対し、衝撃の事実を口にします。
その事実によって今までの伏線が回収され、物語が今までとは全く別の色を帯びていくのです。
予想もしていなかった展開に、物語の行く末に固唾を飲みました。
そしてあの恐ろしい終わり方。ぞっとする終わり方でした・・・(笑)
近年、難しい作品に果敢に挑戦されている岡田さんの、舞台俳優としての実力が着実にあがっていると確信した作品となりました。
また、後半になるにつれて非常に面白い作品で、目が離せないストーリー展開でした。
【公演情報】
『ブラッケン・ムーア~荒地の亡霊~』
作:アレクシ・ケイ・キャンベル
演出:上村聡史
出演:岡田将生、木村多江、峯村リエ、相島一之、立川三貴、前田亜季、益岡 徹、大西統眞、宏田 力
公演日程:
東京プレビュー公演:2019年8月2日(金)~4日(日) シアター1010
長野公演:2019年8月6日(火) 長野県県民文化会館 ホクト文化ホール 大ホール
愛知公演:2019年8月8日(木)・9日(金) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
静岡公演:2019年8月11日(日) 静岡市清水文化会館 マリナート
東京公演:2019年8月14日(水)~27日(火) シアタークリエ
大阪公演:2019年8月30日(金)~9月1日(日)梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
観劇日:2019年8月17日(土)18:00公演