第43回目のレビューは、岡田将生さん主演「ハムレット」です。
演劇界不朽の名作として世界中で上演されている「ハムレット」。
本作は、シェイクスピア作品へ初挑戦する岡田将生さんが主演を務めるとあって、情報解禁直後から非常に注目されている作品です。
若々しく荒々しいハムレット
2014年に上演された舞台「皆既食 ーTotal Eclipseー」以降、数々の舞台に出演されてきた岡田さん。そして2019年、シェイクスピア作品へ初挑戦することとなりました。
「ハムレット」は非常に難解な戯曲であり、役者がどう演じても正解のない作品です。
その非常に難解なハムレットを、岡田さんが若々しく荒々しいハムレットとして魅せてくれました。
ハムレットは王であった父の亡霊に語り掛けられ、父が叔父に毒を盛られ殺害されたことを知ります。そして、叔父への復讐に燃えるのであるが、そもそも自分が見た亡霊は本物なのか、ハムレットは悩み苦しむのです。
感情を観客に吐露する独白が多いですが、言葉一つ一つに感情が乗り、苦しみの最中から自分の進むべき道を探ろうともがく岡田さんの姿はハムレットそのものでした。
ストーリーの軸となる点は、ハムレットが叔父の真意を探ることにありますが、彼は父の亡霊が「悪魔」なのではないかと疑います。悪魔ではないことを確認し、亡霊からの命令に従い叔父へ復讐することが本作の面白さです。
ハムレットの独白シーンを含め、彼の口から発せられる言葉は、妙に論理的。
あの有名なセリフ、「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」も論理的な言い回しで日本人には聞き馴染みがありません。
ですが、岡田さんの言葉の発し方、喋り方には説得力があり、ハムレットと相性が良いと感じました。観客にしっかり聞かせなければならないセリフがきちんと届いている。
彼の亡霊への疑いや戸惑いを岡田さんが粗削りさを残しつつ熱演し、復讐心を燃やす感情の高鳴りも全身全霊で表現されていました。
時に子供っぽさを垣間見せつつ、苦悩を色気で表現。
新たな岡田さんの魅力が詰まっていると感じました。
ハムレットの演出アイディア
「ハムレット」は非常に解釈が難しいため、事前に予習が必要だと思いますが、私は2015年に蜷川幸雄さん演出の「ハムレット」を観劇したことがあり、その際の演出と比べながら観劇しました。
何度も上演されている本作は、様々な解釈での演出がなされています。
キャラクターの関係性をどう切り取り、どう観客へ伝えるか、演出によって全く異なります。
今回の演出家、サイモン・ゴドウィンの演出は、古典演劇を軽妙な切り口で表現していると感じました。
全体的に軽く、観やすいハムレットだったと思います。
舞台は回転式で、暗転せず場面を転換していき、流動的に次のシーンへ繋げているのが印象的でした。セットは2階建てで、階段や上下を使い、複雑な状況を視覚的に表現。
暗いシーンが多いイメージの「ハムレット」ですが、本作は色彩豊かなシーンが多く、明るく、軽快な印象を持ちました。
衣装やセットに赤や緑など原色を多数用いる一方、ハムレットが苦悩を語る独白シーンは衣装や照明含め全体的に暗い印象となり、緩急をつけた演出だったと思います。
岡田さんは今年の8月にも舞台「ブラッケン・ムーア~荒地の亡霊~」に出演予定で、舞台への強い熱意が伺えます。
Bunmkamuraシアターコクーンにて6月2日(日)まで上演中の「ハムレット」、そして、次回作の「ブラッケン・ムーア~荒地の亡霊~」どちらも注目作です。
ぜひ見に行ってみてください!
【公演情報】
Bunkamura30周年記念シアターコクーン・オンレパートリー2019
DISCOVER WORLD THEATRE vol.6「ハムレット」
演出:サイモン・ゴドウィン
翻訳:河合祥一郎
出演:岡田将生、黒木華、青柳翔、村上虹郎、竪山隼太、玉置孝匡、冨岡弘、町田マリー、薄平広樹、内田靖子、永島敬三、穴田有里、遠山悠介、渡辺隼斗、秋本奈緒美、福井貴一、山崎一、松雪泰子
東京公演:2019年5月9日(木)~6月2日(日) Bunmkamuraシアターコクーン
大阪公演:2019年6月7日(金)~6月11日(火) 森ノ宮ピロティホール
観劇日:2019年5月26日(日)13:00公演