第85回目のレビューは、舞台「フォーティンブラス(2022)」 です。
昨年の再演ということで、ほぼ昨年のキャストが続投し、役者の生き様や舞台への情熱を感じる本作をまた観劇することができました。
昨年は渋谷・Bunkamuraシアターコクーンでの上演でしたが今年は浜松町・自由劇場での上演。自由劇場の重厚感ある内装と落ち着きのある小さめの劇場が、フォーティンブラスという演目と相性がいいなぁと感じました。
昨年の観劇レビューは以下に書いておりますので、より詳細なあらすじなどはこちらをご覧ください!
傲慢な人気俳優 vs 売れない舞台役者
役者が役者の役を演じることで、舞台上で生きることへの葛藤がこうも現実味を帯びて浮彫りになってくるのかと思いました。
様々な役者がひとつの作品を作り上げるために、彼らの舞台へかける思いがぶつかり合う。その姿に胸が締め付けられます。
劇中劇で繰り広げられるハムレット。
その主演を務めるのが黒沢正美という傲慢な人気俳優です。セリフもろくに覚えず、公演はめちゃくちゃ。にも関わらず裏では共演者の役者に対してわがままな注文ばかり。役者たちを振り回して、カンパニーの雰囲気も悪くする嫌な奴です。
そんな姿と対照的な姿として描かれるのは、フォーティンブラス役の羽沢武年。正美とは全く別で、いまだにアルバイトをしながら役者を続けている羽沢。スポットライトも当たらず、スターの裏でバックダンサーのように演じるだけの人生に半ば諦めています。
そんな正美と羽沢は役者として幾度となくぶつかります。
立場は違えど、役者としてのプライドはある。羽沢は自分の奥底に眠っていた役者魂を奮い起こし、正美にぶつけるのです。
昨年に引き続き羽沢武年をA.B.C-Zの戸塚祥太さん、黒沢正美役を内博貴さんが演じられております。
自分の将来に希望もなくやさぐれている羽沢を演じている戸塚さんの演技は、昨年同様その存在に説得力があります。肩の力が抜けていて、何だかけだるそうなその姿に、本当にこういう役者が存在し楽屋でだらだらと愚痴を言っているように見えてきます。
内さんは正美そのもので、誰も彼の言動に口出しできないほど存在感に迫力がありました。
そんな正美に対して彼の言動を指摘し、カンパニーの雰囲気を変えるきっかけとなる羽沢の発言は勇敢で、まるで戸塚さんの舞台への情熱が羽沢の舞台への情熱として現れているような、二重にも取れる面白さがありました。
1年ぶりの再演
昨年に引き続きオリーフィア役の刈谷ひろみを能條愛未さん、ベテラン俳優役の松村玉代役を矢島舞美さんが演じられております。
お二人とも昨年より上手になられている気がして感動しました・・・。
昨年と同じセリフ・同じ衣装だからこそ昨年との違いも感じられて、この1年の役者のみなさんの成長を見て取ることができました。
そして今回とても良かったなと思ったのが、劇場のエントランスにあるキャストボードが、フォーティンブラスのキャストではなく、劇中劇であるハムレットのキャストで掲示されていたこと。
こういう遊び心いいですよね。作品の世界観を大切にされていますし、何よりもスタッフさんの作品への愛を感じました・・・!
【ロビーのご案内】
— 舞台「フォーティンブラス」公式 (@fortinbras2022) June 3, 2022
自由劇場ロビーにて、黒沢正美主演舞台『ハムレット』のキャストボードを掲示しております。ご観劇の際はぜひお立ち寄りくださいませ!
なお、客席・ロビー含む劇場内での写真・動画撮影はできません。あらかじめご了承ください。#フォーティンブラス pic.twitter.com/VPf6k1L9tt
昨年から大きなストーリーや演出の変更などはありませんでしたが、流れるように次の場面へと繋がる、あの転換のスムーズさには今回も驚きました。
こちらの集中力が切れることなくどんどん世界観に没入してしまう、スピード感ある素晴らしい作品でした。
そして、最後にこれだけ。
ポスタービジュアルが大優勝してました。(このビジュアルでグッズ出してほしかったですね〜!)
公演情報
「フォーティンブラス(2022)」
作:横内謙介
演出:中屋敷法仁
出演者:戸塚祥太(A.B.C-Z)/能條愛未、矢島舞美/富岡晃一郎、桑野晃輔、吉田美佳子、新原 武、吉田智則/濱田和馬、齋藤明里、三浦修平、小笠原彩、村松洸希、沖育美/内博貴
公演日程:
東京公演:2022年6月3日(金)~9日(木) 自由劇場
大阪公演:2022年6月18日(土)~20日(月)梅田芸術劇場
愛知公演:2022年6月28日(火)~30日(木)穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホール
観劇日:2022年6月4日(土)18:00公演