第48回目のレビューは、「奇子(あやこ)」です。
本作は手塚治虫さんの漫画「奇子」が原作となっており、第二次世界大戦敗北後の日本で崩壊していく、ある一族を描いた作品です。
原作の漫画は、手塚治虫作品のなかでも“問題作”と称されており、映像化や舞台化が難しいとされてきました。
暗殺、遺産相続、監禁、近親相姦など、過激でセンセーショナルな問題を多く取り上げ、欲望のままに生きてしまうことで一族が崩壊していく様を描いた、刺激の強い作品でした。
主役である天外(てんげ)家の次男、二朗を演じるのは、A.B.C-Zの五関晃一さん。舞台への出演は多いですが、単独での主演は初。
本心の見えないキャラクターですが、五関さんそのもののキャラクターとも妙に似ているような。二朗の波乱万丈な人生と、そして天外家に起こるいくつもの不可思議な出来事が彼の語り口によって少しずつ明らかになっていきます。
天外家の崩壊
二朗には妹がいました。彼女の名は「奇子(あやこ)」。
彼女は一家の中では特異な存在で、周囲の人に隠されて生きていました。
彼女は、天外家当主である二朗の父と、二朗の兄である一郎が遺産欲しさに差し出した妻との間に生まれた子だったのです。
そして権力掌握や罪の意識から、一郎は奇子を地下に閉じ込めて、死んだことにしてしまったのです。
それから11年もの間、奇子は地下に閉じ込められながらも生き延びてきました。
現実では起こりえない設定ながらも、私利私欲に働く人間の強情さや、破滅へと向かう愚かさから目を背くことはできませんでした。目の前で起こっている世界をしっかりと見なければいけないという、説得力がありました。
赤い穴倉
舞台上には地下の穴倉をイメージしたセットが置かれ、中央には急な斜面を配置。広くないステージだからこそ大きな舞台美術を設置し、穴倉の閉塞感を演出。
また演者は全員が赤い衣装を身に着け、天外家の持つ不気味な雰囲気を表現していました。
手塚治虫さんの凄さを再確認したとともに、本作を舞台化した人々にも拍手をお送りしたい作品でした。
【公演情報】
手塚治虫生誕90周年記念事業 パルコ・プロデュース 『奇子』
原作:手塚治虫
演出:中屋敷法仁
出演:五関晃一(A.B.C-Z)、三津谷亮、味方良介、駒井蓮、深谷由梨香、松本妃代、相原雪月花、中村まこと、梶原善
水戸公演:2019年7月14日(日)~15日(月・祝) 水戸芸術館ACM劇場
東京公演:2019年7月19日(金)~7月28日(日) 紀伊国屋ホール
大阪公演:2019年8月3日(土)~8月4日(日) サンケイホールブリーゼ
観劇日:2019年7月27日(土)18:00公演