第80回目のレビューは、「裏切りの街」です。
2020年に公演予定だった本作は、新型コロナの影響で延期となってしまい、2年後の今年ようやく上演となりました。
10年前に初演され、その後ドラマ化・映画化もされた本作ですが、主人公をHey!Say!JUMPの高木雄也さんが単独初主演を務めるということでも注目されております。
非常に演劇向きのストーリーで、観劇後の余韻が強く残る作品でした。
大胆なラブシーン
本作は男女が目的もなく逢瀬を繰り返すといった内容で、かなり大胆なラブシーンもあり、出演者の皆さまの体を張ったお芝居を観ることができました。
特に髙木さんはアイドルにも関わらずほぼヌードのようなシーンもあったりと、かなり体を張ったお芝居で、この作品にかける熱い思いを感じました。
10年前の初演とは異なり現代版にブラッシュアップされており、スマホ画面を舞台上に投影したり、男女がマッチングアプリで出会う様子、会話の中に具体的な番組名などを出すことで、自分自身の身近で起こっているようなリアリティさを感じました。
ベッドシーンも随所に登場しますが、欲望のままに相手を求めるといった飢えも感じられる演技で、ここまで大胆なベッドシーンは初めて観たかもしれません。
2つの部屋での出来事
結婚している智子と彼女と同棲している裕一。どちらも相手がいながらもダラダラと不倫を続けてしまっている現状。それぞれ相手と一緒に暮らしているわけで、それぞれの家での様子を2つの部屋をステージ上に出現させることで観客に見せていきます。
この舞台転換が非常に秀逸でした。
先ほどまではステージ上にプロジェクションマッピングを投影して駅を表現していたところから即座に部屋が出現し場面が変わっていく、といったスピード感に感動しました。
緊張感を絶やすことなく次の展開へと持っていき、さらにピリピリとした会話が繰り広げられるという、劇場を漂うピーンと張りつめた空気が物語を一層深い世界へと連れていきました。
裏切りとは
タイトルにもある「裏切り」というのが伏線として物語の後半にかけて回収されていきます。
優しい旦那さんに優しい彼女、とにかく優しい相手がいながらも不倫をしてしまう二人だと思っていたのですが、実は旦那さんも彼女も不倫(浮気)をしていたという事実が明らかになります。
優しい仮面を被って信用させたうえで実は相手を裏切っていたという、非常に憤りを覚える展開に。
「裏切り」とは裕一や智子のことかと思いきや、その旦那や恋人のことも指しているということが分かり、この世は嘘偽りばかりだなと。まさしく「裏切りの街」でした。
彼らの行く末
お互いに不倫していたことが相手にバレて、今後会うことはやめようと約束してお互いの前から姿を消した二人。
4か月後、1本の電話をきっかけにまた会うことになりました。
智子のお腹は大きく、裕一の子供を宿していました。ただ、その子は旦那との子として産むという決断を下した智子。お互い同じ過ちは繰り返してはならないとわかっていながらも、やはり帰るのをためらって一緒にいることを選んでしまう。これからも彼らはこの関係を終わらせることもなく続けてしまうんだろうな、という終わり方でした。
台詞の言い回しや掛け合いのテンポ感をかなりリアルに寄せているのも生々しく、フィクションみがかなり抑えられている点がとても良いと同時に、かつ人間の怖さを感じる点でもありました。
【公演情報】
パルコ・プロデュース「裏切りの街」
作・演出:三浦 大輔
音楽:銀杏BOYZ
出演:高木雄也、奥貫薫、萩原みのり、米村亮太朗、中山求一郎、呉城久美、村田秀亮(とろサーモン)
東京公演:2022年3月12日(土)~3月27日(日) 新国立劇場 中劇場
大阪公演:2022年3月31日(木)~4月3日(日) COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
観劇日:2022年3月23日(水)17:30公演