第37回のレビューは、英国社会派戯曲『CHIMERICA チャイメリカ』です。
田中圭さん主演、そして日本初上演作品ということで非常に注目されている作品です。
本作は、中国の天安門事件を題材に描いたフィクション作品。
海外事情も事件のことも全く分からないので、あえて知識を入れないまま観劇したのですが、現代にも通じる普遍的な問題を扱っている作品だと、そう感じました。
二つの国の演出
本作で登場するのはアメリカと中国。
この二つの国を場面によって行き来していたため、場面展開がかなり多く、なんと38もの場面で構成されているとのことです。(公式パンフレットより)
転換が多い分、ステージの上・下を分け、回転舞台も取り入れることで次の場面へと流れるように繋いている演出が印象的でした。
ステージ上には無駄な装飾が一切なく、必要最低限のセットのみが配置してあり、それぞれの場面を表現。
無駄な装飾がなく、ステージ上は黒で統一されていることで、ひとつひとつの台詞が舞台上に浮かび上がってくるような雰囲気がありました。
ジョーとヂァン・リン
主人公の記者、ジョー演じるのは田中圭さん。
昨年末は舞台「サメと泳ぐ」でも主演を務め、舞台への出演が続いております。
ジョーはアメリカ人記者で、天安門事件の写真を撮影したことをきっかけに、1枚の写真に翻弄されることとなります。
自分の覚悟を自分自身で裏切らないために、目に見えない事実を追いかけ続けるジョーの記者としての圧倒的な力強さやまっすぐさを田中圭さんが全身で演じておりました。
そして、中国に住むジョーの旧友ヂァン・リン役は満島真之介さん。
とにかく、満島さんの迫真の演技に心奪われました。
ジョーとヂァン・リンが一緒にいるシーンはほんの数回しかなく、ほとんどが別々のシーンで物語は進みますが、彼らの人生はそれぞれの人生に大きく関わっており、最後にジョーはヂァン・リンに関する衝撃の事実を知ることになります。
ヂァン・リンは天安門事件に関係するある過去に縛られ、そして過去を引きずり、物語が進むごとに憔悴し、心を閉ざしていってしまうキャラクターです。
そんなヂァン・リンを満島真之介さんは丁寧に演じており、この物語はフィクションのはずなのに、私が観ているヂァン・リンは現実でしかない、そう感じてしまうくらい説得力のある演技でした。
満島真之介さんの出演されている舞台は何度か観劇したことがあり、そして観劇するたびに満島さんの繊細かつ大胆な演技に感動しています。
色の演出
ステージがほとんど黒で統一されている一方、背景となる壁は液晶画面になっており、
場面に合わせて色が変わっていました。
感情を映す鏡のように、赤やグレーに色変わりし、視覚的にも状況描写の補足という役割を果たしておりました。
非常に難しい作品で、濃密な会話劇という印象でしたが、決して歴史上の問題を題材としているだけの作品ではないと感じました。
【公演情報】
世田谷パブリックシアター×パソナグループ
『CHIMERICA チャイメリカ』
作:ルーシー・カークウッド
演出:栗山民也
出演:田中圭、満島真之介、倉科カナ、眞島秀和、瀬戸さおり、池岡亮介・・・etc
東京公演:2019年2月6日(水)~2月24日(日) 世田谷パブリックシアター
愛知公演:2019年2月27日(水)~2月28日(木) 東海市芸術劇場
兵庫公演:2019年3月2日(土)~3日(日) 兵庫県立芸術文化センター
宮城公演:2019年3月6日(水) 多賀城市民会館 大ホール
福岡公演:2019年3月10日(日) 福岡市民会館
観劇日:2019年2月23日(土)18:30公演