『書きます!#観劇レビュー』

鑑賞した舞台のレビューをただただ書き残していきます!

宝塚月組ミュージカル『グレート・ギャツビー』を観劇した感想(ネタバレあり)

今回のレビューは、宝塚月組「グレート・ギャツビー」です。


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本作は1本ものと呼ばれる、休憩を挟む2時間ほどの演目で、今の月組の芝居を堪能できる作品です。

 

1920年代のアメリカを舞台に、ある女性を愛し続けた1人の男の生涯が描かれていきます。

 

ギャツビーの全てはデイジーのため

 

 

主人公のギャツビーを演じるのは月城かなとさん。客席に背を向けて、背中で語るようなシーンが随所にあり、その凛とした佇まいから、地位や名誉を手に入れた勝ち組のような雰囲気とともに、一番欲しいものは手に入らない悲しさ、"哀愁"を感じました。

 

そのギャツビーが永遠に思いを寄せている女性、デイジーを演じるのは海乃美月さん。

その街一番の美人と呼ばれ、さらにはご令嬢。好奇心旺盛で物怖じしない女性です。

そんなデイジーはギャツビーと運命的に恋に落ち、幸せな生活を送っていたのですが、親から交際を大反対され、お別れもできないまま離れ離れになってしまうという切ない展開に。

 

5年後、兵役から戻っていたギャツビーはビジネスを成功させ、地位と名声を手に入れていました。大豪邸も手に入れ、何不自由ない生活を送っているようでしたが、デイジーのことを今もまだ想い続け、恋焦がれる苦しい日々が続いていました。

彼女はこの5年の間に大きな人生の変化があり、なんと結婚をして子供も生まれていました。彼女の今も分かっているのに、今もなおギャツビーの言動はすべてデイジーのためにある。この叶わぬ一直線な想いに、苦しくて胸が張り裂けそうでした。

 

ギャツビーはいつかデイジーと再会することを夢見て、誰でも参加できるパーティーを毎週末開いていました。

そのパーティーシーンが豪華絢爛で、これぞ宝塚!といったシーン。

カラフルなドレスに豪華なシャンデリアの数々、さらに数十人が一同にダンスするシーンは圧倒されました。

 

当時のアメリカは禁酒法と呼ばれるアルコールの製造・販売が禁止されていたのですが、それを逆手に取った違法酒場が登場し、ギャツビーのその違法酒場経営に関わっていました。

違法酒場のシーンは先ほどまでに華やかで明るいパーティーのシーンとはガラッと変わり、ディープな雰囲気が漂う薄暗い空間で、そんな店にスーツの上からシルバーのトレンチコートを羽織ったギャツビーが登場したときは、息をのむカッコよさ。

彼がこの世界で名の知れた人物であることが分かる場面でしたし、この世界で生きていくという覚悟も感じるシーンでした。

 

こうした違法なビジネスに手を染め、金を稼いでいるのもデイジーのため。

それは彼女の両親から身分の違いを指摘され、交際を拒否されたから。自分が彼女にふさわしい身分になれば・・・その一心でここまで頑張ってきたのでした。

 

5年ぶりの再会

 

この物語の中に幸せなシーンは少ししかありません。

ほとんどはすれ違いや裏切りなど、観ていて心が苦しくなるシーンばかりなのですが、ギャツビーとデイジーの再会のシーンは束の間の幸せなシーンでした。

 

5年という月日が経っても、お互い気持ちは変わっておらず愛し合っていたふたり。5年ぶりの再会に、嬉しいような苦しいような表情をする月城さんと海乃さんの芝居力に圧倒されました。

 

 

メインテーマとして劇中でも何度か歌われる「朝日が昇る前に」。

ギャツビーが川向いのデイジーの住む家を見ながら一人歌うこの楽曲は、月城さんの歌唱力が光ります。また、デイジーへの変わらぬ想いが詰まっているギャツビーの人生歌のようでした。大きなステージ上に一人佇み、スーツのポケットに手を入れ、客席に背を向けながら歌う姿は、孤独感も感じますが、男としての覚悟も感じる力強さがありました。

 

 

場面転換が多いなかで、場面場面を途切れさせることなく次に繋げる演出は宝塚ではよく見るのですが、今回も一切の無駄なく2時間展開されていきとても驚きました。

かなりセットも作り込んでいますし、劇場を持っている強みだなと感じています。

 

そして本作はとにかく衣装が華やか!当時のアメリカは「狂騒の1920年代」とも言われていたようで、洋服もカラフルで個性的で、人々が日々を謳歌していることがよく分かります。

 

ギャツビーという一人の男の人生は波乱万丈で観ていて苦しいのですが、そのパッと散る彼の人生が観客の心に苦みのきいた余韻を残す作品でした。

 

 

 

【公演情報】

 

三井住友VISAカード ミュージカル「グレート・ギャツビー」

 

脚本・演出:小池修一郎

 

出演

光月 るう、夏月 都、白雪 さち花、千海 華蘭、鳳月 杏、晴音 アキ、月城 かなと、春海 ゆう、夢奈 瑠音、蓮 つかさ、海乃 美月、佳城 葵、朝霧 真、麗 泉里、清華 蘭、英 かおと、彩 みちる、朝陽 つばさ、蘭 尚樹、風間 柚乃、桃歌 雪、空城 ゆう、妃純 凛、天紫 珠李、彩音 星凪、礼華 はる、結愛 かれん、佳乃 百合香、花時 舞香、甲海 夏帆、彩海 せら、天愛 るりあ、蘭世 惠翔、菜々野 あり、柊木 絢斗、一星 慧、大楠 てら、白河 りり、瑠皇 りあ、羽音 みか、彩路 ゆりか、まのあ 澪、爽 悠季、毬矢 ソナタ、きよら 羽龍、真弘 蓮、咲彩 いちご、美海 そら、月乃 だい亜、朝香 ゆらら、静音 ほたる、七城 雅、槙 照斗、奏羽 美緒、遥稀 れお、水城 あおい、一乃 凜、和真 あさ乃、花妃 舞音、涼宮 蘭奈、澪 あゆと、大瀬 いぶき、蘭叶 みり、綺乃 ゆず、天つ風 朱李、澪花 えりさ、華羽 りみ、一輝 翔琉、美颯 りひと、愛梛 ちとせ、相星 旬、朝雪 薫、彩姫 みみ、星丘 しずく、美渦 せいか、雅 耀、穂波 舞咲、八重 ひめか、桜之 真緒

 

専科/英真 なおき、輝月 ゆうま

 

公演日程:

 

2022年7月16日(土) ~8月22日(月) 宝塚大劇場

2022年9月10日(土) ~10月9日(日) 東京宝塚劇場

 

観劇日:2022年10月4日(火)18:30公演