『書きます!#観劇レビュー』

鑑賞した舞台のレビューをただただ書き残していきます!

音楽劇『浅草キッド』を観劇した感想(ネタバレあり)

今回のレビューは、音楽劇「浅草キッド」です。


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ビートたけしさん原作、浅草での下積み時代と恩師である師匠とのエピソードを描いた本作は、Netflixでの映画版とはまた違う角度・演出で物語が描かれていて、明るく楽しく演劇的表現がたくさん詰まった作品でした。

 

ポップな浅草キッド

 

若き日のたけしさんを取り巻く古き良き昭和の人情と、苦労に満ちた浅草での日々をポップに演出していて、ちょっと驚きでした。当時の浅草の活気を歌やダンスで表現し、それに翻弄される林遣都さん演じるたけしという構図が面白おかしくて、笑いどころ満載でした。

映画のイメージが強かったので、後半は特に重たくなるかと思ったのですが、たけしさんが人気芸人に上り詰め、浅草や師匠と離れていってしまう様を映画ほど重たくせずテンポよく表現していたのがとても印象的で、音楽も相まってとても観やすかったです。

 

 

林遣都さんに若手芸人演じさせたら右に出るものはいないと思っているんですが、やっぱり上手かったです。

林遣都の芝居を生で見るためだけにこの作品を見に行ってもいいくらい。

Netflixドラマ「火花」でも尖っている若手芸人を演じていて、こちらの芝居も生々しくて突き刺さって大号泣した覚えがあるんですけど、今回もやっぱりリアルでした。林遣都さんの芝居は芝居っぽく見えないのが凄くて、その場でしゃべってその場で動いている、本当にその世界に生きている人なんだという説得力をめちゃくちゃ感じました。

 

たけしさんの師匠、深見千三郎を演じたのは山本耕史さん。

何をするにも粋で、大人な余裕もあり、みんなから愛されている姿がご本人にも重なってとにかくかっこよかったです。

映画では大泉洋さんが演じていらっしゃいましたが、また全然イメージの違う千三郎になっていて、人情に溢れた軽やかで笑顔の多い千三郎さんでした。

 

1幕ラスト、お二人でタップダンスを披露していましたが、超大作でした。

タップダンスってかっこいいよな~。

 

音楽で彩るキャラクター

 

本作はミュージカルではなく音楽劇。音楽の要素いるかな…?とも思ったんですが、音楽の力で全体的に快活な作品に仕上がっていましたし、ストレートプレイの随所に劇中歌のような形で楽曲が入ってくるというイメージで、フランス座での日々やタップダンスをマスターするまでを描くには音楽がかなり重要な要素でした。

 

とてもよかったのは、ミュージカル的な歌い方をしていないからこそ歌に人間臭さがあって、苦悩や焦りや喜びが役者の皆さんからダイレクトに伝わってきたところ。

 

きれいに歌おうとしてないからこそ、いや、皆さん上手いんですが、ストレートプレイの延長として歌っている感じ。セリフがメロディに乗っているだけというか。その雰囲気が結構好きでした。

 

場面転換も多く劇中での年月の進み方も早い作品ですが、パネルやセットをステージ上で縦横無尽に配置して、大きな暗転もなくスピード感があって観ていて面白い演出でした。

歌詞がステージに投影されたり、月日の経過もプロジェクションマッピングでセットに投影していたり、文字情報もあって理解しやすかったです。

 

 

後半、千三郎が火事で亡くなるシーン。

燃え盛っていく火をプロジェクションマッピングなどではなく大量の煙で表現していて、会場の半分が真っ白になるくらいの大量の煙を使った演出は圧巻でした。あそこまで大量に煙を使った演出は初めて見ました。

そのシーンの直後、ステージ上真っ白。ですが、次のシーンを気にしていないくらい振り切った煙の演出、大迫力でした。

 

奥さんの写真とたけしさんから貰ったお小遣いを大切に抱えて、大量の煙に包まれ消えていく千三郎さんの姿がとにかく辛かったです…。ドラマのような実話だなと思いますが、まだまだやりたいことあっただろうになぁと。

 

残された者は前に進んでいかなきゃいけないし、浅草もそこに在り続ける。

悲しみで押しつぶされそうでも時間は止まってくれない薄情さも感じつつ、千三郎さんの走馬灯のような浅草の姿が、林遣都さんの歌う「浅草キッド」とともにステージ上をかけめぐる演出も粋で涙の流れるシーンでした。

 

カーテンコールの挨拶で、山本さんがお辞儀したときにかぶっていた帽子が落ちて、それを倒れながら受け止める林遣都さんというめちゃくちゃ可愛い場面があったんですが、まるで師匠と弟子そのものというか、若き日のたけしさんと師匠の姿そのものでまた泣いちゃうんですよやめてくれ!ありがとうサービス精神!

絶対山本さんが提案したんだろうなこのやり取りって思いました(笑)

 

 

明治座久々に行ったんですが、ステージと客席の距離がそこまでないので、どの席でもとても観やすいな~と思いました。

 

ただし…3階1列目は手すりとステージががっつり重なって演者の顔が全く見えなくなるときがあるので(背の高い人は良いと思いますが)3階は2列目をおすすめします!

 

 

 

【公演情報】

 

カンテレ開局65周年記念公演 音楽劇「浅草キッド」

 

原作:ビートたけし

脚本演出:福原充則

 

出演:林遣都、松下優也、今野浩喜、稲葉友、森永悠希、紺野まひる、あめくみちこ/山本耕史

 

公演日程

東京公演:2023年10月8日(日)~10月22日(日) 明治座

大阪公演:2023年10月30日(月)~11月5日(日) 新歌舞伎座

愛知公演:2023年11月25日(土)~11月26日(日) 愛知県芸術劇場大ホール

 

観劇日:2023年10月14日(土)17:00公演