『書きます!#観劇レビュー』

鑑賞した舞台のレビューをただただ書き残していきます!

宝塚宙組『MY BLUE HEAVEN -わたしのあおぞら-』を観劇した感想(ネタバレあり)

今回のレビューは、宝塚宙組「MY BLUE HEAVEN -わたしのあおぞら-」です。


f:id:kanazaaaaaawa:20241018205146j:image

 

終戦直後の横浜を舞台に、戦後の厳しい世界の中でも支えあい生きていく、この時代を生きる人達の愛と勇気、覚悟を感じる作品でした。

 

宙組の風色日向さん初主演作品となる本作。

主演にふさわしい圧倒的な存在感でしたし、爽やかな好青年で正義感が強く、情に厚い天地楽(ジョーイ)を快活に演じられておりました。

 

包容力のある正統派な男役、といった雰囲気の風色さん。作・演出を手掛けられた齋藤先生が当て書きしたとおっしゃっている通り、風色さんの魅力が存分に盛り込まれた作品でした。

 

戦前とは変わり果てた横浜で必死に生きる人々。ジョーイ自身もまた、戦場から無事帰還したのも束の間、幼馴染のヤヨイ(山吹ひばり)を守るため裏稼業に手を染めてしまうはめに。

大切な人を守りたい一方、自分のしていることが正義から外れていることに葛藤し苦しむジョーイ。

悩み続けるなかで、自分の正義や周りの人々の声を支えに自分にできることを自問自答し愛と希望を求め歩き出す、希望の光が差し込むエンディングでした。

 

序盤は戦争のシーンもあり観ていて心が苦しくなるシーンが続きましたが、一幕中盤からラストは戦後の横浜を舞台に展開。

物語の中心となるのは、幼馴染3人の天地楽(ジョーイ)、園田弥生(ヤヨイ)、ライアン・フジカワ。日系アメリカ人のライアンを演じるのは亜音有星さん。

風色さんひばりさん亜音さんの3人は、兄弟や恋人など近しい役での共演歴も多数ある間柄。幼馴染という今回の設定もそんな3人にぴったりで、絶妙なコンビネーションでした。

 

3人とも共通して言えるのは、安定感のある歌と芝居。

3人とも伸びのある力強い歌声ですし、芝居力の高さには毎回感動します。

 

特に今回、風色さんは正義感が強いやんちゃなお兄ちゃんといった役で、後半は裏稼業の深みにはまってしまうことへの苦しみや葛藤も表現しなければならない感情表現の難しい役どころ。

セリフがなく表情だけで表現しなければならない場面や、主演だからこその受けのお芝居も多いなか、一瞬一瞬すべて丁寧に、ジョーイの感情を自身のフィルターをしっかり通して表現されているように感じました。

一幕ラストの表情がとにかく素晴らしくて、今でも鮮明に記憶に残っています。

 

戦争という重たいテーマも含まれているゆえ、悲しいシーンが多いかと思いきや、コミカルなシーンもあり。

探偵事務所を経営するミチコ(楓姫 るる)・ダニエル(大路 りせ)が随所で笑いどころを担い、物語をかき乱してくれるナイスキャラでした。

 

また、ジョーイの心の声が聞こえるシーンが度々登場。心の声に合わせた風色さんの表情でのお芝居を楽しむことができる個人的大好きシーンでした。

 

亜音さん演じるライアンは日本語と英語が入り混じったセリフが多く、発音含め難しいキャラクター。

亜音さんといえば、昨年出演した舞台「夢現の先に」で主人公”僕”の夢の中にだけ登場するピュアな少年”彼”が印象的です。こちらも非常に難しい役どころでしたが、心に残る好演でした。

今作も幼馴染との友情や恋に揺れ動く心情を丁寧に表現。戦争が原因で複雑になってしまった3人の関係性をお芝居でしっかり表現していたように感じます。

 

ヤヨイ演じる山吹ひばりさんはやっぱりお芝居が上手。セリフからそのときそのときのヤヨイの感情がしっかりと伝わってきます。

戦争のせいで心に傷を抱え、その深さに苦しみながらもジョーイを一身に想い、必死に生きる姿に心打たれました。

 

そして、最後に触れておきたいのは、本作で宝塚卒業を発表している愛未 サラさん。

個人的にも大好きな娘役さんで、卒業が発表されたとき、仕事中でしたがちゃんと落ち込みました―――(泣)

パステルカラーというよりかはネオンカラーのような弾ける笑顔と、長身を生かしたダイナミックなダンス。どこにいても目を引く可愛らしさ!

今作では、愛と復讐の狭間で揺れ動く強い女性を熱演され、サラさんの魅力が存分に発揮されているキャラクターでした。

本作の千秋楽である10月27日まで宝塚を謳歌できますように…。そして、素晴らしい未来となりますこと、心から願っております。

 

 

【公演情報】

 

宝塚宙組 横濱RHAPSODY『MY BLUE HEAVEN -わたしのあおぞら-』

 

作・演出:齋藤吉正

 

 

出演: 秋奈 るい、花菱 りず、小春乃 さよ、真名瀬 みら、雪輝 れんや、風色 日向、凰海 るの、亜音 有星、梓 唯央、楓姫 るる、大路 りせ、愛未 サラ、山吹 ひばり、美星 帆那、郁 いりや、風羽 咲季、波輝 瑛斗、花咲 美玖、風翔 夕、奈央 麗斗、華乃 みゆ、花恋 こまち、梨恋 あやめ、海玖里 粋、輝珠 ななせ、響 望歌、楓莉 かの、ゆり 遥、空輝 紫夕

 

日程

2024年10月12日(土)~10月27日(日) 宝塚バウホール

 

観劇日:2024年10月16日(水)15:00公演