第33回のレビューは、音楽劇『コインロッカー・ベイビーズ』です。
本作は2年ぶりの再演で、主演は前回に引き続きA.B.C-Zの橋本良亮さんと河合郁人さん。
しかも今回は公演期間を分けて二人がそれぞれハシとキク両方の役を入れ替えて演じるという上演です。
対照的なハシとキク
本作の主人公は二人の少年です。
ハシとキクと呼ばれている彼らは生まれてすぐコインロッカーに捨てられ、唯一生き残った孤児たち。兄弟ではないが、養父母に兄弟として引き取られ、育てられました。
そんなハシとキクは性格が正反対。
ハシは内気で口数も少なく気弱、一方キクは反抗的かつ暴力的。
正反対だけど、誰よりも相手のことを知っている、唯一心を許せる相手。
公演の前半は、気弱なハシを河合郁人さん、暴力的なキャラクターであるキクを橋本良亮さんが演じました。
そして、後半公演では配役を入れ替えて、気弱なハシを橋本良亮さん、暴力的なキャラクターであるキクを河合郁人さんが演じました。
私は配役が入れ替わる前半後半どちらの公演も観劇したのですが、振り幅の大きい対照的なキャラクターをどちらも繊細かつ大胆に演じられていて、お二人の底知れない演技力に驚くばかりでした!
橋本さんのキクは、反抗的な性格の中にも時折優しさが見えるキク。
河合さんのキクは、橋本さんのキクと異なり、反抗的・強気というような要素が前面に出ているようなキク。
一方で、キクと正反対の性格、ハシを演じたお2人はというと、
河合さんのハシは、子供っぽさが時折見え隠れし、ナイーブな心の動きがより濃く描かれていたと思います。
そして、橋本さんのハシは、ハシの持つ優しさも表現しつつ、河合さんが演じられたハシよりも狂気性に満ち溢れ、後半になるにつれて精神異常者としての振る舞いが凄すぎて、鳥肌が立ちました。
前半のキャスティングは今回の上演が初で、後半のキャスティングは2016年の初演の際と同じキャスティングです。
それぞれキャラクターへのアプローチが少しずつ異なっていて、解釈の違いが演技に繋がってきており面白かったです。
音楽劇としてのコインロッカーベイビーズ
コインロッカーベイビーズの原作を読んだのですが、展開が早くて登場人物の心情変化も複雑で難しいという印象です。
その複雑さを音楽で表現し、音楽劇として魅せた点は非常に面白い演出だと思いました。
また、ハシは歌手という設定なので歌うシーンも多く、音楽劇として違和感なくコインロッカー・ベイビーズの世界観に入り込むことができます。
原作の象徴的なシーンや台詞はそのままに、場面転換が多い作品なのでとにかくスピード感がありました。
入れ替え制のキャストでどちらも観劇することができ、橋本さん・河合さんお2人のそれぞれの演技力の素晴らしさを噛みしめることができました!
【公演情報】
音楽劇「コインロッカー・ベイビーズ」
脚本・演出:木村信司
出演者:橋本良亮(A.B.C-Z)、河合郁人(A.B.C-Z)、山下リオ、シルビア・グラブ、秋山大河(MADE/ジャニーズJr.)、福士申樹(MADE/ジャニーズJr.)、ROLLY・・・etc
東京公演:2018年7月11日(水)~2018年7月29日(日)TBS赤坂actシアター
大阪公演:2018年8月11日(土)~8月12日(日)豊中市立文化芸術センター・大ホール
富山公演:2018年8月18日(土)~8月19日(日)オーバード・ホール
観劇日:2018年7月18日(水)18:30公演
2018年7月29日(日)13:30公演 東京千秋楽公演