『書きます!#観劇レビュー』

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六本木歌舞伎2022『ハナゾチル』を観劇した感想(ネタバレあり)

第78回目のレビューは、「六本木歌舞伎2022『ハナゾチル』」です。

 

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3年ぶり第4弾となる「六本木歌舞伎」は、今まで歌舞伎を見たことのなかった方にも歌舞伎に触れていただけるように、毎回新しい解釈を取り入れた古典演目を披露するシリーズです。

過去には、宮藤官九郎さんが脚本の新作歌舞伎を上演、前回の「羅生門」にはV6の三宅健さんが出演されておりました。

今回は監修を映画監督の三池崇史さんが手がけられ、さらに、A.B.C-Zの戸塚祥太さんが歌舞伎初挑戦されております。

 

古典演目の『青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)』を現代とリンクさせながら、新しい解釈で展開させており、歌舞伎の知識もほぼない私からすると非常にストーリーも掴みやすく、とても観やすい作品で、歌舞伎の素晴らしさを感じることができました!

 

現代と江戸時代のタイムリープ

 

幕があがるとそこは現代の六本木。夜。ビルの屋上。ベースと和太鼓が鳴り響くという、これから歌舞伎が披露されるとは想像のつかない中、“弁天小僧菊之助”と名乗る窃盗犯の戸塚(戸塚祥太)がアクロバティックに警察の追っ手を払い、縦横無尽にステージを走り回ります。

「歌舞伎×ベース」「歌舞伎×アクロバット」がすでに斬新で新感覚、幕があがった瞬間からワクワクが止まりませんでした。

 

そこに、戸塚にしか聞こえない天の声が響く。その声に導かれビルから飛び降りると、降り立ったところはまさかの江戸時代!!!

 

真っ暗な現代夜のシーンから桜のきれいな江戸時代のお昼のシーンへガラッと様変わり。江戸時代にスカジャン姿の戸塚がいるのが違和感しかなくて、くすっと面白いシーンでした。

 

状況をまったく把握できていない戸塚がまた愛くるしくて、でもそりゃそうだよね、という状況なので、まるで戸塚の夢のなかを観客も一緒に観ているかのような感覚になりました。

 

そんな戸塚の目の前にとある男性が登場し、自分の父親だというのです。

なんと、戸塚は江戸時代では呉服屋"浜松屋"の息子、宗之助だったのです。

前世というかパラレルワールドというか、なんとも面白い設定だな~と。

 

今回舞台初挑戦で戸塚役・宗之助の2役を演じられている戸塚祥太さんは、数々の舞台に出演され、昨年は「未来記の番人」「フォーティーンブラス」という2作の主演舞台を務められております。

 

戸塚さんは以前から応援している俳優さんでして、どちらも観劇しており、観劇レポを書いておりますのでぜひご覧ください。

www.kakimasu-review.com

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過去の観劇レポにも書いておりますが、戸塚さんは声の出し方が非常に上手なんですよね。今回は歌舞伎パートと現代パートもあるなかで、窃盗犯としての葛藤と男らしさと上品さが声色に共存しているんです。

毎回思いますが、ただセリフをなぞっているだけでなくてキャラクターの心情がしっかり届くんです。言葉では表現しづらいのですが、とてつもない才能で本当に凄いと思います。

戸塚さんが呉服屋の息子宗之助として登場するシーンは、歌舞伎初挑戦とは思えないほど所作も美しく指の先まできれいで、短いシーンではありましたがとても素敵でした。

 

江戸時代の“弁天小僧菊之助”

 

戸塚が江戸時代では呉服屋の息子だということが判明したあと、呉服屋のシーンへ場面が変わり、いよいよ海老蔵さんが登場します。

海老蔵さんの出演された歌舞伎作品はいくつか拝見しているのですが、やっぱりかっこいい!しかも本作は女性役も演じられてびっくりしました。

女性役から男性役にガラッと変わる場面があるのですが、それもまた人格が変わったかのようで、完全に私自身も騙されました(笑)

 

海老蔵さんが演じていたのは女性かと思いきや、かの有名な窃盗団"白浪五人男"のひとり、弁天小僧菊之助だったのですが、彼の口から発せられる「知らざあ言って 聞かせやしょう」から始まる名台詞は、歌舞伎の知識がない私でも知っているセリフで、とてつもなくかっこよく痺れました。

 

大迫力の立廻り

 

二幕は感動的で大迫力のシーンが続いていきました。白浪五人男が稲瀬川に集結してそれぞれ名乗る場面は、歌舞伎ならではの様式美が詰まったかっこいいシーンで、仲間を想い、仲間を守ろうとする彼らから、現代の戸塚も自身の生き方や考え方について自問自答していきます。

 

いつの間にか現代に戻った戸塚は、自身を犠牲にしても仲間を守る白浪五人男から生き様を学び、警察を華麗に撒いていきます。そして舞台上を入れ替わるように弁天小僧菊之助が自身を捕まえようとする追っ手を、大迫力の立廻りを披露して振り払う。そんな現代の弁天小僧と江戸時代の弁天小僧が重なり、同じ空を見つめる2人。二つの時代の二つの魂がこの瞬間繋がったように見え、胸が熱くなりました。

上から降り注ぐ大量の花吹雪が、熱気のなかにも静寂さをもたらし、弁天小僧の最期は儚くも美しい大迫力のシーンとなりました。

 

 

私自身、歌舞伎は何度か拝見したことがあるのですがやはり難しさがあり敷居が高いイメージがありました。ですが、今作は現代とリンクしていることで非常に分かりやすく歌舞伎の上品さや様式美を堪能して心がすっきりしました。

 

本作を鑑賞して、歌舞伎の世界観はやっぱり好きだなぁと感じたので、今度は古典演目の歌舞伎にもチャレンジしてみよう!と思いました。

 

【公演情報】

 

「六本木歌舞伎2022『ハナゾチル』(青砥稿花紅彩画より)」

 

脚本:今井豊茂

演出:藤間勘十郎

監修:三池崇史

 

出演:市川海老蔵、戸塚祥太(A.B.C-Z)、中村児太郎、市川右團次 他

 

会場:

東京公演:2022年2月18日(金)~3月6日(日) EXシアター六本木

福岡公演:2022年3月11日(金)~3月13日(日) 福岡サンパレスホテル&ホール

大阪公演:2022年3月18日(金)~3月21日(月・祝)  フェスティバルホール

 

鑑賞日:2022年2月26日(土)12:00公演