今回のレビューは、舞台「夏の夜の夢」です。
シェイクスピア原作の恋愛喜劇。
喜劇なので、クスッと笑ってしまうシーンも多々ありますが、シェイクスピア特有の難しさもあり、なかなか演劇的な思考を必要とする作品でした。
日本古典芸能とシェイクスピアの融合
歌舞伎俳優の中村芝翫さんが主演を務め、作中の設定を日本に置き換えることで日本の古典芸能とシェイクスピアの世界観を融合させている面白い演出でした。
劇中劇のような作りで、シェイクスピアの「夏の夜の夢」を日本の森に住む精霊たちが演じているという設定。そもそもベースが日本なので、和風な衣装や歌舞伎のような演出が入ってきても違和感のないように展開されるのが個人的にとてもわくわくポイントでした。
喜劇的な要素としては、若い男女4人の恋愛模様のシーンがその一つです。
愛し合っていたカップルに森の妖精が「起きて一番最初に見た人物に惚れてしまう」という惚れ薬を塗ってしまい、起きた少年は別の女性を見てしまって、愛していた女性のことには目もくれず、別の女性にアプローチしまくるという現象が起きてしまう。
さっきまであんなに愛の言葉を囁きまくっていたのに、惚れ薬のせいで愛する女性に対し「どっかいけ!チビ!」なんていう暴言吐きまくりな少年。一人二役演じているような真逆の性格になるので、その演じ分けを見ていても面白いです。
そのカップルのほかにもう1組の男女も加わり、なんともバカバカしくて可愛らしい男女4人のケンカが始まってしまうのです。
森の妖精は男性2人に魔法をかけるのですが、男性が男性のことを好きになるような設定でも面白かっただろうなぁと思いながら観ていました。でも、さすがにシェイクスピア時代にはBLのような設定はなかったのですかね、と思って軽く調べたらBL要素のある作品もいくつかあるみたいでした。
なんやかんやあって元の状態に戻り一件落着しますが、この物語を1500年代にシェイクスピアは生み出したのかと思うと凄すぎてぞっとしますね。
ファンタジー要素もありつつ恋愛の複雑さだったり人間の感情の難しさも表現していて、2022年にまだ世界中で上演されているわけですから、愛される作品だという理由がよくわかる物語でした。
森の妖精たち
森の妖精を演じている南果歩さんがとても愛らしくて、愛嬌を目に見える形にすると南果歩さんが出来上がるんじゃないかってくらい可愛らしかったです。衣装も真っ白ふりふりでステージ上をぱっと明るくさせてくれました。
【公演情報】
「夏の夜の夢」
作:W.シェイクスピア
訳:河合祥一郎
演出:井上尊晶
音楽:松任谷正隆
出演:中村芝翫、南 果歩、髙地優吾(SixTONES)、生駒里奈、元木聖也、堺 小春、宇梶剛士 他
日程:2022年9月6日(火)〜9月28日(水) 日生劇場
観劇日:2022年9月12日(月)13:00公演